書籍・雑誌

2018/12/10

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 5

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 5 (大森藤ノ・著)を読みました!

リリ、ヴェルフとの3人パーティーとなったベル。連携も向上して、さあいよいよ中層階攻略へと向かう。中層階はモンスターのレベルが上がり、強くなっていることもさることながら、出現頻度も上がってくる。ちょっとしたミスが悪循環を招き、パーティー全滅に至る。

それはじゅうじゅうわかっていて、慎重を期していた。けれど、それでも悪循環の入り口に入り込むことがある。道を見失い、装備の残りが乏しくなり、ケガと疲労で動けなくなったベルたちは、戻ることをあきらめ、さらに下層にある休憩地点を目指す賭けに出るが……。

好事魔多しとはまさにこのことだとばかりに、絶好調からあっという間に大ピンチに陥る今回。そしてどん底からの大逆転と、ストーリーの起伏がとても大きく、面白かったです。

ライトノベルの厳密な定義は難しいのですが、特徴の一つに漫画、アニメと影響を与えあっていて、類似の演出があるということがあげられると思います。

クライマックスで一発逆転のスキル【英雄願望】が発動する時の、いつもは小さなリン、リンとなる鐘の音が、大きく重くゴォン、ゴォォンと響きわたる音になっていくところ。時間を引き延ばして溜めを作る演出、めっちゃ燃える。

漫画だとコマ割りの仕方で作るあの溜めは、自分の作品でも取り入れたいと目指しているところです。

さて、この巻までが、僕がアニメで見て話の筋を知っているところ。

ここから先が未踏領域ですよ! 楽しみ。

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2018/11/29

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 4

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか  4  (大森藤ノ・著)を読みました!

因縁のミノタウロス越えを果たし、レベルアップしたベル。史上最速のレベルアップに、人々からも神々からも注目の的になっていた。十分力もついたことだし、ダンジョン中層域へと進出したいところだが、周りからは反対の声があがる。1人メンバーを増やして、3人パーティーで向かうべきという。しかし弱小のヘスティアファミリアには、ベルの他には構成員がおらず、増員のあてはない。

とりあえず壊れた装備を新調しようと武器店に向かったベルは、そこで以前の自分の防具を作った作者、鍛冶師のヴェルフと出会う。意気投合し専属契約を結んだヴェルフは、さらに発展アビリティ『鍛冶』獲得の経験値を得るため、パーティーに加えてほしいという。なんと彼は魔剣を聞かされ打つことができる、クロッゾの一族で……。

本編はヴェルフが仲間になることがメインの、前巻までと比べるとちょっとつなぎの要素が強い回。

山場は、ベルの新しいスキルが発動してわりとあっさりと勝ってしまうので、これまでに比べると盛り上がり方こそ低めですが、読後感はとてもさわやか。こういうお話も好き。

あとここまで、「アニメ全話一挙配信を見たために話の筋を知っている」とぼやいてましたが、この巻には他に短編が2本収録されていて、これが初見のお話。

お話初見は一期一会なのです。どうオチるかわからないことをじっくり堪能。

これもさわやかに終わるとてもいいお話で、読後感は大満足なのでした。

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2018/11/28

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 3

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 3 (大森藤ノ・著)を読みました!

リリというサポーターを得、二人パーティーを組むようになって、ベルは冒険者として順調に成長中。そんなベルを陰から気づかれぬよう見つめているのは、美の女神フレイヤ。ベルの魂の輝きに魅せられた彼女は、自分のファミリアの子ではないのにベルにご執心だった。

彼の成長を助けるため魔道書を用意したりしていたその甲斐あって、強くなったベルに喜ぶフレイヤは、さらに彼の魂の輝きを増すために、新たな策を練る。一方、強くなりたいと願うベル本人は、憧れの人『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインに稽古をつけてもらえることになって……。

