書籍・雑誌

2018/07/10

天鏡のアルデラミン Ⅷ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅷ (宇野朴人・著)を読みました!

カトヴァーナのクーデターから2年後。隣国キオカ共和国も泰平というわけではなかった。他民族の寄せ集めであるキオカでは、その反動で民族運動が勃興していた。そのさなか、不眠の輝将ジャンは、イクタの師匠アナライと出会う。

カトヴァーナ帝国では、シャミーユが帝位を継いでいた。己の身に流れる皇帝の血を呪うシャミーユは、自らの才能と存在をゆがませ、恐怖政治を敷き、帝国を力で統治していた。それを止めうるイクタは、ヤトリの死以後、意識を内にこもらせて何の反応もない。二本柱を失った帝国騎士団の面々は必死にその役割を果たそうとするが……。

前巻で一つ大きな流れが終わって、新たな展開に向けて、いろいろと種をまく巻でした。

キオカでは新たな出会いがありました。ジャンとアナライ博士はかなり相性が良さそうで、そうなるとイクタの前に大きな壁となって立ちはだかりそうです。

カトヴァーナではシャミーユが帝位につきましたが、これは望んだ結果ではなく、クリスナイの謀略に乗せられたもの。確かな才能を持つシャミーユですが、それがゆがんだ形で芽吹いてしまってきます。それを止められる者は誰もおらず、残った騎士団の面々はいっぱいいっぱい。

いつまで寝てんの、取り返しつかなくなっちゃうよ? と、ジリジリとさせられて、最後にその伏線がここで! という大きな引き。このあたりは、本当にうまいです。続きを読まねば。

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2018/07/04

天鏡のアルデラミン Ⅶ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅶ (宇野朴人・著)を読みました!

帝国の行く末を案じたレミオン大将一派のクーデター。対峙するイグゼム元帥に、二派の調停を目的として駆け付けたイクタ率いる旭日連隊。三つ巴の内乱の陰には、佞臣トリスナイ。イクタはそのトリスナイを追い詰め、内乱を収束させられるかに見えた。

しかし、トリスナイは策謀をもって、精霊の加護を得、さらに皇帝に成り代わり勅命を出した。イグゼムには無視しえない、イグゼムである以上ヤトリには無視しえない、イクタを殺せという勅命を。

この流れはいつ頃思いついたんだろう。最初からなのだろうか。読み終えた時、そんなことを考えてました。

このお話はいわゆる「ライトノベル」の型で始まっているんですよね。赤毛の気の強い男勝りのヒロイン。癒し系巨乳。ロリっ子の姫様。型どおりに「型破りな」主人公に、イケメンと小デブ。精霊がロストテクノロジーっぽく、科学の話を取り入れてるところで、ちょっと差別化。そういう点で、手堅く作ってるなというのが、第一印象で。

でも、イクタとヤトリの関係がちょっと普通と違ってもいて、その辺は、一巻の感想でも一言触れています。それに一巻ラストの引っ張り方が虚を突く感じで、これは普通ではないなと思わせた。

でも、こんなことになるとは、こんなところまで来るとは、思わなかったよ。

子供のころの二人がたっぷり書かれていて、これがめっちゃ効いている。

心にずしりと重く響く、そんな最後でした。

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2018/06/19

天鏡のアルデラミン Ⅵ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅵ (宇野朴人・著)を読みました!

ヤトリが呼び戻された理由は軍事クーデターの勃発だった。貴族の帝国軍への介入を拒みたいレミオン大将と、軍政分離を頑なに掲げるイグゼム元帥のもと、軍にはもともと二つの派閥があったのだが、帝国の腐敗が進行するなか、耐えきれなくなったレミオン大将が行動に移したのだった。

二刀の稀有な使い手としてだけではなく、その精神をもってしてレミオンを体現するヤトリは手元に呼び戻され、銃の腕には目を見張るものがあるけれど、性格的には軍人に向かないレミオンのはみ出し者トルウェイは、地方にとどめ置かれた。別れてしまった騎士団が一緒に笑い合える日は帰ってくるのか。

