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2023/02/21

打ち上げ中止か失敗か

H3ロケット初号機の打ち上げが、補助ロケットブースターの点火に至らず、中止となりました。

直前にH3開発のドキュメンタリー番組を見ていて、新開発のLE-9エンジンがなかなか完成しない様子にやきもきしていたので、最初補助ロケットブースターの方だと聞いて、「そっちなのかー!」と天を仰いだのですが。

その後の会見のニュースを読むと、異常を検知してフェイルセーフが働き、点火信号をストップしたとのこと。ということはまだLE-9の問題という可能性が残ってるのか。ドキドキ。

さて、こちらの会見は、別の意味で大きな話題になっていました。こちら。打ち上げ中止「H3」会見で共同記者の質問に批判相次ぐ ロケットを救った「フェールセーフ」とは ITmedia NEWS 23/2/17

 会見はJAXAの公式チャネルで配信されていたが、話題となったのが共同通信のとある記者の質問だ。「中止と失敗という問題についてもう一度確認したいです。ちょっともやもやするものですから」と切り出し、岡田氏に中止と失敗の違いについて質問した。以下はその一問一答だ。

共同 中止という言葉は、みなさんの業界でどう使われているかは別として、一般に意図的に止める、計画を途中で意図してやめる時に中止といいます。今回はカウントダウンも続いているし、飛ぶはずの機体が飛ばないなという状況に見えますが、正体不明の異常が起きて、システムが正常に作動して止まったのかもしれませんが、意図しない異常による中断、中止ということだったのでは。意図的ではなく止まっちゃったよということは一般に言う失敗ではないかと思うのですが、どうですか?

岡田 こういった事象が時々ロケットにはあるのですが、その時に自分たちは失敗と言ったことがありませんので。やはり、われわれが非常識かもしれませんが。

共同 それを失敗と呼ばれたからと言って、何か著しく不具合があるわけではないですよね。みなさんの中では失敗と捉えてないけれども、失敗と呼ばれてしまうことも甘受せざるを得ないという状況ではないですか。どうですか?

岡田 どのような解釈をされるのかは、受け止めた方、受け止められ方はもちろんあると思いますので、そうではないですとは言い難いですけれども、ロケットというものは基本安全に止まる状態でいつも設計しているので、その設計の範囲の中で止まっている、つまり意図しないというのはその設計の範囲を超えて、そうじゃない状態になることは大変なことになると思いますが、ある種想定している中の話なので、そこに照らし合わせますと失敗とは言い難いと思います。

共同 わかりました。確認ですが、つまりシステムで対応できる範囲の異常だったけれども、考えていなかった異常が起きて打ち上げが止まった。こういうことですね。

岡田 ある種の異常を検知したら止まるようなシステムの中で、安全、健全に止まっているのが今の状況です。

共同 わかりました、それは一般に失敗といいます。ありがとうございます。

岡田 ありがとうございます。

執拗に失敗という言葉を引き出そうとし、うまく聞き出せないと「それは一般には失敗といいます。ありがとうございましたー」と、決め付ける、共同通信の鎮目宰司(しずめ・さいじ)記者。

打ち上げようとして打ち上がらなかったので失敗なのではないか、と擁護する意見もありました。詳しくない一般人が、そう言うのは仕方ないかもしれない。言葉としてはそっちの方がすっきりしてるから。

ただ、これを車に例えてみましょう。現在、車の自動運転が研究され、自動ブレーキなんかは実用化されています。トラックに自動で隊列を組ませて列車のように運行させる構想もあるようです。例えばそれで、信号待ちからスタートするとき、脇から何か飛び出してきて自動停止したとすると、それは失敗どころか事故を防いだと褒められるケース。

ロケットの目的を、宇宙へ荷物を運ぶことだと考えると、積み荷も無事でロケットも壊さず事故を未然に防いだのは、これと同じと考えることもできます。ロケット関係者はこれを失敗とは言わないというJAXA側の説明は、きっとこの立場ですよね。