このお話を読み始めたのは最近で、もう評判になってからなわけですけれども。

第1巻を読み始めてすぐに、なるほど納得と思ったのです。みんなが好きな要素が、しっかり詰め込まれている。

「売れる」ということは、逆側から見れば、読者が読みたいものがたくさん入っているということです。そういう点で、売れて当然の設計がなされてるなと思ったのでした。

そして、さらに2巻3巻と読み進めて思うのは、その「読みたいもの」について。

いろんな読者がいるのだから、「読みたいもの」がたった一つということはなく、いろんな種類があるのですが。この作品の山場が、まさにそれだなあと思うのです。

2巻のリリを助けるところ。3巻の自分の弱さを乗り越えるところ。特にエピソードの書き方が素晴らしい。

そこに込められてるキャラクターの強い思い。それを読者に伝えるための筆の運び方。めっちゃ盛り上がるように書かれています。

ある意味、要素だけなら分析的に考えることができるので、それを取りそろえるのは計算づくでできて、そういうふうにして作られた作品も多く見受けられますが。

そこで出来栄えを分けるのは、詰められたその要素、特に感情の部分をどれだけしっかりと書き切れるか。

漫画にしろ小説にしろ、山場でダメ押しの、とどめの一撃を放てるようでなければ、読者の心は貫けない。

前巻の感想でも書きましたが、アニメ全話配信を見ちゃったので、オチは知っているのです。でもやっぱり、3発目のファイアボルト、めっちゃ燃える。

そういうところがすごく勉強になるなあと思いながら読んでいます。

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2018/11/26

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 2

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 2 (大森藤ノ・著)を読みました!

冒険者として、そのレベルを順調に上げ、7階層まで到達したベル・クラネル。ある日夜道でならず者の冒険者に襲われている小人族(パルゥム)の少女と出会う。酒場の店員リューの助太刀もあり、少女を救うことができたベルだったが、少女はそのまま姿をくらましてしまう。

翌日、ダンジョンに潜ろうとしたベルは、一人の少女に声をかけられる。冒険者を手助けするサポーターで、ベルに雇ってほしいと売り込みをかけるその少女は、どう見ても昨日のあの女の子。ただしフードを取ると、そこには犬の耳。種族の違う犬人(シアンスロープ)だった。リリルカ・アーデと名乗るその少女には、他にも色々と怪しいところがあって……。

仕事の山場が過ぎての週末ごろごろ読書は、第一巻読んで止まっていたこちら。

しかしこの間に、ネットでアニメ全話無料配信を一気に見てしまったので、オチを知っているのです。

これは知らないで読んだ方がハラハラしたのに残念。

僕はちょくちょくけなげキャラに弱いということを告白していますけれど、リリもそれ。

最後に生い立ちから何から事情が分かって、けなげ度は一気に上昇するのですが、そこが琴線に触れる展開。

やっぱりオチを知らないで読んでたらよかったー!

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2018/11/08

ハロー・ワールド

ハロー・ワールド (藤井太洋・著)を読みました!

何でも屋のエンジニア、文椎泰洋(ふづい・やすひろ)は、グーグルの凄腕エンジニア郭瀬敦(くるわぜ・あつし)と、派遣先の同僚汪静英(ワン・ジンイン)とともに、ネット広告ブロッカーのアプリを開発、販売していた。それは専門を持たない文椎が、プロジェクトに最後まで関わってみたいと、半ば趣味のようにして進めているもの。アプリ開発のワークショップで知り合った他の2人が、興味を持ってチームを組んだのだった。

半ば趣味なので売り上げはそんなにたいしたことはなかったのだが、ある時突然売り上げが急増し始める。調べてみると、急に売れ始めた地域はインドネシア。それには特別な事情があって……。

ということで11月10日のイベント『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』でテキストに使う、『ハロー・ワールド』にたどり着きましたよ!

デビュー作から順に読んできたわけですが、通して読むと、通底している部分と作品により変わっている部分がよくわかります。まさに藤井先生の頭の中。藤井先生の世界観。

この僕の読みがはまっているのか。イベントの価値を左右する、僕の質問のクオリティがそれにかかっているわけですよ。さあどうだ!

さらに、藤井先生直筆赤字入り改稿原稿、ご本人解説付きという、超目玉企画も発表されております。11/10(土)グラスシティ渋谷10階、HDEオープンテラスにて。チケットはこちらから。

さて、本の感想ですけれども。

面白かった!

表題作で巻頭の『ハロー・ワールド』。主人公の文椎が、アプリが売れた原因を知った時、己の信念を貫くところがいい。熱が湧き上がってくる展開。

単にかっこいいことを言ったのではなくて、それに関わる意味とかを十分に分かった上で、それでも決断してみせる。その決断の一つ一つが、その後、文椎の辿る運命を決めていく。

まさにHallo,world! 世界への扉を自分で開けてみせたのです。こういうメッセージって、藤井先生の作品ではよく出てきますよね。天才が世界を変えるのではなく、その辺の人だった主人公が、勇気と信念を見せて成し遂げる。こういう世界観についてもお聞きしたいですね!