帝国の腐敗、二大派閥の対立、その中で、ヤトリやトルウェイが背負わされているもの。この展開になる前から、そこかしこに書かれていました。

そうするとそれは「今提示された設定」ではなく、「キャラクターの一部」となっているので、物語が進んでいく中で、非常に効いてきます。

心優しいレミオンの末っ子が、優しいままに、仲間のために引き金を引く。いい展開(^^)/

さらに最後にまた、強い引きが。この作品は引きを作るのうまい。次に行かねば。

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2018/06/17

天鏡のアルデラミン Ⅴ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅴ (宇野朴人・著)を読みました!

キオカ海軍に配備された新兵器・爆砲の威力の前に、カトヴァーナ海賊軍の暴竜号は大きな被害を受けた。射程の差、破壊力の差はいかんともしがたく、会議では戦わずしての撤退も提示されるほどだった。

その場で発言し、会議の流れを変えたのは、ヤトリとマシュー。二人はイクタから、ある作戦を授けられ、彼の代わりにそれを提案しにきていた。その策は海賊軍の名を掲げる彼らのプライドをいたく刺激する代物で……。

この作戦は、一度捨てた東域にあるヒオレド鉱山奪還作戦のため、補給路を築く目的。そういう話の展開なのですが。

前の巻もそうですが、エピソードの切れ目が独特というか、普通はこんな本の真ん中で話変わらないんじゃないかな、という構成になっています。漫画だとあるけど、小説だと珍しいのでは。

と思いながら読んでいたら。

最後に大どんでん返し来た!

なるほど、話の軸はこっちで、それでここで切れなきゃダメなのか、と納得したところで、次巻へ続く。

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2018/06/06

天鏡のアルデラミン Ⅳ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅳ (宇野朴人・著)を読みました!

北域の過酷な撤退戦を生き延びたイクタたちは、無謀な作戦で多大な犠牲を招いた北域鎮台司令長官サフィーダ中将の軍事裁判に証人として呼ばれる。その後に行われた戦後処理の会議。その席でイクタは上官のサザルーフ大尉に一つの案を託した。それは住む土地を失ったシナーク族に別の土地をあてがい、その管理を軍が行うという案。

そのアイディアには、調整能力に長けた実務家の上官が必要ということで、白羽の矢を立てたのが、マシューの父、ミルトーグ・テトジリチ大佐。しかし大佐には、すぐさま首を縦に振れない懸念があるようで……。

パーティの中でぽっちゃり小太り、腕はそこそことなれば、本来お笑いポジションかお人よしポジションが多い印象なのですが。

マシュー君はちょっと違っていて、それが気になっているのです。才能にあふれているわけではないことを自覚し、そこでめげずに克服しようとがんばっているキャラクターって、ある意味、裏主人公では?

実際、この巻では、地元凱旋でスポットライトが当たり、最後においしいシーンを持っていきます。感情移入してるので、うれしい(^^)/

さて本筋では、またキオカ共和国との争いが激化しそうな予感です。

進む道が先に示されていて、それがどうなるのかという興味の土台が作られているので、そちらもとても気になる。

キャラクターもしっかり立てられているので、やり取りも楽しく、ぐいぐい引っ張られる感じで読み進めています。

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2018/05/30

天鏡のアルデラミン Ⅲ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅲ (宇野朴人・著)を読みました!

