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2023/01/17

完パケ!

完パケ! (額賀澪・著)を読みました!

完パケ!

武蔵映像大学、略してムサエイ。そこに通い映画監督を志望する4年生の二人。親友の安原槇人(やすはら・まきと)と北川賢治(きたがわ・けんじ)は、卒業制作のプレゼンに挑んでいた。映画を1本撮るのだが、このプレゼンを勝ち抜けないと、監督の座をつかめない。

プレゼンの出来は圧倒的に北川だったが、監督に選ばれたのは安原。安原は北川にプロデューサーとして参加してくれるように頼む。引き受けた北川だったが、自分がどうして落ちたのか納得がいかず、わだかまりを抱えたまま撮影に入り……。

作品の冒頭、視点が二人の間を行ったり来たりする構成なので、ちょっと入りづらかったのですが、映画の撮影に入ってからはぐいぐいと惹き込まれ、一気に読むことができました。

物語を作る人の心の内が書かれているので、個人的にめっちゃ刺さったです。大学の高橋先生が北川にプレゼンで落ちた理由を語った時のセリフ。

「今の自分や生活、世の中に満足してて、何かに必死に手を伸ばさなくても満たされている奴の視野は必然的に狭くなり、考えは浅くなる。今ある現実から逃れたい、脱出したい、違うどこかに行きたい、何かを掴みたいと思ってる奴は、"ここ"に作るんだよ」
 自分の胸を親指でとんとんと先生は突いた。
「その切実な思いを成し遂げるための、大きな大きな世界を。それが創作の源だ」

めっちゃよくわかりますね。僕の書いているものはエンタメ寄りなので、割と打算が入り込みやすいジャンルですけれども、でもこれを自分が書かなきゃいけない、自分が書くしかないという強い思いが生まれてないと、筆がさっぱり進みませんからね。

切実さを持っているから監督の座を勝ち取った安原の、それを生んでいる事情が差し迫ってくればくるほど、どんどん物語に熱が生まれてきて、本当に目を離せない展開でした。撮ってた映画のラストシーンが、とてもよさそう。いいお話でした。

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