書籍・雑誌

2018/11/08

ハロー・ワールド

ハロー・ワールド (藤井太洋・著)を読みました!

何でも屋のエンジニア、文椎泰洋(ふづい・やすひろ)は、グーグルの凄腕エンジニア郭瀬敦(くるわぜ・あつし)と、派遣先の同僚汪静英(ワン・ジンイン)とともに、ネット広告ブロッカーのアプリを開発、販売していた。それは専門を持たない文椎が、プロジェクトに最後まで関わってみたいと、半ば趣味のようにして進めているもの。アプリ開発のワークショップで知り合った他の2人が、興味を持ってチームを組んだのだった。

半ば趣味なので売り上げはそんなにたいしたことはなかったのだが、ある時突然売り上げが急増し始める。調べてみると、急に売れ始めた地域はインドネシア。それには特別な事情があって……。

ということで11月10日のイベント『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』でテキストに使う、『ハロー・ワールド』にたどり着きましたよ!

デビュー作から順に読んできたわけですが、通して読むと、通底している部分と作品により変わっている部分がよくわかります。まさに藤井先生の頭の中。藤井先生の世界観。

この僕の読みがはまっているのか。イベントの価値を左右する、僕の質問のクオリティがそれにかかっているわけですよ。さあどうだ!

さらに、藤井先生直筆赤字入り改稿原稿、ご本人解説付きという、超目玉企画も発表されております。11/10(土)グラスシティ渋谷10階、HDEオープンテラスにて。チケットはこちらから。

さて、本の感想ですけれども。

面白かった!

表題作で巻頭の『ハロー・ワールド』。主人公の文椎が、アプリが売れた原因を知った時、己の信念を貫くところがいい。熱が湧き上がってくる展開。

単にかっこいいことを言ったのではなくて、それに関わる意味とかを十分に分かった上で、それでも決断してみせる。その決断の一つ一つが、その後、文椎の辿る運命を決めていく。

まさにHallo,world! 世界への扉を自分で開けてみせたのです。こういうメッセージって、藤井先生の作品ではよく出てきますよね。天才が世界を変えるのではなく、その辺の人だった主人公が、勇気と信念を見せて成し遂げる。こういう世界観についてもお聞きしたいですね!

あと、そういう大きなテーマとは関係ない個人的な萌えポイントは。

二作目の『行き先は特異点』でのAmazonの配達ドローンです。事情があってのことだけど、ポンコツロボっぽい。しかもけなげ。ほっこり。

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2018/11/05

公正的戦闘規範

公正的戦闘規範 (藤井太洋・著)を読みました!

2024年上海の日経ゲーム会社に勤める趙公正(チャオ・ゴンツェン)は元軍人。中国のウイグル自治区からやってきた。子供の頃、国から支給されたスマホに入っていたゲームアプリが、今開発しているゲームに似ていると思ったのだが、他に同じようにスマホを支給されていた同僚に聞いても、誰も覚えていない。

やがて春節の休みで故郷に帰る列車の中、そのアプリに秘められた秘密を知ることになり……。

表題作を含めた全五編を収録。

一番印象に残ったのは、最初に載っている『コラボレーション』です。『Gene Mapper』と同じ世界観の作品。インターネットが使えなくなり、トゥルーネットという新しいネットに代わっているのですが、実はインターネットの方でネットを遮断する、原因なった検索エンジンの修復機構がまだ動いており、それが進化を遂げているというもの。

いま話題のAIの進化によるシンギュラリティにつながるようなお話です。

ドキッとしたのはオチの部分。ある意味投げっぱなしになっており、この結末が良い方へ行くのか悪い方へ行くのかわからない。まさに未来が見えない今の状態をよく表していて、期待と恐怖がないまぜになった、なんともいえない読後感だったのでした。

同じようなテーマが『第二内戦』でも書かれていて、技術が人の手を離れる恐怖と、それにより大きく発展する可能性という、はらはらするようなわくわくするような、そんな読後感になっています。

こういう読後感は他のジャンルの作品では感じることはできず、SFならではの醍醐味です。面白かった!

さて、作者の藤井太洋先生をお招きしてのトークイベント『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』の開催が、いよいよ今週末に迫ってきましたよ!

藤井先生の作品は、ちょっと先のありうる世界を書いていることが多いのですが、この辺りの情報収集についてもお聞きしたいところですね。11/10(土)14:00より、グラスシティ渋谷10F、HDEオープンラウンジで開催です。チケットお申込みはこちらから。

そして次はとうとう、『ハロー・ワールド』!

