欧州大熱波とドイツの危機
先週頭の大忙し期間前半終了の頃、東京は猛暑日で、仕事に行くために駅へ向かう時点で「もうダメだ、死ぬ」という気分になるほど暑かったのですが。
休みに入ったところで雨が降って気温が下がり、だいぶ過ごしやすかったこの数日。
今週はまた暑くなるんですよね。やだなー。
さて、本日の話題は暑さに絡めて欧州について。先月半ばから大熱波が襲っています。
30℃を超えることすら珍しいイギリスで、史上初の40℃超え。他にも各地で最高気温40℃以上を記録。ポルトガルに至ってはなんと47℃。
向こうは湿度が低いので、いつもなら日本の暑さとは違い、過ごしやすい。ただその結果冷房の普及率が低くて、ここまで暑くなるとそれが致命傷になります。ポルトガルでは1000人を超す死者が出た模様です。
欧州で熱波の影響拡大、英は観測史上初の40度超え 各地で山火事多発
欧州で異例の熱波の影響が広がっている。フランス南西部のワイン産地ジロンドでは過去30年余りで最大の山火事が猛威を振るい、英国では19日に観測史上最高気温を記録して列車が一部運休となった。ポルトガルでは熱波に関連する原因で1000人以上の死亡が報告された。
ドイツの一部地域やベルギーでも気温が過去最高を更新する可能性が指摘されており、市民は身構えている。
イタリアでは山火事が多発し、トスカーナ州では365ヘクタールの土地が焼けたと知事が明らかにした。ローマ近郊の森やミラノ北部のオルタ湖畔、北東部のトリエステ近郊でも火災が報告されている。
ギリシャのアテネ近郊の山間部で発生した山火事は火の手が強風であおられ、当局が一部地域の住民に避難を指示した。
英国では気象庁の暫定データで初めて40度を超える気温が記録された。ロンドンを発着する主要路線の列車が運休し、ロンドンの東にある村では住宅が大規模な火災に襲われた。ロンドン周辺に広がる草地も燃えている。フランスのボルドー近郊では今月12日以降、1万9300ヘクタールが焼失し、3万4000人が避難を余儀なくされた。ロイター22/7/20
山火事もやばい。湿度が低いのがあだになっている。
この熱波は地球温暖化の影響を受けていると思われ、そうするとこれからの夏も、たびたびこの状態が起こる可能性大。そうなると欧州の人もエアコンを入れることを考えねばならず、夏の消費電力が大きくアップするかも……。
と考えたところで、ちょっと待てよと。
この大熱波により、欧州は干ばつに見舞われています。農作物に被害が出て、飲料水に事欠くほどの事態。そして電力との関連で、川の水が減り水温が高くなったため、川沿いに建てられているフランスの原発では冷却が間に合わなくなり、出力を落としたりしているそうです。
フランスで厳しい干ばつ、飲み水が不足する町も
フランスで歴史的な干ばつが続き100以上の自治体が水不足に直面する中、フランス政府は5日、危機対策チームを立ち上げた。
フランス政府のクリストフ・ベシュ・エコロジー転換相は、「水道管にもう何も残っていない」ため、水不足の自治体に給水車を派遣していると述べた。
首相官邸によると、フランスの観測史上最悪の干ばつだという。93の地域で、水の使用が制限されている。北西部や南東部のほとんどで、水を節約するため、農地への給水が禁止された。
フランス気象庁によると、7月の降水量はわずか9.7ミリで、1961年3月以来、最も乾燥した1カ月を記録した。少なくとも今後2週間は、乾燥した状態が続く見通し。
AFP通信によると、フランス電力(EDF)は一部の原子力発電所の出力を落としている。周辺の川の水温が高すぎて、十分な冷却効果が得られないためという。
テレビ局TF1によると、アルプス地方の畜産農家は毎日、トラックで谷へ下りて動物用の水を集めて運ばなくてはならず、毎週の燃料代が数百ユーロ単位でかさむ事態になっている。
