書籍・雑誌

2018/09/26

天鏡のアルデラミン ⅩⅣ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン ⅩⅣ (宇野朴人・著)を読みました!

最終決戦が始まった。攻めるキトカ共和国。率いるは「不眠(ねむらず)の輝将」ジャン・アルキネクス。新たにもたらされた新技術、精霊通信を用いて全軍を掌握、自ら全ての部隊に指示を送る。受けるはカトヴァーナ帝国。自国に引き込んで敵の消耗を誘う作戦。新戦略イクタ・ドクトリン「休める時にしっかり休む」で、長期戦での勝利を狙う。

対照的な、けれど稀代の名将二人による、拮抗した攻防。決着がついたと思った最後に放たれた、誰もが思わなかったイクタの一手が……。

最終巻なので、全体を通しての感想を。まず、第12巻の感想として書いたように、すごいSFでした。

最初に見たのはアニメの第一話で、初見の印象は、ライトノベルによくあるファンタジー。そのあと小説を読むと、精霊の設定にSF的なものがありそうだという感じでした。

近年ではSFとファンタジーのいいとこ取りの作品は数多くあるため、それはあまり珍しいと思えるものではなく、むしろちょっと地味だなと思うぐらい。

さらに、そういう作品は科学と魔法の共存みたいな形なのですが、そういえば魔法が出てこない。さらに地味。戦争における技術発展がテーマになってて、それも地味。地味でしっかりしたお話は好みなので、うきうきして読んでいたのですけれど。

それが第12巻で、世界設定の全貌が明かされた時。これはSFとファンタジーのいいとこ取りの形なのではないと気がつかされます。一見ファンタジーに見えるけれども、実は壮大なSFだったということ。

SF&ファンタジーのいいとこ取りをする作品の狙いは、映像的に派手な要素を並べることで、そこで派手な魔法がないから地味だなと思っていたけれど。

SFとしての全貌が見えた時、今度はSFの持つ派手要素、全世界の運命を語る壮大さが浮かび上がってきます。その部分は超ド派手な話だったよ! SFファンとして感嘆させられました。

そして全体を通したお話の筋。

最初に第一巻を読んでいた時、途中までは「地味だけど、キャラの掛け合いが楽しくて、まあまあおもしろい」ぐらいの感想でした。それが最後に、大どんでん返しが提示されて、続きを読まねば! と変わります。

そこで示された伏線が、物語の底流として、ずっと潜んでいて。どうなっちゃうのかなと、ずっと気になっていたのですが。

それがこの最終巻でどばっと表面化。しかもこの作品は、途中で想像を上回る手厳しい展開を見せて、ヒロインだろうと思われたヤトリが退場しています。ハッピーエンドにならない可能性が十分にある。どんどん悪化していく状況に、手に汗握って読みました。

完全に作者の思惑に転がされていた形。そして、迎えた最後のシーン。物語の後日談が書かれ、それぞれが過去を飲み込んで、哀しみを抱えながらも前向きに生きている。それでも十分いい終わり方でしたが。

おまけのように始まる、不思議なシーン。

それが、第12巻で張られていた伏線だと気づいた時。

それが、この物語をずっと貫いていた二人のテーマだと気づいた時。

ラストシーンは、以前のシーンを重ねているのだと気づいた時。

そして、この作品のタイトル自体にSFの設定を暗示する伏線が仕込まれていた上に、最後の一文がそれを使っていた時に。

ぞくぞくと背筋を走る感動がありました。

こういうふうに感じられるお話には、そうは出会えない。

読後の満足感がとても素敵なお話でした。

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2018/09/22

巨人たちの星

今週は早出仕事が多く、今日も仕事で出かけたので、サッカーの偵察が間に合っていません。ということで、本日は読書感想。

巨人たちの星 (J・P・ホーガン・著)を読みました!

