書籍・雑誌

2023/12/23

白をつなぐ

白をつなぐ (まはら三桃・著)を読みました!

白をつなぐ

トラックを走る一団がいた。全国男子駅伝福岡県代表の合宿。中学生から社会人まで、幅広い年齢層で挑む大会だ。選ばれた選手は年齢だけでなくキャラクターも幅広い。ぼんやり走っていたらいつの間にかトラックを逆走している中学生から、女性関係がだらしない有名大学生選手、有力選手に次々と断られた末に選ばれたことにわだかまりを持つベテラン社会人選手まで。

そんな合宿で、一つの出来事があった。廊下に落ちていた宛名のない封筒。中に入っていたなにも書かれていない白い紙。監督の熊沢はあることに気づいて……。

題材の選び方が絶妙だなと感心しました。

まず駅伝なのでたすきをつないで進んでいくのですが、すると各選手に順番にスポットライトが当たり、短編集のようになっています。その時にこれが各年代を混ぜた県代表チームだということが効いてくる。中学生区間二つ、高校生区間が三つ、大学生と社会人の一般区間が二つ。年齢的にも幅広くなって、エピソードが多彩になります。

さらに効いているのが選抜方法。中高生は最終選考会があり、実際に走らせて選びますが、大学生と社会人は資格のある有力選手に直接交渉。その結果、社会人がなかなか決まらずたらい回しになって、実績今一つの吉竹に決まりました。これがドラマを生み出します。

それを生かしているのが上記のあらすじに書いた謎の白い手紙。この謎がストーリー展開に影響を及ぼしたことが後々わかる仕掛けです。

ラストの7区の展開が、この題材と謎により、めっちゃドラマチックに盛り上がるのです。最初は短編集っぽく見えてたので、ここまで芯が通った話になるとは思いませんでした。面白かったです。

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2023/11/29

セントエルモの光

セントエルモの光 久閑野高校天文部の、春と夏 (天川栄人・著)を読みました!

セントエルモの光 久閑野高校天文部の、春と夏

何もない片田舎の久閑野町。そこの久閑野高校に通う1年生、安斎えるも(あんざい・えるも)は困っていた。学校の規則で何かの部活に入らなければいけないのだが、入部したいところがない。それだけではなく、環境の変化にも戸惑っていた。元々はこの町で育ったのだが、中学の時に東京に住んでいたえるもには、この町にはあまりにも何もないように見えた。

そんな時、たまたまふらりと立ち寄った屋上で、一人の先輩に出会う。橋本嵐士(はしもと・あらし)。天文学部だというその人は、クラスの友達とSNSで繋がっていないと不安で仕方ないえるもと違い、むしろ人を遠ざけ、自ら孤独を求めているようだった。そんな先輩に疎んじられながら、えるもは天文学部に入ることにするのだが……。

最近ここに書いている本の感想は、仕事の参考図書として読んだ本のうち面白いと思ったものが多いのです。こちらもそういう本。

仕事の参考図書として本を読むと、当然のことですが、選書に僕の好みはまったく考慮されていません。

面白さとは何だろうということを、ずっと考えているのですが、大まかに分けると二つの方向性があると思うのです。一つは題材としての面白さ。元々そのお話に興味が持てるかどうか。そしてもう一つは伝える腕の良さ。うまく書かれている作品は読者を問答無用でお話に引き込んでいく。

そしてですね、本来僕はこの界隈の読者ではないので、扱われている題材が好みでないことが多い。するとお話に興味が持てない。題材評価優勢で出された本は、たいがい読み続けるのが辛い。

なので、キャラ立ての上手さ、文章の上手さで引っ張ってほしいわけですよ。

このお話はその点、1ページ目から手応えがありました。どのシーンから始めるか、地の文の書き込み具合、台詞回しの軽妙さ。すいすいとページをめくらせる力にあふれています。

しかもですね、タイトルで想像つくわけですけど、題材。星の話だ! これは僕に刺さる題材です。しかも、いい使い方しています。

かつ、僕の好きなポイント、伏線の張り方と回収の仕方も、とてもよかった。嵐士先輩の家庭環境、名前の由来、ちょっと話していたエピソードが、テーマに向かってきゅっと収束する場面が終盤にありました。お見事でした。

こういう作品に出会えるので、仕事の参考図書読みも、あながち苦行ばかりではないと思えます。本当にいいお話でした。

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2023/09/08

どんまい

どんまい (重松清・著)を読みました!