シナーク族の反乱を平定したイクタたちの見たものは、山脈を越えた北の地にある宗教国家ラ・サイア・アルデラミンの軍勢。無能な中将の無茶な作戦により疲弊した北方鎮台の部隊では勝負にならず、山脈を越えられて侵攻されることが必至。

そこでイクタたち帝国騎士の部隊は撤退戦を敢行。殿を務め退却する時間を稼ぐことになる。しかし相手には常勝と名高い稀代の名将が仕えていて……。

ライバルが出てきましたよ!な第3巻。

イクタとは対照的な働き者の知将です。主人公は冴えない無名、相手は華々しい戦歴を誇る、共に知将の計略合戦となると、銀河英雄伝説が思いおこされますね。

主人公のダメ人間さ加減が、こちらのほうがだいぶひどいですが。あれぐらい盛り上がるといいなあ。

気になっていたマシューの意地の見せ場がありました! 天才でははない彼の苦悩に感情移入してしまうのです。

いつか活躍するだろうか。してほしい。

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2018/05/18

オルタニアvol.5

『SF雑誌オルタニアvol5 [○]edited by hassac naminov』を読みました!

タイトル[○]の読み方は「定点 O からの距離が等しい点の集合でできる曲線」という円の定義なのだそうです。長い!

今回のゲストは高橋文樹さんと天王丸景虎さん。NovelJamでの活躍も記憶に新しいお二人です。特に高橋さんの作品は前後編となっており、次に発行される高橋さんが編集長の増刊号に載るそうです。なるほど、そういう仕掛けか!

そして山田さんの連載と淡波さんの短編連作が最終回。さらに伊藤なむあひさんがこの号をもってオルタニアレギュラー陣から卒業。いろいろと動きのある号でした。

一番印象に残った作品は、卒業する伊藤さんの『箱舟事件は迷宮入り』です。タイトルから連想できるようにミステリー。いつものとても不思議な雰囲気の作品に比べて、学園の日常風景の描写から入っており、むしろ普通に書かれると不思議な気がすると思いながら読み進めていくと。

途中からどんどん、どんどんとおかしな方向へ。やばい人の頭の中を覗いている感がひしひしと伝わってきます。つられてこちらの頭の中もぐるぐるとしてきて、混沌の世界へ。

それでいて最後まで読むとストーリーの筋ははっきりしていて、普通の世界に戻ってくる。この計算され尽くされた混沌はすごいなと思いました。

思い返せば最初オルタニア(当時オルタナ)が創刊されると知った時は、ちょうどガンズの創刊準備にかかっていた時期。最初は「そうか、時期前後して2冊創刊されるんだな」ぐらいの認識だったのですが。

出来上がった本を見たら、ジャンルは同じSF、かつメンバーかぶりがあるのに、内容が全く色違い。そこで、こうなっているのはじぶんのせいか、とアイデンティティーを確認することになりました。

対極にあるがゆえに、自分の姿を映してくれる、鏡のような存在。特にこの2冊の色が大きく違っているのは、僕と伊藤さんが対極にあるからだと思うのです。

少年漫画、児童漫画、児童文学と流れてきて、その中で明確にわかりやすく書くという習慣がついている僕。それに対して伊藤さんの作品は、混沌と幻想に彩られ、不思議な世界へ読者をいざなう作品です。

そういうふうに読み比べると、物語の奥深さ、広さを感じます。毎回、読むと視野が広がるような、そんな読書体験ができました。

ブログなどを見ると、伊藤さんは今度は自分で雑誌を作ろうとしている模様。今後ますますの活躍をお祈りしております!

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2018/05/17

天鏡のアルデラミン Ⅱ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅱ (宇野朴人・著)を読みました!

北域鎮台へと送られたイクタたち。大アラファトラ山脈に守られた帝国最北の地は、山の民シナーク族がトラブルを起こす以外に、特に侵略されるようなこともなく、新兵たちに経験を積ませるには絶好の場所だとされていた。

最近はそのイナーク族もおとなしく、特にトラブルもない平穏な日々。しかしそれは、仮初めの、大きな波乱の前触れだった。

姫様のイクタを軍のトップに持ち上げて国を変える大きな企みに対して、それに抜擢されたイクタは「戦がないと昇進なんかできないでしょ」とつれないのですが、そこは当然、主人公に試練が起きないわけはないのです。

しかしその試練がかなり本格的。この作品はファンタジーで、精霊は出てくるのですが、それも何かファンタジーではない設定がありそうだし、用兵の話とか、補給線の話とか、かなり本格的に戦記ものです。