ガニメアンたちが同胞が移住したと思われる星へ旅立った後、その星から入ってきた通信。太陽系から移住したという仮説は裏付けられた。

しかし、その後コンタクトを続けるにつれ、おかしなことが発覚する。向こうはどうやらずっと地球を監視していたらしいこと。なのにその内容がでたらめなこと。さらには、地球側の対応も、どうもおかしなことになっていて……。

月で見つかったルナリアン。ガニメデで見つかったガニメアン。謎の異星人発見から始まった物語は、人類発祥の謎へとつながり、ぐるりと回ってそれが明らかにされました。

このお話がアメリカで発表されたのが1981年。ミッシングリングと呼ばれた、人類進化途中の化石が見つかっていないという謎はまだ解明されていない時期。また小惑星帯がどうやって生まれたのかも謎、冥王星の軌道だけが大きく傾いた楕円軌道なのも謎でした。

そういうものを一つの仮説でまとめて物語にする。この壮大さがSFの醍醐味ですね。おもしろかった(^^)/

余談ですが、そんな荒唐無稽さを売りとするSFにおいて、この物語ではアメリカに対抗する国際勢力としてソビエト連邦が出てきます。考えたらこれはベルリンの壁崩壊前のお話。

宇宙人地球来訪よりもソ連崩壊のほうが荒唐無稽だった、というのが、あのころの世相を現していておもしろいなあとも思いました。

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2018/09/20

天鏡のアルデラミン ⅩⅢ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン ⅩⅢ (宇野朴人・著)を読みました!

この世界の真相を知り、国へ帰った一行。最終決戦の日が迫る、最後の日常。その中では、少しずつ、変化が訪れる。

新しい家庭を築く者、なくなった家族を愛おしむ者、新たな関係を築こうとする者、そしてより深い関係を築く者。

そして訪れる最終章。

僕のここでの感想文は、お読みいただいていれば分かるように、だいたいフォーマットが固まっています。まず、冒頭の部分を中心に、あらすじをまとめて、上のように引用の囲みでくくって、となっているのですが。

今回はここの部分で、めっちゃ悩みました。なぜかと言えば、ほんとに決戦前の日常で、みんなのシーンが少しずつ書かれているからです。冒頭だけまとめると、マシューとポルミの話だけになっちゃう。かといってみんな書いたら、ほとんど全部ネタバレです。

しかし、この日常が。

この、ちょっとほのぼのしたり、切なかったり、じわっと来たりする日常が。

来たるべき、すべてを賭けた非日常、最後の決戦への伏線として、描かれているわけで。

さあ、次巻いよいよ最終巻。

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2018/09/12

天鏡のアルデラミン Ⅻ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅻ (宇野朴人・著)を読みました!

カトヴァーナ帝国、キオカ共和国、ラ・サイア・アルデラミンによる三国会談が始まった。そこには予期せぬ闖入者、イクタの師、アナライ・カーン博士の姿もあった。懐かしい面々と旧交を温めるイクタ。

しかし会談は予期せぬ精霊のからの「神の試練」のお告げで中断される。その試練は、紙の与えたもうたものとしては異質な、明らかに幾何学その他科学の知識を問うもので……。

読んで一言。

すんごいSFだった!

精霊の設定から予期はしていたけど、すんごいSFだったよ!

ということで、世界の謎は解けて、あとはキャラクターの問題をどう解決するか。

さて、どうなる。

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2018/09/07

天鏡のアルデラミン Ⅺ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅺ (宇野朴人・著)を読みました!

イクタが帝国文官に推挙した、アナライの兄弟弟子二人。特にそのうちの一人、イクタの妹弟子となる少女ヴァッキェは、まさに爆弾だった。

物怖じすることなく暴君と恐れられる女帝シャミーユに反論し、さらには昼食の場にまでずかずかと侵入。シャミーユを挑発して子供じみた口喧嘩を繰り広げる。だがそれはイクタも望んでいたこと。頑ななシャミーユの心の殻を壊すための爆弾。果たしてその成果は……。

がらっと様相が変わった第11巻。原因はとにかく破天荒なヴァッキェのキャラクターです。重かった帝国の雰囲気を問答無用でぶち壊していきます。

しかし、うまいなあと思ったのは、巻の後ろでの彼女の告白。自分の生い立ち、そして名前に込められた両親の想い。登場した時、マィリゥウィーンヴァッキェン・シャットウィェッタニェルシスカッツという、長すぎて作者は書く時コピペしてんじゃないかなと思うぐらいの名前にこだわっていたのが、なるほどここで花開く。

