創作AIの弊害
こんなニュースを見かけました。
「AIが書いた盗作」の投稿が爆増しSF雑誌が新作募集を打ち切り Gigazine 23/2/22
応募される小説がAIで書かれた盗作ばかりになってしまったので、雑誌が新規募集を停止。元々盗作は毎月数件あったらしいのですが、それが2022年10月辺りから増え始め、2023年2月には2/15までで350件弱、2/21までで500件超と爆発的に増えたとのこと。
そんなテクノロジーの進歩の負の側面で被害を受けた雑誌がSF小説誌だったというところが、オチとして効いていると思います(オチじゃない)
創作とAIの関係はどうなるのだろうか、と思うことは多々あります。本当にすごい勢いで創作AIが進歩していっています。ただ、それが真に創作なのかというと、ちょっと首をひねるところもありつつ、でもなかなか難しい。
やっていることは、ディープラーニングによって特徴を抽出し覚えたAIが、それに基づいて出力すること。こう書くと、直感的には、そんなの創作じゃない! という気分になるのですが。
でも実は人間もやっていることなのです。例えば、絵がうまくなるためのトレーニングとしてよくお薦めされているのは、模倣です。まんま同じように描くこと。そうすることによってコツをつかんでいく。個性はそうやって、いろんなものから取り入れながら作られていく。真似したことない人なんていない。プロの中にも他の人に画風が似ちゃっている人がいるぐらいです。
記事には「盗作投稿は、SF作品の愛好家ではなく、「ChatGPTを使えば簡単にお金を稼げると主張する人々」によって行われているとのこと。」とあり、これを読むとやはり、そんなの創作じゃない! という気分になるのですが。
でもそれと同じような、お金を稼ぐためだけに作られる人の手による作品はたくさんあります。真似れば簡単にお金を稼げる、そんな動機から作られる作品。僕は漫画の持ち込みしてた時に、部屋に貼られていたちょうど当時アニメ化されてた人気作のポスターを指差されて「ああいうの描けばいいんですよ」と言われたことがあります。
これは特にその編集さんだけということではなく、普通に思考の底にあることなので、たまに「パクリじゃね?」と言われちゃうぐらいに人気作によく似た作品が雑誌に載っちゃう。会議を通ったということは、パクリっぽいことが売れそうだからよいことだと評価されたのだということです。
機械がものすごいスピードでたくさんのものを参照して、素早く要素を抽出しているだけで、人間だって同じようなことをして創作だと言っている。ということは、読む人、見る人にとっては、作品の質だけが問題で、作者が人かAIかというのは関係ないのではないか。これが難しいところ。
ただ、1点、マイナスになると思われる部分は。
創作には流行りがありますが、あの波を最初に起こした人がいるわけですよ。そしてその人は、逆風の中、自分の感性を貫いてたはずなんですよね。その当時の流行りには目もくれず、自分の個性を押し通した。「こんなの売れないよ」とか、さんざん言われてたりするはずなのです。そういう元々大変な環境から、次の流れを生み出す人が出ていた。
そこで簡単に、大量に、手軽に、「売れるもの」が作られ、あふれるようになると、そこの壁がものすごく高くなる。
それでも貫き通す人はいるだろうと思う反面、人間みんなそんなに強くないよなとも思うわけで、もしそういう世界になったら最初の段階で反応がないから諦めるとか、そういうケースも増えるんじゃないかな。
そういうAIが進んでしまった結果の、作家のディストピアを書いたSF掌編がこちら。『いつまでも変わらぬ愛を』。
ただ僕自身に関して言うと、もうおっさんで先も長くないし、最近は思いついてしまったものを吐き出さずに死ねるかという終活気分で書いているので、あんまり気になっていません。
便利なツールとして進歩してくれたらいいな。
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