青い鳥
青い鳥 (重松清・著)を読みました。
千葉知子はしゃべれない。しゃべること自体ができないのではなく、学校に来ると言葉がうまく出なくなる。それは一年生の時に口の悪い自分をクラス全体から糾弾されたから。この学校は過去に自殺者が出ていて、それ以来友情の誓いという戒律があったから。
そんな知子の前に、重度の吃音がありしゃべるのが苦手な国語教師、村内が現れる。みんなにその吃音を馬鹿にされる村内先生は、知子に「間に合ってよかった」と言うのだが……。
学校で問題を抱える子供が主人公の短編集。ただ、全編に村内先生が登場し、全体を貫くテーマを体現していきます。代用教師でしゃべるのが苦手なのに国語教師ということで子供たちには軽んじられている村内先生は、話が進むにつれて子供を救うスペシャリストなのだということがわかってきます。
問題の設定も興味深いものでした。最初のエピソードを読み始めた時に、子供主人公で学校が舞台のお話によくあるいじめがテーマなのかなと思っていたら、ちょっと毛色が違ってきます。単純にいじめられている子ではなく、加害側の子だったりするのです。
さらに加害側というのも単純な話ではなく、交通事故加害者家庭の子とか、一筋縄ではいきません。なかなか見ない視点なので、当然落としどころも予想しづらく、話の行く末が気になるのです。
そして何と言っても素晴らしかったのが、最後のエピソード『カッコウの卵』。それまでずっと学校の生徒のお話だったのが、最後は卒業生。村内先生に救われた子供の未来が描かれていました。
家庭環境に問題のある子供だったので、やはりそういう部分での影響でいろいろ苦労しているんですけれど、それでもがんばって生きている。そして最高のハッピーエンド。
村内先生の救った子供が、さらに他の子を救う構図になっていて、そして幸せがやってくる。もうめちゃくちゃよかった!
僕は作者の重松先生リスペクトなんですけど、ますますすごいなあと思ったお話でした。
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