どんまい

夫の不倫により離婚して、娘・香織(かおり)との母子二人暮らしになった三上洋子(みかみ・ようこ)。これからの暮らしをどうするか、仕事をどうするか、心配事は尽きない。

そんな時、団地の掲示板で、洋子は草野球チームの募集を見かける。年齢不問、性別不問のそれは、洋子に子供のころ、女の子だからと野球を諦めることになった記憶を思い起こさせて……。

主人公は洋子ですが、一緒に入団することになった甲子園出場経験のある加藤将大(かとう・まさひろ通称ショーダイ)、チームのキャプテン田村など、他の人の視点でも話が進む群像劇です。その結果、めっちゃ分厚い。ハードカバーで読んだのですが、最初見た時、これ期日までに読み終わるかなと怯んだレベル。章タイトルが題材の野球に合わせて、イニング1、イニング2……と続くのですが、12まである。草野球なのに延長戦過ぎるだろと思わず突っ込み。

でも読み始めると、さすがの筆力、すいすい読めて面白いのです。

それぞれに背負っている問題があって、その人間ドラマも面白いのですが、野球のシーンがいいですね。草野球なのでレベルはヘロヘロ。しかも普通物語に出てくる野球のシーンではありえない、特別ルールとか対戦相手の設定なのですが。

それだから初心者の洋子と香織も試合に絡めて、そして試合展開はうまくそれを生かして盛り上げている。

好きなシーンは、まず初戦の多摩川カンレキングスとの対戦。チーム加入の条件が還暦を過ぎていること、試合の出場権が年功序列で実質70代というチーム。がんばるとぽっくり逝くかもしれないので外野を抜けたらエンタイトルツーベース、走らなくていい認定ヒットとか認定フライあり。

そんなチームなのに、ノンプロ出身が3人、早慶戦に出た人もいるという歴戦のつわものぞろいで、めっちゃ投げるボールが遅いエースは都市対抗ベスト8でプロの誘いもあったという。初回三者凡退で出番なくネクストバッターズサークルから帰ってきた将大のシーンが最高です。

「ナックルボール、ありますね」
「あのじいさんの決め球だ」田村も険しい目でうなずいた。「現役を引退して、五十過ぎてから覚えたらしい」
「けっこうキレがいいですよ」
「歳をとればとるほど、筋力が落ちて、よけいな力が抜けるからなあ……」 

さらには仕事の取引先の接待野球をするはめになったエピソード。こちらのラストがめっちゃ燃える。その前にたっぷりキャラクターを見せているのが効いています。すばらしい!

野球愛に満ち溢れ、そしてさすがの人間ドラマが展開する。とても面白いお話でした。

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2023/09/06

ツバキ文具店

ツバキ文具店 (小川糸・著)を読みました!

神奈川県鎌倉市の小高い山のふもとにある古い日本家屋。小学校のそばにあるその家は小さな文具店。その店を先代の祖母から継いだ雨宮鳩子(あまみや・はとこ)は、先代の仕事、代書屋も引き継ぐことになった。依頼人の要望に応じて、手紙を代わりに書く仕事である。

依頼人は様々な事情を抱えている。お悔やみの手紙、離婚の報告、借金を断る手紙……。鳩子は相手の想いや、その人とのつながり、そういう背景を探りながら、ふさわしい文面、ふさわしい紙、ふさわしい文具を考えていく。そうした中、最後には疎遠になり、死に目にも会わなかった先代の文通相手と交わしていた手紙を目にすることになり……。

実は先にこちらを目にして読み始めたのです。キラキラ共和国 (小川糸・著)

読み始めてすぐに、ああ、これ面白いやつだと思いました。密度がとても濃かったからです。

長く創作に関わってきて、面白さとは一体何だろうと考えてきたのですが、一つ結論としてはこの「密度の濃さ」。情報量が多いこと。言葉にするとうまくニュアンスが出せないのですが、読み手の脳をどれだけ刺激するのかに尽きると思うのです。