あと、そういう大きなテーマとは関係ない個人的な萌えポイントは。

二作目の『行き先は特異点』でのAmazonの配達ドローンです。事情があってのことだけど、ポンコツロボっぽい。しかもけなげ。ほっこり。

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2018/11/05

公正的戦闘規範

公正的戦闘規範 (藤井太洋・著)を読みました!

2024年上海の日経ゲーム会社に勤める趙公正(チャオ・ゴンツェン)は元軍人。中国のウイグル自治区からやってきた。子供の頃、国から支給されたスマホに入っていたゲームアプリが、今開発しているゲームに似ていると思ったのだが、他に同じようにスマホを支給されていた同僚に聞いても、誰も覚えていない。

やがて春節の休みで故郷に帰る列車の中、そのアプリに秘められた秘密を知ることになり……。

表題作を含めた全五編を収録。

一番印象に残ったのは、最初に載っている『コラボレーション』です。『Gene Mapper』と同じ世界観の作品。インターネットが使えなくなり、トゥルーネットという新しいネットに代わっているのですが、実はインターネットの方でネットを遮断する、原因なった検索エンジンの修復機構がまだ動いており、それが進化を遂げているというもの。

いま話題のAIの進化によるシンギュラリティにつながるようなお話です。

ドキッとしたのはオチの部分。ある意味投げっぱなしになっており、この結末が良い方へ行くのか悪い方へ行くのかわからない。まさに未来が見えない今の状態をよく表していて、期待と恐怖がないまぜになった、なんともいえない読後感だったのでした。

同じようなテーマが『第二内戦』でも書かれていて、技術が人の手を離れる恐怖と、それにより大きく発展する可能性という、はらはらするようなわくわくするような、そんな読後感になっています。

こういう読後感は他のジャンルの作品では感じることはできず、SFならではの醍醐味です。面白かった!

さて、作者の藤井太洋先生をお招きしてのトークイベント『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』の開催が、いよいよ今週末に迫ってきましたよ!

藤井先生の作品は、ちょっと先のありうる世界を書いていることが多いのですが、この辺りの情報収集についてもお聞きしたいところですね。11/10(土)14:00より、グラスシティ渋谷10F、HDEオープンラウンジで開催です。チケットお申込みはこちらから。

そして次はとうとう、『ハロー・ワールド』!

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2018/10/28

ビッグデータ・コネクト

ビッグデータ・コネクト (藤井太洋・著)を読みました!

京都府警サイバー犯罪対策課の万田警部は、滋賀県警捜査一課長、沢木警視の要請により、世間を騒がしているITエンジニア誘拐事件の捜査に参加することになった。行政サービスの民間委託プロジェクトの作業部隊の責任者が行方不明となり、その指が送り付けられてきた、という猟奇事件である。

畑違いの捜査に招かれたのは、二年前万田が追っていた〈XPウイルス〉事件との関連が疑われたからだった。その参考意見を聞くために、ウイルス作成者の汚名を着せられ冤罪を被った元エンジニア、武岱修(ぶだい・おさむ)に協力を要請することになるのだが……。

デビュー作の『Gene Mapper』から始めて『オービタル・クラウド』、『アンダーグラウンド・マーケット』そしてこの『ビッグデータ・コネクト』と読み進めてきたわけですけれども。

この作品が一番好き。

話の題材的には、宇宙好きの僕にとっては、スペーステザーが出てきて衛星軌道上で事件が進む『オービタル・クラウド』なのですけれど、話の展開的にはこちら。

一気に読み終えることができました。というか、最初ちらりと冒頭を読んだ時にそういう予感がしたので、仕事の予定がない日まで置いといたぐらいなのです。

面白さとは、脳に刺激を与えることで、なんらかの情動を引き起こすこと。すると刺激の密度の高いものが面白いものだということになる。そしてその刺激の種類がいろいろあって、個性をつくっている、というのが僕の仮説なのですが。