フランスで6月から続く熱波のため、樹木の落葉が例年になく進み、すでに各地は秋のような枯れた光景になっている。
フランス本土の大半が水不足の影響を受けているため、農産物の収穫が減るかもしれないと懸念されている。その場合、ウクライナでの戦争による世界的な食糧危機がさらに悪化するおそれがある。戦争の影響でロシアとウクライナからの穀物輸出が急減しているため、欧州ではすでに食品価格の高騰が家計を直撃している。
フランス農業・食料省によると、主に動物の飼料に使われるトウモロコシの生産高は昨年より18.5%少なくなる見通し。主な産地は東部と西部で、すでに収穫が始まっている。
フランスのテレビ局BFMTVによると、フランスだけでなく、ハンガリーやルーマニア、ブルガリアでも今年のトウモロコシ収穫高は熱波の影響で昨年より減る見通しで、それに伴う価格上昇が予想されている。BBC 22/8/6
フランスは原発大国で、周りの国に電力売ってるんですよね。
そこで心配になったのがドイツです。
ドイツはSDGs的に自然エネルギーに傾倒していますが、足りない分はフランスの原子力発電に頼っているという、何が脱原発なのという偽善ぷりが以前から指摘されていました。下支えしてくれていた仏原発が停止してピンチ、そして表看板の自然エネルギーも実はピンチです。
太陽光発電パネルは高温になると性能が下がっていく性質があり、パネル温度25℃をピークに1℃あたり0.5%下がるそうです。気温ではないのがポイントで、直射日光が当たってパネルがめっちゃ熱くなる夏場は、出力が三分の一ぐらい減る計算。日本のように冷房効かせて夏の電力需要が増えると、ここが問題になりそうです。
さらに大きく高気圧に覆われているのが熱波の原因とすると、あまり風も吹かず風力も弱っているのではなかろうか。去年から今年にかけての冬、実際に風が弱まっていて、電気代高騰の原因となっていました。
ただ、緑の党が政権に入っているため、現実的な政策がとれなさそう。原発は絶対悪なので自分の所のは停止させるそうですし、自国で掘れるけど石炭火力なんて脱炭素的にもってのほかだし、実はシェールガスも国内に埋蔵しているみたいなんですけど、自然破壊が嫌なので採らない模様。さすがに石炭火力の予備は稼働させたみたいなんですけど、どうするんだろう。
エネルギー逼迫と不景気に耐えかねて、ドイツ政府が「対ロシア制裁」を外す可能性 川口マーン恵美 現代ビジネス 22/7/29
また、ハーベック経済・気候保護相は、エネルギー危機を乗り越えるためには再エネの強化しかないとして、国土の2%に風車を立てることまで決めた。そもそも、不安定な再エネの増加こそがガス需要を異常に増やし、結果としてロシアの政治力を強めた原因だというのに、氏はそんなことは意にも介さず、ドイツ経済の破綻に向かってさらに果敢にアクセルを踏んでいる。
ガスも電気もお金もない…ドイツ「緑の党のエネルギー政策」に吹き始めた逆風 川口マーン恵美 現代ビジネス 22/8/5
現政府の究極の目標は、原子力も石炭も褐炭も石油も、できるものはすべて再エネ電気に変え、行く行くはオール電化である。電気自動車へのシフトもその一環だし、24年からは新しいガス、および石油の暖房装置が禁止となり、それを電気のヒートポンプ式に変えていくという。
この調子ではいつか大停電するのでは。欧州は電力網が繋がってるので、下手するとよその国にも飛び火するんですよね。
さらにロシアの天然ガスに依存していたドイツは、経済制裁の報復で供給を絞られて、シャワーの時間を制限してくれと政府から国民に要望が出る始末。この夏を乗り越えたら、今度は冬に凍死の心配をしなければいけません。
なんか一気に大ピンチになっている感じです。大丈夫なのでしょうか。
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