刺激というと、波乱万丈なストーリー展開、というイメージが出てしまうので、ここになんかいい言葉がないかなあと常々思っているのですが、のどかな日常ストーリーの中にも確かに刺激は存在します。ほのぼのとかじんわりとか、そういう部分。読み手の感情を動かすものが刺激です。

そうすると、同じようなシーンでも、書き方次第で面白さが変わってくる。例えば家族でご飯を食べるシーン一つで、幸せ感をどれだけ伝えられるか。出てきた料理、食べる様子。伝える文章の描写の仕方で、面白かったりつまらなかったりとなるのです。

そういう部分でちょっと読んだ時点で、イメージをどんどん膨らませてくれる刺激が隙間なく詰まっている、とても面白いお話だと思ったのですが。

それと同時に、なんでこんなに説明がスカスカなのだろうと首をひねったのです。先に興味を引っ張るために、出てきた時点では詳しく説明しないという技術はあるけれど、それにしても多すぎるのではないか。なんとなくの状態で、置いてきぼりにされて話が進んでいく。まるで知っていて当然というように……。

そこではたと、「これもしかして続編じゃね?」と思い至って、調べてみたら第二巻だったというわけなのでした。漫画と違って通し番号じゃないから、気がつかなかったよ。

ということで第一巻から通して読むと、なるほど納得。そして細やかな描写によってたっぷりと詰め込まれた情緒の深さを、ばっちり堪能したのでした。

挿絵の代わりに代筆した手紙が載っているのですが、これがまたいい味が出ていてよかったです。

表紙もいい感じなんだけど、電子版がないから画像が貼れない。残念。

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2023/09/01

今週の漫画感想 破廉恥の力

大忙し期間明け、少し余裕が出た火曜日。まずはじっくり漫画読む。 #週刊少年ジャンプ 39号と #ジャンププラス の感想です。スレッドでつなぎますー。

まずはジャンプ。 #キルアオ 最後のページの説得力。それはぶっとばすに決まってるw

#夜桜さんちの大作戦 最後のページがいい感じw 想像を超えるエスカレーション。

#ウィッチウォッチ 最後の見開きまでの持っていき方がいい。溜めに溜めて、そして名乗り。ぐっと来る。

#あかね噺 こうして全員出てくると、キャラ濃いなあw

お次はジャンプ+。 #株式会社マジルミエ 第81話。今までとすっかり人が変わっちゃっているから、どうなるのか、とても気になる。

#あやかしトライアングル 第141話。ハレンチから生まれる力にやられる五行仙が、なんかちょっとかわいそうな気がしてきたw

というジャンプ39号とジャンプ+の感想でしたー。余裕が少しだけなのは、週末に向けていろいろ準備しなければいけないからなのです。さて、がんばろう。23/8/29

火曜日がんばろうと思ったら蓄積疲労でがっちり昼寝し、睡眠サイクルが崩れて迎えた水曜日。とりあえずまず漫画読む。 #週刊少年マガジン 39号と #週刊少年サンデー 40号の感想です。スレッドでつなぎますー。

まずはマガジン。 #シャングリラ・フロンティア ラストの絵に期待が高まる。

#生徒会にも穴はある! 結局ちゃんとしたのは買えたのだろうかw

#それでも歩は寄せてくる おめでとうございます!

お次はサンデー。巻頭カラー #古見さんは、コミュ症です。 まさかおしゃぶりにそんなに重い理由があるとは。

#龍と苺 さすが年の功w

#よふかしのうた コウ君も気づいた。どうなるのかな。

というマガジン39号とサンデー40号の感想でしたー。今頃眠くなってきた。23/8/30

『あやかしトライアングル』。黒幕は身の内にいて、祓忍組織のトップが妖巫女のすずを狙っていたという展開。トップの五行仙はそれまでもいろいろと仕掛けてきていました。その戦いのクライマックスがやってきています。

そこで今回、主人公側の反撃のターンなのですが。

そこでのセリフが上記の「俺達のハレンチから生まれる力は!!!」です。前回の引きが祭里のふんどしで、そこからハレンチパワー全開なのです。

このお話のテーマからして、それは正しい。正しいのですが。

五行仙はここまでちゃんと悪役をしていました。非常に真っ当な悪役です。なので直接対決も真っ当な戦い。

それがハレンチの力で蹴散らされていくんですよ。なんかがんばっていた五行仙がかわいそうだなと、一瞬思っちゃうぐらいw

でもそれが、この漫画のいいところです。思い切り振れ幅があること。予想外の展開になるので先が読めません。本当にすごい。

さあ、このエピソードがどういう決着を迎えるのか。楽しみです。

あやかしトライアングル 15

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2023/08/24

わたしの空と五・七・五

わたしの空と五・七・五 (森埜こみち・著)を読みました!

