ウィズコロナ経済の恐怖
新型コロナ感染第7波続行中です。二週間ほど前に連日関連記事を書きました。
その時に取り上げた記事に、もう一つ気になることが書いてありました。
コロナ療養中の英国看護師が訴える「憤りと不安」 「コロナと共存」選んだイギリスは正しいのか ピネガー 由紀 東洋経済オンライン 22/6/25
もちろん、経済を通常に戻し、感染対策のために投入された莫大な予算を削減していくことは、国の仕事ともいえる。実際、イギリスでは首相が「2022年1月だけでも検査に20億ポンド(約3300億円)を費やした」と述べているように、感染対策には莫大なコストがかかっている。
イギリスがウィズコロナ政策に踏み切った理由の中に、これがあるんだろうなという気がしたのです。
対策を打てば当然予算がかかります。検査だって入院費用だってワクチンだってただじゃない。最初は異常事態だったので、緊急支出をしていたけれど、それを常態化できるかと言えば、別の話。
さらにそこに、活動制限をかけたことによる経済の冷え込み。欧州ではロックダウンをするしかなかったので、経済の落ち込みは日本をはるかに超えていました。そういうことも、もうしたくないでしょう。
そして、国民が新型コロナの存在に慣れ、対策を嫌がっている。渡りに船。国民の声を大義名分に、コロナ対策を絞れる。リスクはまったく減っていないけれど、みんなが気にしなければ大丈夫。
この渡りに船が、日本でも起きてそうで嫌なんですよね。
今回の流行では、政府は特に行動規制をかけませんでした。公式の理由はこんな感じ。
コロナ“第7波” 行動制限はもう必要ない? 対応新局面に NHK政治マガジン 22/8/1
重症化しないから大丈夫、それより経済、ということ。ただ、気になったのはこの部分
一方、行動制限によって失われる社会経済的なコストという観点から、行動制限に否定的な見解をいち早く示してきたのが、同じく政府の分科会の委員を務める、大阪大学の大竹文雄特任教授だ。
行動経済学が専門の大竹特任教授は、ことし2月に開かれた政府の分科会でも“第6波”に伴うまん延防止等重点措置の延長に強く反対した。
「飲食店の営業を制限すると経済的に困るというのは分かりやすい。コミュニケーションが減ることで、結婚が減って、生まれてくる子どもが減る。あるいは孤独になってメンタルヘルスを悪化させ、自殺するという影響もある。行動制限で失うものは見えにくいが、中国と日本以外のほとんどの国は、そうしたデメリットを理解し行動制限を撤廃している」
また、大竹特任教授は、オミクロン株への変異で重症化しにくくなったにも関わらず、新型コロナを過度に恐れ、すべての感染者に報告を求め、隔離し、医療費も公費で負担するような当初からの医療の仕組みを維持し続けていることが、かえって医療のひっ迫を招いていると指摘する。
「感染力が強く、重症度が低い病気というのは、季節性インフルエンザに近い。人にうつしてもさほど大きな影響を与えない病気であるにも関わらず、検査し、陽性であれば隔離しなければならず、医療機関にとって対応が非常に困難なままになっている。インフルエンザで医療崩壊は起きていない」
起きましたけどね、医療崩壊。
昨年の夏のデルタ株の流行に比べて、死者の数は上回って、今までで最悪となっています。医療崩壊も起きて、病院にも行けず自宅で亡くなる人が出ています。コロナ感染だけでなく、他の病気でも、病院がパンクしているせいでいつもなら助かる人が亡くなっている。
医療関係者から、懸念の声はずっと出ていました。日本の重症の基準が、肺炎があるかどうかに偏っている。例え死亡率が低くなったとしても、感染力が上がっていて感染者が増えると、死者数は増えるかもしれない。その通りになりました。
経済をまったく無視することはできないということには同意しますが、僕は感染リスクと経済リスクを合わせてきちんとシミュレーションして、被害が最低になるところを模索してほしいと思っていた。なのにリスク評価がこのレベルだなんて。「欧米はー」とか「風邪と同じ」とか素人レベルじゃないか。完全に読み違えているし、このレベルだと多分後遺症の問題は意識にない。
さらにこの後、もっと嫌な記事も見たんですよ。
新型コロナを「当たり前の感染症」として受け入れた時、何が起きるのか? 感染者はインフルの数倍から10倍に 岩永直子 BuzzFeedJapan 22/8/20
エンデミックに至る過程で予想される大量の高齢者の死 今が未来を変えるラストチャンス 岩永直子 BuzzFeedJapan 22/8/21
8割おじさんとして有名になった西浦教授へのインタビュー記事前後編。このまま対策を緩めてウィズコロナとした場合のシミュレーションを行ったところ、毎日20万から40万人の新規感染が出て多くの死者が出る、特に日本は高齢化が進んでいるので世界最悪レベル、という予想。
この予想を専門家会議で訴えたのですが、政府の経済優先の意思に忖度した提言が作られたので、西浦先生は名前を載せなかったそうです。この批判がやっぱりかと思わせました。
——政府が社会経済を回すことは言っても、感染対策や予防については国民に呼びかけなくなりました。逆に何も対策をせずに社会を開くリスクについてはダンマリを貫いています。無責任だと感じますか?