その観点から見た時の、藤井太洋作品の面白さというのは、情報の密度ではないか。惜しげもなく突っ込まれる知識。ガンガンと進んでいく事件。そういう部分が、面白さを作っているのではないかと思われます。

その特徴と、この話は非常に合っている。

前三作は近未来を扱ったSFでしたが、それでもほんの数年先だったりと、かなり現代に近く、今回に至っては普通に現代物でミステリー。

そのミステリーというジャンルと藤井先生の作風の相性がとてもよく、謎が次から次へと提示され、ストーリーにぐいぐいと引っ張られていきます。ページをめくる手が止まらない面白さ。本当に夢中で読みました。

そして、話がそういうふうにグイグイ進む場合、その分キャラクターが薄くなることが多いのですが、そこでキャラクターの芯を感じさせるのが藤井先生のうまいところでもあります。

ウイルス作成事件の冤罪被害者となった武岱の、謎めいたキャラクターももちろんのこと。

頭の固い、抵抗勢力と思われていた綿貫が、武岱擁護に回るシーンは、まさにキャラクターの芯、彼らしい一本気さがよく表れていて、とても気持ちよかったです。

さて11/10のイベントに向けて、藤井先生の著作を頭から順に読むということをしているのですが。

こうして立て続けに読むことによって、質問しなければいけないポイントが見えてきましたよ。この高密度さを作っている、プロットづくりの秘訣については聞かねばなるまい!

ご興味がおありの方は『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』に、ぜひご参加ください。ご来訪お待ちしております<(_ _)>

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2018/10/23

アンダーグラウンド・マーケット

アンダーグラウンド・マーケット (藤井太洋・著)を読みました!

東京五輪が近づく2018年。労働力流動化条項により移民が大量に流入した日本。Webエンジニアの木谷巧(きたに・たくみ)は就職に失敗し、友人のデザイナー鎌田大樹(かまた・だいき)とともに、移民たちの作る地下経済で、Webサービス構築の手伝いをして生計を立てていた。

飛び込み先で出会った凄腕エンジニアの森谷恵(もりや・めぐみ)とも組んで、仕事を受けていた巧は、クライアントの齋藤のところで、国内最大手通信会社の城村有沙(きむら・ゆさ)と出会う。彼女は地下経済で流通する仮想通貨N円のポイントサービス、ピタットを開発していて……。

『Gene Mapper』はバイオテクノロジーの話。『オービタル・クラウド』は宇宙開発の話。けっこうはっきりとSF的なテーマが示されていたのですが。

こちらのお話は仮想通貨と移民の話で、しかも東京五輪前。近未来SFというにはかなり、現代物に近い構造です。舞台もほとんどが東京都内。ご近所で時代も近いとなれば切実感が違います。というか、発行2016年の2年後で、2018年が舞台って今年だよ!

実際、いつも通勤で通る池袋とか、外国の人が本当に多いですしね。

ただ移民問題で厳しい現実を書いたように見える今作ですが、実は世界中の人となかよく暮らすという理想に基づいて書かれています。移民が流入して、格差が拡大して、日本人でも一度レールから外れてしまうと苦しい暮らしになる、現実でも起きかねない怖い設定なんだけど、そこにも人の暮らしと交流があるんだというような。

現実のヨーロッパやアメリカで移民との軋轢が大きくなっている中、そういう藤井先生の基本的にポジティブな姿勢が浮き上がってしまうのは悲しいところ。作中では移民の人たちがフリーライドをよしとしておらず、同じ場所に暮らす仲間としての義務を果たそうとしているいい人たちなのですが、現実はそうじゃない人も多い。理想的な関係は、双方がその理想を実現しようとして初めて成り立つ。日本はどうなるんでしょうかね。

というようにフィクションとして楽しむよりも、ヒリヒリとした現実感に色々と考えさせられてしまう、そんなお話でした。

作品づくりの視点から見た場合、これは藤井先生の作り込みがしっかりしているという証だなと思います。リアリティを生むために、情報を詰め込み、世界をしっかりと構築してある。やっぱりそのあたりの密度がすごい。

そしてリアリティということで言えば、よく知らないのに知ったかぶって事態を悪化させていく斎藤のキャラが、いい味を出しているなと思いました。モデルがいるのかなw

さて、宣伝もしなければ!

アイディア、知識、描写と高密度に詰め込んで、他を圧倒する質量の作品を書く藤井太洋先生の頭の中はどうなっちゃってるの? というところを覗いてしまおうというイベントを立てました!