わたしの空と五・七・五

中学に入った伊藤空良(いとう・そら)は、内弁慶で思っていることをうまく伝えられず、クラスにうまくなじめないでいた。目下の心配事はどの部活に入るか。いろいろ見学して回ったけれど、やりたいことが特にあるわけでもないので決められない。

そんな時、下駄箱に謎のチラシが入っていた。「しゃべりは苦手でもペンをもったら本音をぶちまけられる者よ! 文芸部に入るべし」。気になって文芸部をのぞいてみると、なし崩し的に入る流れになり、句会が開かれることになり、俳句を作ることになって……。

いろいろ考えているんだけど、それをうまく口に出せずにいる主人公が、引け腰なんだけれどはっきり言えないうちに圧に負けて巻き込まれていくのが楽しい展開。キャラクターがくっきりしているので、それによってどんどんお話が転がっていきます。

そうしているうちに事件が起きるのですが。

うまいなあと思ったのは、文芸部に入る流れもそうして起きる事件も、主人公の空良のテーマに絡んでいって、全部俳句に収束していくこと。うまく自分を表すことができないという悩みが、俳句で表現されて解決していくのです。

特によかったのは句会のあと。句会では3つ俳句を披露して評価してもらうのですが、点が入らなかった最後の一つに、先輩が返句を返してくれる。俳句に込めた空良の悩みを知っていて、それを俳句で返してくれたのです。とてもいいシーン。

他の俳句もそれぞれ空良の悩みや思いが込められていて、それがお話の中で効いてくる。まさにペンで本音をぶちまけた形になっていて、芯がびしっと通っているなあと思ったのでした。それが読みやすさにつながっていて、すいすい読めて気持ちいいお話でした。

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2023/08/23

黄昏飛行

黄昏飛行 (光原百合・著)を読みました!

エール!(2)

コミュニティFMのFM潮ノ道でパーソナリティーを務める永瀬真尋(ながせ・まひろ)。就活で放送局を片っ端から落ちて、父の知り合いのつてで故郷の放送局に仕事を得た。『黄昏飛行』という自分の番組も持たせてもらい、いろいろ失敗もあるけれど、持ち前の前向きな性格でがんばっている。

そんな『黄昏飛行』にリスナーの女性から1枚のはがきが届く。故郷に戻ってきた自分の近況を伝えたそのはがきに、音信不通の知り合いではないかと男性が訪ねてきた。ただ、はがきには今の名前も住所も書かれておらず……。

こちらはアンソロジーに収録された短編。まず、キャラクターがよかった。主人公の真尋だけでなく、それこそ番組に来たゲストまで、キャラクターが個性豊かで読んでいて楽しい。

その真尋の性格が出ていて素晴らしかったシーン。ゲストの住職さんが遅刻しそうになってぎりぎりになり、事前の確認ができなかったため、住職さんの持参したCDを確認できておらず、コーナーのラストにいざかけるぞとなったら違う曲。そこでとっさに自分で歌い出す。すごく楽しいシーンでした。

そしてお話的には、謎かけ要素がよかった。最初のはがきに今の名前がないんだけれど、実は気づいてほしいなというヒントが仕込まれている。伝わってほしいなあとほんわかしました。

ちなみにこちらの設定で、さらに2本ほど続編があり、そちらも面白かったです。

アンソロジー 初恋11の秘密 ラスト・メッセージ

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2023/08/15

明日の朝、観覧車で

明日の朝、観覧車で (片川優子・著)を読みました!