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2018/10/28

ビッグデータ・コネクト

ビッグデータ・コネクト (藤井太洋・著)を読みました!

京都府警サイバー犯罪対策課の万田警部は、滋賀県警捜査一課長、沢木警視の要請により、世間を騒がしているITエンジニア誘拐事件の捜査に参加することになった。行政サービスの民間委託プロジェクトの作業部隊の責任者が行方不明となり、その指が送り付けられてきた、という猟奇事件である。

畑違いの捜査に招かれたのは、二年前万田が追っていた〈XPウイルス〉事件との関連が疑われたからだった。その参考意見を聞くために、ウイルス作成者の汚名を着せられ冤罪を被った元エンジニア、武岱修(ぶだい・おさむ)に協力を要請することになるのだが……。

デビュー作の『Gene Mapper』から始めて『オービタル・クラウド』、『アンダーグラウンド・マーケット』そしてこの『ビッグデータ・コネクト』と読み進めてきたわけですけれども。

この作品が一番好き。

話の題材的には、宇宙好きの僕にとっては、スペーステザーが出てきて衛星軌道上で事件が進む『オービタル・クラウド』なのですけれど、話の展開的にはこちら。

一気に読み終えることができました。というか、最初ちらりと冒頭を読んだ時にそういう予感がしたので、仕事の予定がない日まで置いといたぐらいなのです。

面白さとは、脳に刺激を与えることで、なんらかの情動を引き起こすこと。すると刺激の密度の高いものが面白いものだということになる。そしてその刺激の種類がいろいろあって、個性をつくっている、というのが僕の仮説なのですが。

その観点から見た時の、藤井太洋作品の面白さというのは、情報の密度ではないか。惜しげもなく突っ込まれる知識。ガンガンと進んでいく事件。そういう部分が、面白さを作っているのではないかと思われます。

その特徴と、この話は非常に合っている。

前三作は近未来を扱ったSFでしたが、それでもほんの数年先だったりと、かなり現代に近く、今回に至っては普通に現代物でミステリー。

そのミステリーというジャンルと藤井先生の作風の相性がとてもよく、謎が次から次へと提示され、ストーリーにぐいぐいと引っ張られていきます。ページをめくる手が止まらない面白さ。本当に夢中で読みました。

そして、話がそういうふうにグイグイ進む場合、その分キャラクターが薄くなることが多いのですが、そこでキャラクターの芯を感じさせるのが藤井先生のうまいところでもあります。

ウイルス作成事件の冤罪被害者となった武岱の、謎めいたキャラクターももちろんのこと。

頭の固い、抵抗勢力と思われていた綿貫が、武岱擁護に回るシーンは、まさにキャラクターの芯、彼らしい一本気さがよく表れていて、とても気持ちよかったです。

さて11/10のイベントに向けて、藤井先生の著作を頭から順に読むということをしているのですが。

こうして立て続けに読むことによって、質問しなければいけないポイントが見えてきましたよ。この高密度さを作っている、プロットづくりの秘訣については聞かねばなるまい!

ご興味がおありの方は『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』に、ぜひご参加ください。ご来訪お待ちしております<(_ _)>

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2018/10/23

アンダーグラウンド・マーケット

アンダーグラウンド・マーケット (藤井太洋・著)を読みました!

東京五輪が近づく2018年。労働力流動化条項により移民が大量に流入した日本。Webエンジニアの木谷巧(きたに・たくみ)は就職に失敗し、友人のデザイナー鎌田大樹(かまた・だいき)とともに、移民たちの作る地下経済で、Webサービス構築の手伝いをして生計を立てていた。

飛び込み先で出会った凄腕エンジニアの森谷恵(もりや・めぐみ)とも組んで、仕事を受けていた巧は、クライアントの齋藤のところで、国内最大手通信会社の城村有沙(きむら・ゆさ)と出会う。彼女は地下経済で流通する仮想通貨N円のポイントサービス、ピタットを開発していて……。

『Gene Mapper』はバイオテクノロジーの話。『オービタル・クラウド』は宇宙開発の話。けっこうはっきりとSF的なテーマが示されていたのですが。

こちらのお話は仮想通貨と移民の話で、しかも東京五輪前。近未来SFというにはかなり、現代物に近い構造です。舞台もほとんどが東京都内。ご近所で時代も近いとなれば切実感が違います。というか、発行2016年の2年後で、2018年が舞台って今年だよ!