さらに、ハロ=パトレンシーナの扱い方。前巻の感想で、うまいこと処理したと書きましたが、かなり強引であることは否めない。でもそれを作中で認めてイクタの言葉として書き、さらに、その先の行動へとつなげました。やるなあ。

そして最後にはさらなる爆弾登場。世界観が壊れる予感。どうなるのかな。

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2018/08/18

天鏡のアルデラミン Ⅹ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅹ (宇野朴人・著)を読みました!

帝国からのアルデラ教徒の亡命を阻止すべく動いた帝国軍。そこへシャミーユもやってきた時、アルデラ教徒に捕虜収容所から脱走したキオカ海軍の一団も加わり、東のキオカ陸軍と合わせ、挟撃される形になってしまった。

さらに、そのキオカ軍を指揮するのは、『不眠の輝将』ジャン・アルキネクス。トルウェイ率いる狙撃兵大隊も封じられ、帝国軍は劣勢に陥る。そこへ疾風のごとく駆けつけ、戦局を打破したのは……。

ハロ=パトレンシーナの暗躍が続いてましたが、決着を見ました。

ヤトリは悲しい最期となっているので、これは騎士団の面々が非業の死を遂げていく、超つらい話なのではと、恐れおののきながら読み進めていたのですが。

違う展開だった。よかった。

シャミーユの暴君ぶりとか、ハロの裏切りとか、けっこうこの辺の扱いは難しいと思うのです。いや、真っ暗なお話にしていいなら、ある意味一本道ですけれど。そうじゃない展開にすると、実際には犠牲もあったわけで、そこをどう納得させるのか。

かなりの力技になるのですが、そこのところの厳しい展開をうまく処理してるなと思いました。

さらに、ここまでのつらい展開を、登場シーンだけで打ち砕く新キャラが最後にどどーんと。

真っ暗一本道だったらむしろ先の展開が読めるのですが、さっぱりわからなくなりましたよ。

ある意味、狂気に狂気をぶつける形になるわけですが、宮廷の中の争いも目が離せません。さあ、どうなる。

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2018/07/17

天鏡のアルデラミン Ⅸ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅸ (宇野朴人・著)を読みました!

アルデラ教の総本山、ラ・サイア・アルデラミンとの国交が、北域での騒乱で絶たれて以来だいぶ経つ。国交回復の見込みはなく、カトヴァーナ帝国内のアルデラ教徒の間には、動揺が広がっていた。

そこに付け込むのが策謀に長けた隣国、キオカ共和国。その先兵として眠れる工作員が目目覚めた。帝国騎士として女帝シャミーユの信任も厚い、ハローマ・ベッケルのうちに眠る、第二の人格、パトレンシーナが……。

ハロが何か事情を抱えてて、多分キオカとつながってるというのは、ここまでの伏線を見てると想像ついてたのですが。

想像を上回ってきましたよ。

ハロの抱えていた事情が想像以上だったし。

ハロの中に眠っていたバトレンシーナの厄介さも想像以上だったし。

そしてこうなってくると、この後もかなりの混乱があって、その最後も甘くないものになるんだろうなあと、今度は別の想像ができてしまうのです。

そして、二巻に渡って眠っていた主人公の帰還。思いの深さに震える。

でもその間にだいぶ事態は悪化しています。亡き半身の想いに応えることはできるのか。

日曜に一仕事終えて、ようやく本読む余裕ができたんだけど、その一日に読むには十分過ぎる歯応えの巻でした。どうなっちゃうのかな。

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2018/07/10

天鏡のアルデラミン Ⅷ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅷ (宇野朴人・著)を読みました!

