先に考えた記事タイトルは『風評加害社オイシックス』だったのですが、『社』を抜くと語呂がよくなって、アニメとか戦隊ものの特撮のタイトルみたいなリズムが出るなと思って変更。
どうでもいい情報から始まりましたが、何が起きたのかと申しますと。
野菜の通販を行っている株式会社オイシックス・ラ・大地の会長、藤田和芳氏が福島原発の処理水放出についてX上で批判。そこで「汚染水」という反原発ワードを使っていたため炎上、投稿を消して逃亡。その後訂正の投稿もしたのですが、しかし炎上が収まらず、オイシックスの株価が一時急落。社長が代わりに火消しの投稿をしましたが、そちらもまた風評加害であるということがはっきりとしない、感情的になる人いるよねとも取れる曖昧な書き方をしていて、また炎上。公式HPで謝罪し会長の処分を示唆、という経緯です。
ちなみに対応がまずかった結果、過去もどんどん掘り返されており、藤田氏は以前から反原発投稿を連発していたとか、そもそも オイシックスは東日本大震災の時「安全な西日本野菜」というキャンペーンを打ってその時から風評加害に加担していたとか、なぜか今でもサイトに西日本野菜カテゴリーはあるが東日本野菜カテゴリーはない、とか延焼が続いています。
ぶっちゃけ正直、この手の反原発発言は僕も許せません。
人類は科学を発展させ、文明を発達させてきました。科学というのは世の中の理を解明しようという活動で、その正確性を担保するために、研究手法や論文の書き方、そのチェックと何重もの手間をかけています。それに対して反原発活動の多くが、反科学的です。同等のレベルで証明しようという手間は全然かけず、自分の心象に沿って、事実ではないことを吹聴。その結果、風評被害が広く起きている。
それでは、この発言のどこが反科学なのか、僕が知ってる範囲でだけど説明してみよう、というのが本日のこの記事の趣旨です。行きますよ。
まず「汚染水」発言の何が問題なのか。それは、この言葉を使う人は、この問題を語るために必要な土台となる知識がわかってないなと推測できるという点です。
福島の原発から海洋放出される処理水ですが、そのままではなく、めっちゃ薄めた状態で排出されます。なので大丈夫という理屈ですが。
これを聞いて心配になる人もいると思います。薄めたからといって、きれいなところにずっと垂れ流していたら、どんどんたまって汚れていくのではないか。
さて、ここで土台になる知識の問題が出てくるのです。そもそも「きれいなところ」 というのが間違っている。そんな場所はこの地球のどこにもない。放射性物質は危険だから0にしようというのは不可能です。なぜなら、人間が何かする以前に自然界にあふれているからです。
この誤解が生まれたのは、マスコミの力量不足も大きいなと感じています。いやむしろ反原発マスコミがいるので、わざとじゃないかなと疑っているぐらいです。
まずですね、トリチウムという名前を使っているのがよくない。よくわからないカタカナ言葉で、謎の物質感が満載です。
ところが、これは実は水素の一種なのです。
すべての物質の構成要素である原子には100を超えるたくさんの種類がありますが、これを決めているのがその原子の原子核に含まれる陽子の数です。水素は1個、炭素は6個、酸素は8個です。理科の教科書に元素周期表がついていたのを見たことがある人も多いと思います。あそこについている原子番号がそれですね。
さて原子核を作っているのは陽子だけでなく、他に中性子という粒子もあります。そして、こちらの数は一通りとは決まっていません。なので各元素には、中性子数違いのバリエーションがあるのです。これを同位体と言います。
この同位体の中で安定している物と不安定な物がある。不安定な物は壊れてより小さな原子になることがあります。その時に原子核のかけらが飛んだり、外側にある電子が飛んでったり、X線やガンマ線のような電磁波が出たりします。これをひっくるめて放射線と呼んでいます。そう、放射性物質とはこういう壊れやすいバリエーション違いの原子でできたもののことです。
水素の場合には、陽子1個だけの物が一番多い。で、それに対し中性子が1個くっついた重水素、2個くっついて合計3個になった三重水素があります。そしてここからが問題。重水素はたいてい漢字表記され意味がわかりやすいのに、なぜか三重水素はトリチウムとカタカナ表記されています。トリチウム水というのは、水の中に何かの毒物が混ざっているということではありません。三重水素と酸素でできた水が入っているということです。