もちろんです。特に倫理上の問題が気にかかります。
もちろん、為政者には社会の意見を統合する役割があると思います。流行を制御してもらいたいという声があるのと同時に、社会経済活動を活発にしてもらいたいという人もいる。その中でバランスをとっているのだと決断は尊重します。
ただ、そうするのであれば、その判断に関する説明が必要です。特に命を失う人たちは僕らの親や祖父母世代ですが、その人たちに対する尊敬の念はないのかと問いたいです。その人たちの命と引き換えに若い人たちの日常を取り戻すということになりますから。
そのリスクを受け入れる覚悟をしたのか否か。「日本をこういう国にしようと思うから、政府としてはこう判断した」と、政治家が必ず説明しなければいけません。
この問題は専門家の間でも長く議論していて、尾身先生にも「これだけの死亡者数を先生が背負うことはできないですよ。選挙で選ばれた人でないと価値判断をしてはいけないと思います」と提言作成前の議論でも伝えました。
今の政治家には、尾身先生ほどの覚悟は見えません。少なくとも倫理上の責務は果たしてもらいたいと思います。
やっぱり、なあなあでごまかす気みたいだよ?
さて、そんなレベルなので、多分意識してないんだろうなと思う後遺症。けっこう重大な事態になるのではないかと気にしているのですが、こんなニュースも出てきました。
新型コロナ後遺症 最大400万人働けず 米・シンクタンクが分析
アメリカのシンクタンクは、アメリカ国内で、新型コロナウイルスに感染したあと息が続かないなどの後遺症に苦しむ人の数がおよそ1600万人にのぼり、このうち最大で400万人が仕事ができない状態に陥っているという分析を発表しました。
アメリカ・ワシントンにあるシンクタンク、ブルッキングス研究所は24日、新型コロナの感染拡大が社会に与える影響について分析した結果を発表しました。
それによりますと、アメリカ国内では現在、18歳から65歳までのおよそ1600万人が、新型コロナに感染したあと、息が続かない、頭に霧がかかったような症状が出るなどの後遺症に苦しんでいるということです。
また、このうちアメリカの労働力全体の1.8%にあたる、200万人から400万人が仕事をすることができない状態に陥っていて、経済的な損失は最大で年間2300億ドル、日本円でおよそ31兆円にのぼると指摘しています。
そのうえでブルッキングス研究所は、患者が毎年10%ずつ増え続けると10年後の経済的な損失は5000億ドル、70兆円近くになると分析していて、新型コロナの治療や予防の選択肢を増やしたり、企業で取得できる有給休暇を充実させたりするなど、対策の強化を訴えています。
心配していたことが当たりそう。アメリカはセーフティネットがよわよわなので、後遺症で仕事を失った人の悲惨な事態の記事も見ました。すぐホームレスになるし、病院もろくに行けなくなる。日本の方がましだけど、財政支援は打ち切りたくて仕方ないみたいだから、どこまで続くか。
自分の身は自分で守るしかないですね。仕事先も感染者が続出しています。気をつけよう。
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