明日の朝、観覧車で

運動は苦手、イベントごとには弱いと自覚のある高校生の塚本みちる。叔父のけんちゃんに誘われ、無理矢理参加することになった『三河湾チャリティー100km歩け歩け大会』。なのにけんちゃんはドタキャン、一人で歩くことになってみちるは困惑していた。

茶化してくる弟に何となく意地になって歩き続けていたけれど、30kmも行かないうちに足は痛くなるしむくんでくるしで、とても完歩できそうにない。でもそこから、いろいろな出会いがあり、みちるの気持ちも変わってきて……。

こちらは作者の体験談がベースになっているのだそうです。実際に参加されたのだとか。100km歩くってすごいよなあ。年末深夜で電車がなくなりタクシーも捕まらなくて家まで歩いたことがあるけれど、10kmぐらいでもめっちゃつらかったもんな。

このお話の見どころは、いろいろな人との出会いでみちるがだんだん変わっていくところ。元々あまり前向きなタイプではないのですが、そのうえ現在母親が入院していて、さらに気分が落ち込みがち。それが少しずつ変わっていく。

特に大きく変わる、60kmのチェックポイントと62kmのコンビニのシーン。マッサージのおじさんの言葉がぐっとくるし、みちるが決意を固めるところ燃える。

お話自体は読みやすくすいすい進んで、それでぱちっと見せ場がある。とてもよかったです。

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2023/07/26

中指の魔法

中指の魔法 (片島麦子・著)を読みました!

【期間限定価格】中指の魔法

緑(ろく)が「おおばあ」と呼ぶ祖母は、いつも黒革の長手袋をはめ、そして不思議な力を持っている、らしい。らしい、というのは、緑がその力を直接見たことがないから。おおばあの古い一軒家には、ちょくちょく暗い顔をした人が訪ねてきて、緑が入ってはいけないと言われた奥の部屋で、おおばあは何やらいろいろしているらしい。

そしてその力は、どうやら緑に受け継がれているようだった。ある日、緑は病院で意識を戻さず眠り続けている少女の夢の世界へと入り込んで……。

うまいなあと思ったのは、伏線の張り方でした。上のあらすじ紹介のように、お話の主軸は祖母から孫へと伝わった不思議な力についてなのですが。

 母子家庭でお父さんはいない、という設定になっていて、それについて早い段階で、何かあるなと気になるようなフリがしてあった。

その亡きお父さんが、重要なところで、本筋にスッと絡んできたのです。

ここで絡んでくるのかという驚きと共に、さらにおおばあの力の片鱗が見えるような登場の仕方。奥の部屋でおおばあがやっていたのは、こういうことなのかなというような。

そこでぐぐっとお話に深みが出た。本当にいいシーンでした。

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2023/07/25

木工少女

木工少女 (濱野京子・著)を読みました!

木工少女

小学六年生の立石美楽(たていし・みらく)は、教師の父と山深い峯川村で暮らしている。子供を自然と触れさせたい父に強引に連れてこられ、しかも父の任期が一年限りということもあって、新しいクラスに馴染む気もさらさらないまま過ごしていた。

そんな時、美楽は木工職人の明野伝造(あけの・でんぞう)、通称デンさんと出会う。木の持つ魅力に何となく惹かれた美楽は、デンさんの工房に通うようになり、どんどん深みにはまって自分でも作るようになって……。

出来事的には、田舎暮らしに最初反発していた少女が、クラスメイトとの軋轢なんかを経て、段々その土地と別れ難くなっていくという、このジャンル定番の流れですが。

このお話は、美楽のキャラクターがとにかくすばらしかったのです。

児童書によくある一人称文体ですが、一人称ということは当然主人公の語りになる。すると主人公の性格が文章に大きく影響する。美楽はかなりずけずけ物を言う物怖じしないタイプの子ですが、あらすじのところに書いたように、どうせ一年限りだからと馴染もうとせず、おとなしく猫を被っている。

すると地の文に、言わなかったツッコミがどんどんあふれてきます。さらに性格も影響していて、バシバシと言い切るすごくテンポのいい文章になっているのです。1ページ目を読んだ時点で「あ、これ、面白いやつだ」とわかるほど。これはなかなかない、すごいことです。

さらに、木工とクラスメイトとの交流と美楽の成長と名残惜しさと等々、いろいろなテーマをベンチで象徴させたラストシーンなど、印象的な場面もたくさんありました。本当によかったです。

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