カトヴァーナのクーデターから2年後。隣国キオカ共和国も泰平というわけではなかった。他民族の寄せ集めであるキオカでは、その反動で民族運動が勃興していた。そのさなか、不眠の輝将ジャンは、イクタの師匠アナライと出会う。

カトヴァーナ帝国では、シャミーユが帝位を継いでいた。己の身に流れる皇帝の血を呪うシャミーユは、自らの才能と存在をゆがませ、恐怖政治を敷き、帝国を力で統治していた。それを止めうるイクタは、ヤトリの死以後、意識を内にこもらせて何の反応もない。二本柱を失った帝国騎士団の面々は必死にその役割を果たそうとするが……。

前巻で一つ大きな流れが終わって、新たな展開に向けて、いろいろと種をまく巻でした。

キオカでは新たな出会いがありました。ジャンとアナライ博士はかなり相性が良さそうで、そうなるとイクタの前に大きな壁となって立ちはだかりそうです。

カトヴァーナではシャミーユが帝位につきましたが、これは望んだ結果ではなく、クリスナイの謀略に乗せられたもの。確かな才能を持つシャミーユですが、それがゆがんだ形で芽吹いてしまってきます。それを止められる者は誰もおらず、残った騎士団の面々はいっぱいいっぱい。

いつまで寝てんの、取り返しつかなくなっちゃうよ? と、ジリジリとさせられて、最後にその伏線がここで! という大きな引き。このあたりは、本当にうまいです。続きを読まねば。

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2018/07/04

天鏡のアルデラミン Ⅶ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅶ (宇野朴人・著)を読みました!

帝国の行く末を案じたレミオン大将一派のクーデター。対峙するイグゼム元帥に、二派の調停を目的として駆け付けたイクタ率いる旭日連隊。三つ巴の内乱の陰には、佞臣トリスナイ。イクタはそのトリスナイを追い詰め、内乱を収束させられるかに見えた。

しかし、トリスナイは策謀をもって、精霊の加護を得、さらに皇帝に成り代わり勅命を出した。イグゼムには無視しえない、イグゼムである以上ヤトリには無視しえない、イクタを殺せという勅命を。

この流れはいつ頃思いついたんだろう。最初からなのだろうか。読み終えた時、そんなことを考えてました。

このお話はいわゆる「ライトノベル」の型で始まっているんですよね。赤毛の気の強い男勝りのヒロイン。癒し系巨乳。ロリっ子の姫様。型どおりに「型破りな」主人公に、イケメンと小デブ。精霊がロストテクノロジーっぽく、科学の話を取り入れてるところで、ちょっと差別化。そういう点で、手堅く作ってるなというのが、第一印象で。

でも、イクタとヤトリの関係がちょっと普通と違ってもいて、その辺は、一巻の感想でも一言触れています。それに一巻ラストの引っ張り方が虚を突く感じで、これは普通ではないなと思わせた。

でも、こんなことになるとは、こんなところまで来るとは、思わなかったよ。

子供のころの二人がたっぷり書かれていて、これがめっちゃ効いている。

心にずしりと重く響く、そんな最後でした。

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2018/06/19

天鏡のアルデラミン Ⅵ

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン Ⅵ (宇野朴人・著)を読みました!

ヤトリが呼び戻された理由は軍事クーデターの勃発だった。貴族の帝国軍への介入を拒みたいレミオン大将と、軍政分離を頑なに掲げるイグゼム元帥のもと、軍にはもともと二つの派閥があったのだが、帝国の腐敗が進行するなか、耐えきれなくなったレミオン大将が行動に移したのだった。

二刀の稀有な使い手としてだけではなく、その精神をもってしてレミオンを体現するヤトリは手元に呼び戻され、銃の腕には目を見張るものがあるけれど、性格的には軍人に向かないレミオンのはみ出し者トルウェイは、地方にとどめ置かれた。別れてしまった騎士団が一緒に笑い合える日は帰ってくるのか。

帝国の腐敗、二大派閥の対立、その中で、ヤトリやトルウェイが背負わされているもの。この展開になる前から、そこかしこに書かれていました。

そうするとそれは「今提示された設定」ではなく、「キャラクターの一部」となっているので、物語が進んでいく中で、非常に効いてきます。

心優しいレミオンの末っ子が、優しいままに、仲間のために引き金を引く。いい展開(^^)/

さらに最後にまた、強い引きが。この作品は引きを作るのうまい。次に行かねば。

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