バリエーション違いの同位体は、化学的な性質はすべて同じです。だからトリチウムだけ取り出すことができない、という話になる。他の物質は水の中に何かが混じった状態なので、化学反応を使ってそれだけ取り除くということが可能なのですが、どっちも水では分けることができないということですね。
そして、「きれいな」が間違いだと言うのは、自然界にこのバリエーション違いの水がもとからあるからです。トリチウムは宇宙からの放射線と大気が反応してできます。今この瞬間にも作られている。なので地球上どこでも存在。雨水にも飲料水にも、もちろん海水にも含まれている。
こう聞くと、さらに不安になる人がいるかもしれませんが、それは逆です。トリチウムだけでなく放射性同位体というのは自然界にありふれている。ありふれているので生物はそれに適応して進化しています。人間も同様。だいたい、人間の体を作っている原子自体がバージョン違いの放射性同位体を含んでますからね。人間の体からも放射線は出てるのです。対応できてなかったら、自分の放射線で死んじゃう。
つまり普通にある量ぐらいなら平気なように身体ができているのだということです。放射線0を目指さなくていいんですよ。
なので考えなければいけないのは、あるかないかではなく、身体が対応できる量を超えていないかどうか。WHOの飲料水の基準は1リットル当たり1万ベクレル以下です。
処理水は100倍以上の海水で薄めて放出ということなので、放出口付近でもトリチウム水の濃度は1%も増えないことになります。そのまま海に広がっていくと、もう増えたかどうかもわからないぐらいの差でしかない。実際にこれまでの放出では、調べた結果は検出限界以下が続いています。1万ベクレルどころではない。数ベクレル程度です。
オイシックスの藤田会長は、この辺まるっと理解してないんだろうなと思われます。もしわかっていて、それでも言ってるなら大変です。前述の通りトリチウムは雨水にもその辺の水にも含まれていますから、上記の結果も危険だと言うなら、安心安全有機野菜なんて嘘も大嘘、オイシックスの売っている野菜は汚染されまくりだということになります。ちなみに水だけが問題ではなく、野菜を構成する原子にもバリエーション違いが当然入ってるので、放射線出てますよ。やばいね。危険だね。売るもんなくなっちゃうね。
あともう一つ、以前見た別のわかってない案件も取り上げましょう。「どんどんたまって」の部分。メディアにもよく登場する社会学者の宮台真司氏が生物濃縮を語って炎上したことがありました。
生物濃縮で有名なのは水俣病。排水中のメチル水銀が魚の体にたまり、それを食べた地元の人たちが発病しました。餌になる生物が汚染されるとそれを食べた生物の体にたまり、さらにそれを餌にする生物の体にたまり……というのが生物濃縮です。海に排出してこれが起きたらどうするんだという話なのですが。
生物濃縮が起きるのは、生物が体外へ排出できない物質の時です。前述の通りトリチウム水と呼ばれているものは要するにバリエーション違いの水なので、普通におしっことして排出されて終わりなんですよね。じゃなければ生まれて何十年も水を飲み続けているんだから、今頃みんなトリチウムが溜まりまくっているはずですよ。
しかし宮台氏はそれを認めず、体内の水素原子が三重水素に置き換えられ溜まっていくのだと謎理論を展開。社会は得意なんだろうけど理科はだめだなあ、でも社会的地位ができた大人は周りに持ち上げられて勘違いしちゃって、自分は何でもわかっていると傲慢になっていくんだなあ、というのが感想。
さらにさらにですね、僕がマスコミに対して厳しい感想を持つのはこの辺が問題なのだということも付け加えておきましょう。処理水放出問題では、「地元の理解が得られていない」と報じるところが多かったのですが。
こういうニュースを正確に判断する背景となる基礎知識を世間に広めるのも、メディアの仕事のはずです。なのに書かれた記事はその辺非常に杜撰で、記事を読んだ多くの人が誤解したまま。そして風評被害を心配しなくちゃいけなくなる。
それどころか一緒になって汚染水と騒いでるところがあるからな。マジでゴミ。
ちなみに余談ですが、中国や韓国が汚染水、汚染水と騒いでいるのは、嫌がらせしてこれを取り引き材料にしようという反日活動です。なぜならそちらの国の原発の方が、もっと大量にトリチウムを流しているからです。自分の国でやってるんだから、本当は問題だと思っていない。それでも汚染されていると言うのなら、中韓原発からのトリチウム汚染水は海流に乗って北上するので、日本海が汚染されていることになる。福島だけの問題じゃないですね。なぜ国内の反対派の人やメディアはこちらには声をあげないのか。反日国の世論工作員ではないかと疑ってしまいますねえ(陰謀論で本日は終わり)
最近のコメント