『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』

興味深いお話が聞けること間違いなしです!ぜひご参加ください!

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2018/10/16

オービタル・クラウド

さあ、11/10(土)の日本独立作家同盟のイベント『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』開催に向けて、藤井先生の著作を一気に通して読むプロジェクトを進めていますよ!

本日の感想はオービタル・クラウドです!

スペース・デブリが大気圏に突入することによって発生する流れ星を予測するWebサイト〈メテオ・ニュース〉を運営する主人公、木村和海(きむら・かずみ)。ある日イランが打ち上げたロケットの二段目の突入予測を立てようとしたところ、使い捨てられたはずのそれが、高度を上げていることに気づく。

シェアオフィスの仲間で、Webシステムを構築してくれている沼田明利(ぬまた・あかり)の協力を得て、和海は公開されている観測データから、二段目のそばにある謎の構造物を見つける。それは世界を変えようとするテロ計画の一環で……。

藤井先生がデビュー2作目にして日本SF大賞を受賞した長編です。その評価にたがわず、すばらしい出来栄えでした。

まず、サイエンスの部分の密度。藤井さんの専門領域であるITのアイディアがぎっちり詰め込まれ、そこにスペーステザーなど宇宙開発の話も。

そしてプロットの緻密さ。この小説は場面転換が多く、いろいろな場所で動いている人たちを追って、群像劇の形でスタートします。それが話の全貌が見えていくにつれて、その人たちが出会い、ばらばらだった筋が統合されていく。その過程でどんどんお話が加速していく組み立て方がお見事。目が離せなくなります。

そしてこっそり、エンタメの王道がしのばされており。主人公和海と相棒となる明利は、シェアオフィスを使っているスタートアップ仲間という設定。言ってしまうと、明日の大金持ちを目指す極零細一人ベンチャー、それだけではご飯が食べられないので他のことも請け負うしがないWeb屋なのですが。

そんな主人公たちが、実はすごい能力があって、国家が絡む陰謀に立ち向かっていく。CIAのエージェント、作戦を指揮するクリスが、「和海と明利、この二人に請負のWeb屋をやらせているだなんて――日本はどうかしている。」と心の中で思うシーンは、「よっしゃ、きたー!」と喝采を叫ぶところなのです。

「主人公、実はすごい」は、ほんと見せ場ですよねー。とても面白かったです!

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2018/10/03

Gene Mapper -full build-

Gene Mapper -full build- (藤井太洋・著)を読みました!

遺伝子を設計して作る「蒸留作物」が普通となった未来。遺伝子デザイナーの林田は蒸留作物のトップメーカーL&Bから依頼を受け、完全有機栽培のプロジェクト〈マザー・メコン〉のイネの遺伝子設計を手掛けた。

しかし、その稲が、遺伝子崩壊を起こしているのではないかという知らせを受ける。遺伝子崩壊を起こしていたらプロジェクト失敗の大問題なのだが、さらにはその遺伝子が、ばかみたいに大きなサイズになっている、全く未知の変異が確認されて……。

藤井太洋先生は、KDPが日本に来た時にこの本の原型となる作品を発表。あっという間にベストセラーになってプロデビュー、日本SF作家クラブ会長にもなるという、セルパブ立志伝中の人なのです。

こちらの本はそのセルパブ版を改稿したもの。バイオテクノロジーを主題に、拡張現実が世界観にいろどりを添え、「今」を感じさせる作りです。

SF的に、この「現在話題になっている題材を取り込んで、来たるべき未来を感じさせる」というのは、とても大きい要素です。ここの描写がとてもしっかりしているのが、まず魅力です。

また藤井先生は、僕の参加している日本独立作家同盟の理事でもあって、セミナーにも登壇され、その時に、プロットの作り方をお話しされていて。

それを思い出しながら読むと、構成の巧みさにもうならされます。さりげなく、伏線張ってある。だんだん物語が加速していって、目が離せなくなります。

この作品はある意味で、出版の歴史を変えた作品の一つなのですが、なるほど、それだけの力があるなあと思ったのでした。

あと、来たるべき未来という点で個人的に、拡張現実の犬のエージェントがかわいくてよかったです。あれならペット禁止物件でも犬飼える(憧れ)

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