その日のまえに
その日のまえに (重松清・著)を読みました!
ガンリュウこと、岩本隆子はクラスの嫌われ者。愛想が悪く、意地が悪く、人に対して手厳しい。そんなガンリュウが入院して、クラスでお見舞いの色紙を書くことになった。みんなさすがにいいこと書かないととわかっているのだが、気持ちがこもっていないのは否めない。
クラスの代表幾人かで、先生に連れられ色紙を持ってお見舞いに行く。ガンリュウの姿は、子供心にも病状の悪さがわかるもの。色紙を渡されるガンリュウはいつも通りそっけなかったが、それでもじっと見つめていて……。
昨日に引き続き、重松先生の本の感想です。こちらは若くしての死をテーマにした短編集。癌告知された人だったり、残された家族だったりが主人公。最初の四本が独立したお話、残り三本が三部作という構成で、三部作に先の四本の登場人物がちらりと出てきます。
上のあらすじは最初のお話『ひこうき雲』。ガンリュウが色紙を受け取るところの描写が、めっちゃきつくて、すばらしいのです。
小学生なので、あんまり深く考えずに色紙を書いた主人公。病室を訪ね、初めて事態の深刻さを理解します。色紙を破り捨てたいほどの後悔を覚えるけれど、もうどうにもできない。
ガンリュウが愛想悪い子だから、それゆえにじわりと見えてくる喜んでいる内心が、ひしひしと迫り、逆にそれに気づいてしまった主人公の焦りが、ヒリヒリと伝わってきます。本当にうまい。
このエピソードに出てきた子が、大人になって最後のエピソードに出て来るのも、とてもいい構成です。
本当に心に迫るお話でした。何で人は死んじゃうんだろうねえ。
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