天翔る
天翔る (村山由佳・著)を読みました!
幼い頃の両親の離婚により、父と二人暮しの少女まりも。ただ、明るくて子煩悩な父と、祖父母が経営し、すぐ下に大家として住んでいるアパートに暮らし、周りの大人から愛情をたっぷり注がれて育てられていた。
そんなまりもは、ある日父から遊園地に行こうと誘われる。しかし、喜んでついていくと、そこはお馬さんのいる大人の遊園地、競馬場。最初は文句を言っていたまりもだったが、パドックで初めて見た馬の大きさに圧倒され、その中の黒毛の1頭に目を奪われる。応援していたその馬は見事な末脚を見せて、大逆転勝利。
こうして幸せに暮らしていたまりもだったが、それはある日いきなり暗転する。父が仕事中の事故で急死して……。
そういえば、読み終わったあとに自分にも似た体験があることを思い出しました。小さい時に父が競馬場に連れて行ってくれ、やはりパドックで1頭の馬が目に付き、絶対あの馬が勝つよとアピール。ここまではまったくお話と同じ。
しかし僕の場合は、どうやら先行逃げ切り馬がパドックで入れ込んでいるのを、とても元気なのだと勘違いした模様。いきなり飛び出して先頭に立ち大興奮だったのですが、そのままずるずると追い抜かれていったのでした。まあ、お話と同じだと、父ちゃん死んじゃうから……。
さてこちらの作品は主人公の少女まりもが、前述のエピソードのあと身の上に起きた不幸によって傷つき、学校に行けなくなってしまったりするんですけれども、馬と関わり、馬のアドベンチャーレース、エンデュランスに参加するようになって、そこから癒されていくというお話。
まりもだけではなく、主要登場人物の多くが心に傷を抱えているのですが、やはり話が進むにつれ、それが癒されていく展開がお見事です。
いいなと思ったのが、それがエンデュランスレースに関わっていく中で癒されていくことですね。スポーツものとしての側面もあって、ものすごい困難の中で完走を目指すのですが、そういう壁を乗り越えていくポジティブな流れがまりもを成長させていくし、他の人の過去も拭い去っていく。そういうシーンが心地好いのです。
さらに馬との関わり。こっちのことがわかってるんだかわかっていないんだかという動物なのですが、それでも何か通じ合ったなという瞬間がある。クライマックスのゴールシーンは本当に素晴らしかったです。昼夜を通した長距離レースで力尽きそうなまりもの声に、耳だけこちらを向くんですよね。
そして最後にエンディングのシーン。そこに書かれた馬とのつながり。こちらも本当に素晴らしい。
500p超の大長編なのですが、特にレースの話が出てきてからは、仕事してる場合ではないと一気に読み切りました。とてもいいお話でした。
【期間限定価格】天翔る税込429円(2023/01/03時点)
1/5までの期間限定割引セール中だった! ほんとにめっちゃいいので、ぜひどうぞ。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ストグレ!(2024.08.15)
- 白をつなぐ(2023.12.23)
- セントエルモの光(2023.11.29)
- 今週の漫画感想 破廉恥の力(2023.09.01)
- どんまい(2023.09.08)
コメント