わたしの空と五・七・五
わたしの空と五・七・五 (森埜こみち・著)を読みました!
中学に入った伊藤空良(いとう・そら)は、内弁慶で思っていることをうまく伝えられず、クラスにうまくなじめないでいた。目下の心配事はどの部活に入るか。いろいろ見学して回ったけれど、やりたいことが特にあるわけでもないので決められない。
そんな時、下駄箱に謎のチラシが入っていた。「しゃべりは苦手でもペンをもったら本音をぶちまけられる者よ! 文芸部に入るべし」。気になって文芸部をのぞいてみると、なし崩し的に入る流れになり、句会が開かれることになり、俳句を作ることになって……。
いろいろ考えているんだけど、それをうまく口に出せずにいる主人公が、引け腰なんだけれどはっきり言えないうちに圧に負けて巻き込まれていくのが楽しい展開。キャラクターがくっきりしているので、それによってどんどんお話が転がっていきます。
そうしているうちに事件が起きるのですが。
うまいなあと思ったのは、文芸部に入る流れもそうして起きる事件も、主人公の空良のテーマに絡んでいって、全部俳句に収束していくこと。うまく自分を表すことができないという悩みが、俳句で表現されて解決していくのです。
特によかったのは句会のあと。句会では3つ俳句を披露して評価してもらうのですが、点が入らなかった最後の一つに、先輩が返句を返してくれる。俳句に込めた空良の悩みを知っていて、それを俳句で返してくれたのです。とてもいいシーン。
他の俳句もそれぞれ空良の悩みや思いが込められていて、それがお話の中で効いてくる。まさにペンで本音をぶちまけた形になっていて、芯がびしっと通っているなあと思ったのでした。それが読みやすさにつながっていて、すいすい読めて気持ちいいお話でした。
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