読みづらい読書
このあいだ、仕事の参考図書を読んでいると、興味のない題材でも読ませる筆力の高い作品に出会って勉強になる、ということを書きましたが。
今週は逆の例に出会いました。
興味がないうえに文章に入りづらくて、何度も何度もトライして、結局20pちょいで諦めた。一回手に取るごとに数ページしか我慢できなかったということ。正確にはちょこっと飛ばし読みして先を確認しているのですが、多分最短記録です。
先に断っておきますと、下手だったということではないのです。
舞台が地方で、方言をふんだんに使ってたんですね。人称は全部方言、名詞もかなりの割合で方言。脇に一応ルビが振ってあって意味が分かるようにはなっている。
方言を使うとその土地の雰囲気は出ます。しかしその土地の人ではない僕には、慣れていないのでひたすら読みづらいのです。セリフだけじゃなくて地の文も方言語りだから、ルビに目を凝らさなくちゃいけなくて、本文とルビで二度読みになる。全然世界に入っていけない。ということで、ちょっと読んで閉じて他のことをやり、また読んでは閉じての繰り返し。そして仕事の参考図書なのでここまでに読まなければいけないという締め切りがあって、時間切れして脱落。
舞台になった地方と時代設定、そして題材が、このジャンル界隈では評価が高いやつなので、土地の雰囲気出す方に全振りしたんだろうなあと思うのですが。
この辺は難しい問題ですよね。
方言がっちり使い、地元の風習なんかの描写も濃厚。リアリティはすごく出ているので、この土地の話ということでポイントつける読者であれば高評価になるはず。
しかし、僕はそこに興味がないので、方言で雰囲気出されてもただ読みづらく、日常がいつまでたっても終わらず事件が起きないことで、まったくドライブされることがなく終わってしまった。日常風景ばかりでも読めた作品もあるのですが、あれは表現に工夫が凝らされていて、文章自体の読み心地がすごくよかったんですよね。でもそういうんじゃなくて、しっかり調べましたという感じだった。リアリティ押し。
先々まで行ったら興味持てる話になるのかなと、つまみ食い的に後ろを覗いて見ましたが、イベント的にも文体はこうするべきだなあと感じました。ふわふわの文で読み心地よくしたらいけない。その策も取れない。
ただこれがSFだったら、リアリティ押しされたらウキウキして読んでるんですよ、きっと。ルビで違う読み方させるのも、SF用語だったら大好きですし。僕の読者としての立ち位置が、大きく関係しているということなのです。
例えば、歴史ものなんかでも、こういう事態は発生しますよね。言い回しにどこまでリアリティを求めるか。それにより読者層が変わる。
リアリティを追及すると濃い読者が釣れて、リーダビリティを高めると入り口が広くなり幅広い読者が網にかかる。濃い読者の方が反応がいいので、絞り込むのは一つの手。
リアリティと読みやすさの間で、作品をどの辺りに設定するかで同じ筋立てでも守備範囲が変わってくるという、戦略の問題について考えさせられたのでした。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- アナログ回帰(2023.12.07)
- EVかハイブリッドか(2023.12.06)
- ミャンマー戦と内戦(2023.11.22)
- 来年のワクチン(2023.11.21)
- 文学フリマの今後(2023.11.20)
コメント