実際、いつも通勤で通る池袋とか、外国の人が本当に多いですしね。

ただ移民問題で厳しい現実を書いたように見える今作ですが、実は世界中の人となかよく暮らすという理想に基づいて書かれています。移民が流入して、格差が拡大して、日本人でも一度レールから外れてしまうと苦しい暮らしになる、現実でも起きかねない怖い設定なんだけど、そこにも人の暮らしと交流があるんだというような。

現実のヨーロッパやアメリカで移民との軋轢が大きくなっている中、そういう藤井先生の基本的にポジティブな姿勢が浮き上がってしまうのは悲しいところ。作中では移民の人たちがフリーライドをよしとしておらず、同じ場所に暮らす仲間としての義務を果たそうとしているいい人たちなのですが、現実はそうじゃない人も多い。理想的な関係は、双方がその理想を実現しようとして初めて成り立つ。日本はどうなるんでしょうかね。

というようにフィクションとして楽しむよりも、ヒリヒリとした現実感に色々と考えさせられてしまう、そんなお話でした。

作品づくりの視点から見た場合、これは藤井先生の作り込みがしっかりしているという証だなと思います。リアリティを生むために、情報を詰め込み、世界をしっかりと構築してある。やっぱりそのあたりの密度がすごい。

そしてリアリティということで言えば、よく知らないのに知ったかぶって事態を悪化させていく斎藤のキャラが、いい味を出しているなと思いました。モデルがいるのかなw

さて、宣伝もしなければ!

アイディア、知識、描写と高密度に詰め込んで、他を圧倒する質量の作品を書く藤井太洋先生の頭の中はどうなっちゃってるの? というところを覗いてしまおうというイベントを立てました!

『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』

興味深いお話が聞けること間違いなしです!ぜひご参加ください!

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2018/10/16

オービタル・クラウド

さあ、11/10(土)の日本独立作家同盟のイベント『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』開催に向けて、藤井先生の著作を一気に通して読むプロジェクトを進めていますよ!

本日の感想はオービタル・クラウドです!

スペース・デブリが大気圏に突入することによって発生する流れ星を予測するWebサイト〈メテオ・ニュース〉を運営する主人公、木村和海(きむら・かずみ)。ある日イランが打ち上げたロケットの二段目の突入予測を立てようとしたところ、使い捨てられたはずのそれが、高度を上げていることに気づく。

シェアオフィスの仲間で、Webシステムを構築してくれている沼田明利(ぬまた・あかり)の協力を得て、和海は公開されている観測データから、二段目のそばにある謎の構造物を見つける。それは世界を変えようとするテロ計画の一環で……。

藤井先生がデビュー2作目にして日本SF大賞を受賞した長編です。その評価にたがわず、すばらしい出来栄えでした。

まず、サイエンスの部分の密度。藤井さんの専門領域であるITのアイディアがぎっちり詰め込まれ、そこにスペーステザーなど宇宙開発の話も。

そしてプロットの緻密さ。この小説は場面転換が多く、いろいろな場所で動いている人たちを追って、群像劇の形でスタートします。それが話の全貌が見えていくにつれて、その人たちが出会い、ばらばらだった筋が統合されていく。その過程でどんどんお話が加速していく組み立て方がお見事。目が離せなくなります。

そしてこっそり、エンタメの王道がしのばされており。主人公和海と相棒となる明利は、シェアオフィスを使っているスタートアップ仲間という設定。言ってしまうと、明日の大金持ちを目指す極零細一人ベンチャー、それだけではご飯が食べられないので他のことも請け負うしがないWeb屋なのですが。

そんな主人公たちが、実はすごい能力があって、国家が絡む陰謀に立ち向かっていく。CIAのエージェント、作戦を指揮するクリスが、「和海と明利、この二人に請負のWeb屋をやらせているだなんて――日本はどうかしている。」と心の中で思うシーンは、「よっしゃ、きたー!」と喝采を叫ぶところなのです。

「主人公、実はすごい」は、ほんと見せ場ですよねー。とても面白かったです!

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2018/10/03

Gene Mapper -full build-

Gene Mapper -full build- (藤井太洋・著)を読みました!