新兵器が新戦略を作ってとか、うきうきとしながら読みましたよ。

普通のキャラ配置だとお笑い担当のはずの小太りのマシューが、けっこうシリアスに悩んでいて、これは何かの伏線になるのかなというところが気になります。

本筋のほうも、終わったかと思いきや、更なるピンチがやってきて、次巻へ続く。絶妙の引っ張り。

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2018/05/11

セルパブ!夏の100冊2017

セルパブ!夏の100冊2017 (ぱぶにゃん・著)を読みました!

セルフパブリッシング本のガイドブックです。2017って、去年の本をいまさら読んだのかと思ったそこのあなた。違いますよ、このあいだ出たんですよ! 書き間違いで2018が2017になってるのでもないですよ!

去年企画されてた本が、諸事情により遅れて、ようやく出たのです。お疲れ様です。

ただ、「読みました!」と言いながら、全部はまだ読めていません。本の紹介を全部読むのは大変なので、とりあえず対談から読んで、他は暇見てちょこちょこ拾い読み中。

その対談の中で一番のヒットは、3つ目の『折羽ル子×くみた柑×淡波亮作 漫才「アワナミーを待ちながら」(2017夏)』。でした。というかね。反則ですよね。すでにタイトルに漫才って入ってますしね。他の対談4本に対して浮きまくりで、とても面白かったですw

他の対談も、いろいろと示唆に富み、参考になることがあって、これらを読むだけでも価値がありますよ!

僕には特に、一つ目の対談、『西崎憲×隙間社 インタビュー「文芸電子書籍への布石」(2017夏)』の、西崎さんの活動と考え方が興味深かったです。商業出版vsセルパブという二極構造ではなくて、そのあいだのスモールプレス。その時のツールとしての電子書籍。この領域って、もっと活発になっていくのではないでしょうか。

さて以前、『このセルフパブリッシングがすごい!』の感想にも書きましたが、とにかくセルフパブリッシングの問題点は、広める力が弱いことです。読者の側からすると、発掘しないといけないから大変。

そこで、こうした本にはとても意義がある。

無料の本ですから、当然無償です。中の人には本当に頭が下がります。

えらい!

すごい!

かっこいい!

なんでこんなに持ち上げているかと言うと。

最後に宣言していますが、ちゃんと2018も作るのだそうです。大変だけど、がんばってー!

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2018/05/10

ガニメデの優しい巨人

ガニメデの優しい巨人 (J・P・ホーガン・著)を読みました!

木星の衛星ガニメデで発見された、太陽系の先代文明の宇宙船。今は亡き第五惑星ミネルヴァに住んでいた地球人の祖先ルナリアンの他に、さらに全く別の異星人ガニメアンがいたことが分かった。彼らは古代の地球を訪問し、動植物を連れ去ったと思われる。

彼らの謎を解こうと調査を続けるうち、使い道のわからない機械を動かす実験を行う。電力を食うわりに何の反応もないと思われたその時、深宇宙からの帰還者が、実は機械から放たれていた信号に呼応してガニメデに向かっていた。

前作の感想でも書いたのですが、この作品はSF的な理屈で進めるお話。議論の部分がすごく多くて、イベントは少ない。

宇宙人が来て、地球人に歓待される。おしまい。

トラブルは全然なく、宇宙人はいい人たちで、出来事をもとにプロット書くとほんとにそれだけです。これであの長さの小説になってるのって、すごいことだと思います。

謎に興味を持たせて、それが明らかになっていく過程で刺激を与える。あとはSF的なギミックに対する興味。

それは確かにSFの面白さの中核なのですが、ほとんどそれだけで引っ張ってる。本当に筆力がないと、こんなことはできない。

実際楽しく読めていて、さて感想書くぞとなって内容思い出した時に、「あれ? これだけ?」となって驚いているところなのです。ほんとすごい。

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