満天のゴール
満天のゴール (藤岡陽子・著)を読みました!
夫の不倫で離婚危機となった奈緒は、小学四年生の息子の涼介を連れて実家へ戻ろうとしていた。若い頃に飛び出した実家は丹後半島の北端にあり、東京からは新幹線、特急、バスと乗り継いで6時間以上かかる過疎の村だった。結局夫との関係修復は叶わず、奈緒はこの村で息子を育てていくことを決意する。
働いたことはなかったけれど、一応看護学校を出ている奈緒は、看護師として地元の海生病院に勤めることになる。そこは昔、母が亡くなった病院で……。
医療崩壊しかけている過疎の村での終末期医療の現実と共に、そこに出てくる登場人物との過去の因縁が少しずつ浮き彫りになって謎が解けていくという筋立てなのですが。
読み始めたのはそういう筋立てが面白そうだと思ったからではなく、出だしを少し読んでみたところで「もしかしてこれ面白いのでは」と思ったから。
ここが言葉で説明するのが難しいところなんですけれども、特に派手なエピソードがなかったとしても、ちょっと読んでみたところで「あ、これきっと面白い」と感じることがあったりするのです。この作品もそれを感じて、一気に最後まで読みました。
単純に文章力と言ってしまうとまた違うような気がするのですが、自分もこれを身につけられれば、何を書いてもちゃんと読んでもらえるはず。めっちゃ欲しい能力。
そうやって読み始めてみると、特に終末期在宅医療を受けている登場人物の姿が印象的でした。とても自然に死を来るべきものと捉えていて、特に恐れるわけでもなく、淡々とそれを迎えている。
特に車で入っていくことも難しい山奥で一人暮らしをしている88歳のトクさんとのやり取り。「先生、ゴオルまであとどのくらいやろか」「さあ、はっきりとはわかりませんけど、そう先では……ないと思います」「そう先やないんやな。それやったら最後まで走れそうやな」というシーンには、人生の深さを感じて、いろいろと考えさせられます。
僕も人生もう折り返しちゃってると思うのですが、僕は最後に「まだあれ書いてない、これ書いてない」とバタバタしながら死にそうな気がする。
トクさんみたいな満天のゴールを迎えられたらいいなあと思ったのでした。
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