遺伝子を設計して作る「蒸留作物」が普通となった未来。遺伝子デザイナーの林田は蒸留作物のトップメーカーL&Bから依頼を受け、完全有機栽培のプロジェクト〈マザー・メコン〉のイネの遺伝子設計を手掛けた。

しかし、その稲が、遺伝子崩壊を起こしているのではないかという知らせを受ける。遺伝子崩壊を起こしていたらプロジェクト失敗の大問題なのだが、さらにはその遺伝子が、ばかみたいに大きなサイズになっている、全く未知の変異が確認されて……。

藤井太洋先生は、KDPが日本に来た時にこの本の原型となる作品を発表。あっという間にベストセラーになってプロデビュー、日本SF作家クラブ会長にもなるという、セルパブ立志伝中の人なのです。

こちらの本はそのセルパブ版を改稿したもの。バイオテクノロジーを主題に、拡張現実が世界観にいろどりを添え、「今」を感じさせる作りです。

SF的に、この「現在話題になっている題材を取り込んで、来たるべき未来を感じさせる」というのは、とても大きい要素です。ここの描写がとてもしっかりしているのが、まず魅力です。

また藤井先生は、僕の参加している日本独立作家同盟の理事でもあって、セミナーにも登壇され、その時に、プロットの作り方をお話しされていて。

それを思い出しながら読むと、構成の巧みさにもうならされます。さりげなく、伏線張ってある。だんだん物語が加速していって、目が離せなくなります。

この作品はある意味で、出版の歴史を変えた作品の一つなのですが、なるほど、それだけの力があるなあと思ったのでした。

あと、来たるべき未来という点で個人的に、拡張現実の犬のエージェントがかわいくてよかったです。あれならペット禁止物件でも犬飼える(憧れ)

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2018/09/27

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 1

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 1 (大森藤ノ・著)を読みました!

田舎から迷宮都市オラリオにやってきた少年、ベル・クラネルは、ダンジョンでの冒険に異性との出会いを夢見る駆け出し冒険者。人望のない無名の女神ヘスティアのファミリアの一員として、荒れ果てた教会で一緒に暮らしている。

ある日、ダンジョンでの冒険中、実力に見合わないモンスターとの遭遇に、ベルは死を覚悟する。その時助けてくれた高名な冒険者、金眼金髪の女剣士アイズ・ヴァレンシュタインに覚えた憧れが、ベルに急成長のスキルを発動させ……。

相変わらず、世間の流れからはぐれて生きているので、流行った時には目にしておらず、ようやく読みました。

ヘスティア様がかわいい。アニメで話題になった時は、ひもがーという話でしたが、そっちではなく。

30時間耐久土下座で丸くなってるところとか、「……い、いいのかい? 本当に、ボクの【ファミリア】なんかで?」とか、いじらしいところ。勢いでアニメも見てみたのですが、そっちだとカットされてた。残念。

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていると、出だし早々に言い切っているのに、出てくる美女出てくる美女が全部ベル君を気にかけていたり、これがエンタメの正解と言わんばかりの展開をそっちのけで、そこに引かれている自分は本当に世間からはぐれていると思うのですがw

あと、最近、名前がついていないけど、「いつものファンタジー世界観」で作られる作品群が気になっていて。

このお話もその一群の一つなので、追ってみようと思います。

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2018/09/26

天鏡のアルデラミン ⅩⅣ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン ⅩⅣ (宇野朴人・著)を読みました!

最終決戦が始まった。攻めるキトカ共和国。率いるは「不眠(ねむらず)の輝将」ジャン・アルキネクス。新たにもたらされた新技術、精霊通信を用いて全軍を掌握、自ら全ての部隊に指示を送る。受けるはカトヴァーナ帝国。自国に引き込んで敵の消耗を誘う作戦。新戦略イクタ・ドクトリン「休める時にしっかり休む」で、長期戦での勝利を狙う。

対照的な、けれど稀代の名将二人による、拮抗した攻防。決着がついたと思った最後に放たれた、誰もが思わなかったイクタの一手が……。

最終巻なので、全体を通しての感想を。まず、第12巻の感想として書いたように、すごいSFでした。

最初に見たのはアニメの第一話で、初見の印象は、ライトノベルによくあるファンタジー。そのあと小説を読むと、精霊の設定にSF的なものがありそうだという感じでした。

近年ではSFとファンタジーのいいとこ取りの作品は数多くあるため、それはあまり珍しいと思えるものではなく、むしろちょっと地味だなと思うぐらい。

さらに、そういう作品は科学と魔法の共存みたいな形なのですが、そういえば魔法が出てこない。さらに地味。戦争における技術発展がテーマになってて、それも地味。地味でしっかりしたお話は好みなので、うきうきして読んでいたのですけれど。

それが第12巻で、世界設定の全貌が明かされた時。これはSFとファンタジーのいいとこ取りの形なのではないと気がつかされます。一見ファンタジーに見えるけれども、実は壮大なSFだったということ。

