「地球外生命」、宇宙基地「きぼう」で捕獲実験
地球の生命は宇宙から運ばれてきたとの仮説を検証するため、日本の研究チームが「地球外生命」の捕獲を目指す実験計画を進めている。国際宇宙ステーション(ISS)に建設する日本の実験棟「きぼう」を使って、宇宙空間に漂う未知の微生物をキャッチしようという初の試みだ。成功すれば、生命の起源に迫る画期的な発見につながると期待されている。(長内洋介)
実験を計画しているのは東京薬科大、横浜国立大、筑波大、千葉大、大阪大、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、産業技術総合研究所など9機関の共同研究チーム。
細菌などの微生物が故郷の惑星を離れ、タンポポの綿毛のように宇宙空間をふわふわと漂いながら、地球にたどり着いたり、逆に地球から宇宙へ旅立っている可能性に着目し、「たんぽぽ計画」と名付けた。
地球の生命は約38億年前に誕生したとされるが、その起源は分かっていない。原始の海で生まれたとの見方が有力だが、隕石(いんせき)や彗星(すいせい)からは多くの有機物が見つかっており、宇宙から飛来したとする「パンスペルミア説」も否定されていない。
計画によると、きぼうの船外実験施設に微粒子の採集装置をセット。高度約400キロの軌道上を高速で飛んでいる塵を、特殊な板に衝突させて採集。地上に回収し、生命の材料となるDNAなどの有機物や微生物の有無を調べる。
地球とは明らかに性質が異なる微生物が見つかれば、地球外生命の可能性がある。また、宇宙の塵は地球上に大量に降り注いでいることが分かっており、有機物などを含んでいればパンスペルミア説を補強する新たな状況証拠になる。
一方、地球型の微生物が見つかれば、火山の大爆発や隕石衝突などによって微生物が上空に舞い上げられ、一部は宇宙に脱出していることになり、これも常識を覆す発見になる。
宇宙では有害な紫外線をまともに浴びるため、微生物はそのままでは死んでしまう。しかし、粘土の塵の中に閉じ込められていれば、紫外線から守られ生きている可能性がある。研究チームは、こうした微生物が真空中で凍結乾燥され“冬眠状態”で宇宙を漂流していると予想している。
地球でこれまで最も高い場所にいた生物は、成層圏の上空の高度58キロで捕獲された細菌。宇宙では、人工衛星に障害を与える“宇宙ゴミ”の採取実験はあるが、生命の有無を調べる実験は前例がないという。
きぼうは来年から建設が始まり、第1期の実験がスタート。たんぽぽ計画は2011年に始まる第2期実験の候補の1つとして検討されている。
研究チーム代表者の山岸明彦東京薬科大教授(微生物学)は「地球外生命の発見は技術的にも難しいが、やってみないと分からない。地球型の微生物が見つかれば、重力圏からの脱出も夢ではなくなり、火星に到達している可能性もある」と話している。
産経新聞07/12/6
タンポポ計画という名前が素敵。
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