というように、中止か失敗かは、なかなか微妙な問題なのですが。

ただ炎上しているのは言葉の意味についてではなく、鎮目記者の態度です。別にJAXAの人たちが開き直って自己弁護してたわけではなく、悔しさに涙してた人もいたんですよ。「うまくいかなかった」こと自体はちゃんとわかっているのに、なぜあんなにしつこく絡む必要があったのか。

共同通信はこの会見の前に「失敗」という言葉を使って速報を出しています。なので執拗に「失敗だった」という言質を取ろうとしたのではないか。しかも自分の思い通りの答えが返ってこないと、逆ギレして捨て台詞。取材対象への敬意がなく、上から目線で傲慢で不愉快。

これはたまたまではなく、ちょくちょくマスゴミのゴミっぷりとして話題になるところ。それがリアルタイムで天下に晒されたのです。

メディアの中の人たちはあまり気にしていないように見えるんですけど、これ、大問題だと思うんですよね。

このブログ記事がそうですけれども、誰でもこうやって記事を書いて公にできる時代に、プロを名乗るのであれば何を持ってプロフェッショナルの価値を出すのか。

新聞記事は型があるので、ちょっと書き慣れた人ならそれっぽい形にするのは難しいことではなく、文章自体の純粋な質でプロとアマチュアが分かれるわけではありません。専業だからきちっと手間暇をかけて取材しているだろう、プロの矜持があるからしっかりした報道をするだろうという信頼、書いている人の誠実さが、プロの仕事であることを担保しているのです。

ところがその取材で、先に答えを決めて欲しい言葉だけ言わせようとするトラブルが、SNSの発達で表に出るようになった。誠実とは思えない対応を取っていることも多い。

ちゃんと取材をしていない、人間性も疑わしい活動家の作文じゃねーかと思われたら、そんな記事にお金を払う人はいなくなると思うんですよね。

ちなみに鎮目記者は科学部の次長だそうですが、反原発で講演などをしている模様。「どうせきっとあれだろ? 福島原発のトリチウムの海洋放出に反対しながらも、通常運転の時点でそれ以上の放射性物質を流している中国とか韓国の原発には触れねーんだろ? こんなのが出世するなら、もう共同通信の科学記事は読む価値ねーよな」という感じになるわけですよ。

同様に今、共同通信社では社会部の信頼性も桜井平記者のせいでズドーンと落ちようとしていますが、話題違いなので割愛。

ちなみにどうせ答えが先にあるんだろうと考えると、失敗をあげつらってるところは日本の技術の信頼性がーとか、宇宙戦略がーとかに持っていくのは容易に想像できます。実際そういう記事も見かけたのですが。

実際にはどうなのか、ちょっと調べてみました。

現在各国で新型ロケットの開発が進んでいます。この中で目立つのがアメリカ。民間企業の参入があり活気づいています。その結果、打ち上げコストが下がっています。

H3はこの時代に対応するべく作られたロケットです。H2Aの半分ほどのお値段を目指しています。50億円が目標です。

イーロン・マスク氏が率いるスペースX社のファルコン9が、一基6700万ドルで現在90億円ぐらい。ただ、競合がいないのでこのお値段設定で、もっと下げる余地があると言われています。

ファルコン9は、ロケットの再利用を進めてコストを下げる作戦を取っています。回収するために、逆噴射して着陸させる。これが難しくて何度も失敗して、ようやく実用化にこぎつけました。こうして出来上がったファルコン9は実績的にも信頼性の高いロケットですけど、それでも本番で爆発事故を起こしてます。

あれ、おかしいな。一度失敗しただけで技術立国が危ういのであれば、アメリカはもう終わってますね(嫌み)

というわけで、爆発させずにきちんと止めた今回の事例は、打ち上がっていないのでベストではなくても、ちゃんとベターのうちと言えるのではないでしょうか。初期不良があるのはどんな製品でも普通だけれど、そこで実害出さずに止めたから。

打ち上げ再チャレンジするそうなので、がんばってほしいです!

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