SF&ファンタジーのいいとこ取りをする作品の狙いは、映像的に派手な要素を並べることで、そこで派手な魔法がないから地味だなと思っていたけれど。

SFとしての全貌が見えた時、今度はSFの持つ派手要素、全世界の運命を語る壮大さが浮かび上がってきます。その部分は超ド派手な話だったよ! SFファンとして感嘆させられました。

そして全体を通したお話の筋。

最初に第一巻を読んでいた時、途中までは「地味だけど、キャラの掛け合いが楽しくて、まあまあおもしろい」ぐらいの感想でした。それが最後に、大どんでん返しが提示されて、続きを読まねば! と変わります。

そこで示された伏線が、物語の底流として、ずっと潜んでいて。どうなっちゃうのかなと、ずっと気になっていたのですが。

それがこの最終巻でどばっと表面化。しかもこの作品は、途中で想像を上回る手厳しい展開を見せて、ヒロインだろうと思われたヤトリが退場しています。ハッピーエンドにならない可能性が十分にある。どんどん悪化していく状況に、手に汗握って読みました。

完全に作者の思惑に転がされていた形。そして、迎えた最後のシーン。物語の後日談が書かれ、それぞれが過去を飲み込んで、哀しみを抱えながらも前向きに生きている。それでも十分いい終わり方でしたが。

おまけのように始まる、不思議なシーン。

それが、第12巻で張られていた伏線だと気づいた時。

それが、この物語をずっと貫いていた二人のテーマだと気づいた時。

ラストシーンは、以前のシーンを重ねているのだと気づいた時。

そして、この作品のタイトル自体にSFの設定を暗示する伏線が仕込まれていた上に、最後の一文がそれを使っていた時に。

ぞくぞくと背筋を走る感動がありました。

こういうふうに感じられるお話には、そうは出会えない。

読後の満足感がとても素敵なお話でした。

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2018/09/22

巨人たちの星

今週は早出仕事が多く、今日も仕事で出かけたので、サッカーの偵察が間に合っていません。ということで、本日は読書感想。

巨人たちの星 (J・P・ホーガン・著)を読みました!

ガニメアンたちが同胞が移住したと思われる星へ旅立った後、その星から入ってきた通信。太陽系から移住したという仮説は裏付けられた。

しかし、その後コンタクトを続けるにつれ、おかしなことが発覚する。向こうはどうやらずっと地球を監視していたらしいこと。なのにその内容がでたらめなこと。さらには、地球側の対応も、どうもおかしなことになっていて……。

月で見つかったルナリアン。ガニメデで見つかったガニメアン。謎の異星人発見から始まった物語は、人類発祥の謎へとつながり、ぐるりと回ってそれが明らかにされました。

このお話がアメリカで発表されたのが1981年。ミッシングリングと呼ばれた、人類進化途中の化石が見つかっていないという謎はまだ解明されていない時期。また小惑星帯がどうやって生まれたのかも謎、冥王星の軌道だけが大きく傾いた楕円軌道なのも謎でした。

そういうものを一つの仮説でまとめて物語にする。この壮大さがSFの醍醐味ですね。おもしろかった(^^)/

余談ですが、そんな荒唐無稽さを売りとするSFにおいて、この物語ではアメリカに対抗する国際勢力としてソビエト連邦が出てきます。考えたらこれはベルリンの壁崩壊前のお話。

宇宙人地球来訪よりもソ連崩壊のほうが荒唐無稽だった、というのが、あのころの世相を現していておもしろいなあとも思いました。

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2018/09/20

天鏡のアルデラミン ⅩⅢ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン ⅩⅢ (宇野朴人・著)を読みました!

この世界の真相を知り、国へ帰った一行。最終決戦の日が迫る、最後の日常。その中では、少しずつ、変化が訪れる。

新しい家庭を築く者、なくなった家族を愛おしむ者、新たな関係を築こうとする者、そしてより深い関係を築く者。

そして訪れる最終章。

僕のここでの感想文は、お読みいただいていれば分かるように、だいたいフォーマットが固まっています。まず、冒頭の部分を中心に、あらすじをまとめて、上のように引用の囲みでくくって、となっているのですが。

今回はここの部分で、めっちゃ悩みました。なぜかと言えば、ほんとに決戦前の日常で、みんなのシーンが少しずつ書かれているからです。冒頭だけまとめると、マシューとポルミの話だけになっちゃう。かといってみんな書いたら、ほとんど全部ネタバレです。

しかし、この日常が。

この、ちょっとほのぼのしたり、切なかったり、じわっと来たりする日常が。

来たるべき、すべてを賭けた非日常、最後の決戦への伏線として、描かれているわけで。

さあ、次巻いよいよ最終巻。

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