お尻で呼吸
今年もこのシーズンがやってきました。イグ・ノーベル賞です。世界のおもしろ研究に与えられる賞なのですが、日本の連続受賞が続いています。
今年はこれだ!(どーん)
イグ・ノーベル賞に「哺乳類が肛門を使って呼吸する仕組み」…日本の研究者、18年連続受賞
【ケンブリッジ(米マサチューセッツ州)=冨山優介】人々を笑わせ、考えさせる優れた研究を顕彰する「イグ・ノーベル賞」の今年の受賞者が12日(日本時間13日)、発表された。哺乳類が肛門を使って呼吸する仕組みを医療応用に結びつけた、武部貴則・東京医科歯科大教授(37)(再生医学)ら日米計11人の研究チームが「生理学賞」を受賞した。日本の研究者の受賞は18年連続となる。
イグ・ノーベル賞はノーベル賞のパロディー版で、1991年に創設された。米科学誌が主催している。
2016年、京都大大学院医学研究科の学生だった岡部亮さん(45)(現・築地在宅診療所院長)が、同科講師で指導教官だった芳川豊史さん(52)(現・名古屋大教授)と肺を人工的に作製できないか武部さんに相談し、共同研究が始まった。
研究を進める中、ドジョウが腸で呼吸する仕組みに着目し、哺乳類での応用を考えた。低酸素状態にしたマウスやブタの肛門から酸素を豊富に溶け込ませた化学溶液を注入すると、腸を通じた呼吸によって呼吸不全の症状が改善した。成果は2021年に国際科学誌に掲載され、注目を集めた。
チームは、主人公らが特殊な液体の中で呼吸する描写がある人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」にちなみ、開発した手法を「EVA法」と命名した。
現在、東京医科歯科大発ベンチャー「EVAセラピューティクス」(大阪市)などが、低体重で生まれ、呼吸が困難な赤ちゃんの低酸素状態を治療する方法として、実用化のための治験に取り組んでいる。
武部さんは「至って真面目な研究なので受賞の連絡を受けた時は驚いたが、新しい治療法の開発が進んでいることを多くの人に知ってもらうきっかけになれば」と期待を込める。
読売新聞オンライン 24/9/13
記事にもありますけれど、「肛門で呼吸」というパワーワードでおもしろ研究に見えてしまうだけで、中身は至って真面目な研究です。
きっかけは新型コロナウイルス感染症の治療で話題になったECMOだそうです。肺炎で肺の機能が低下し呼吸困難になった時に、肺の代わりに酸素と二酸化炭素の交換をする人工肺です。台数が限られていますし、操作には専門のトレーニングを受けた人員が必要。そのため、感染拡大期に数が足りず、助かる可能性の高い人に付け替えるというような命の選別が起きました。そういう状況を助けるべく研究が始まった模様。
呼吸と聞くと動物では肺、魚ではえらで行われているイメージですが、そこでしかできないというわけではありません。そもそも生き物はすべて元をたどれば単細胞生物。単細胞生物にはそんな呼吸器官はないので、体表から酸素を取り込んでいます。それはその後の多細胞生物にも引き継がれていて、ミミズなど簡単な作りの生物は今でも体表で呼吸しています。
そして皮膚呼吸とえら呼吸を併用していることで有名なのが、ドジョウやウナギ。そのため陸に上がってもすぐに弱ることなく行動できます。ドジョウはさらに、口から空気を吸って腸でもガス交換できるというわけです。ちなみにいろいろ調べてみたところ、ナマコもお尻から海水を取り込んで、直腸につながる呼吸樹という器官で呼吸しているとのこと。お尻で呼吸、わりとポピュラー?
哺乳類も肺以外でも呼吸していて、人間も1%ほどですが、皮膚から酸素を取り入れているのだそうです。さあでは、腸でも呼吸できるのか。
という研究がこちらだったわけで、かなり良好な結果な模様です。実用化も見据えていて、本当に人を救う研究です。
イグ・ノーベル賞はぱっと聞くとおもしろ研究なのですが、研究のすそ野の広さを示していて、ちゃんと実用化につながったりするのも素敵。昨年の日本の受賞研究「電気刺激を施した箸やストローを用いた味覚の変化について」は、腎臓病などで減塩しなければいけない人でも味をしっかり感じられるスプーンとして実用化されています。こういうすそ野の広さが、ずっと維持できるといいんですけどねえ。
さてもう一つ、この研究にはパワーワードが搭載されています。お尻からの呼吸法の名前。
『EVA法』と名付けられています。腸換気(Enteral Ventilation via Anus)の略ということですが。
エヴァ……と思っていたら記事によると本当にエヴァンゲリオンから取った模様。エヴァンゲリオンではコクピットに当たるエントリープラグの中はL.C.Lという液体に満たされ、パイロットたちはその中で呼吸しています。あのイメージなのかあ。
え、そしたら、綾波とかアスカとか、お尻でこ(自主規制)
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