フラダン
フラダン (古内一絵・著)を読みました!
工業高校2年生の辻本穣(つじもと・ゆたか)は、陰湿な雰囲気の水泳部に嫌気がさして退部。しかしその原因となった部員がクラスメイトで、事あるごとに嫌味を言われ、鬱々とした気分で過ごしていた。
そんな穣のもとにやってきたのは、空気をまったく読まない系女子、澤田詩織(さわだ・しおり)。彼をフラダンス愛好会にスカウトしに来たのだと言う。まったく経験もないのになぜという穣の問いに、体目当てときっぱりと言う詩織。こんな怪しい勧誘には乗れないと抵抗する穣だったが……。
こうして序盤のあらすじだけ書くと、変わった題材を扱っている部活物のように見えますが。
それは間違いではないのですが、そこに加わる一つ重要な背景があります。それはこの作品の舞台が福島だということ。
原発事故から5年経った頃のお話。ほとんどの登場人物が被災者です。
そして福島県といえば旧・常磐ハワイアンセンター、スパリゾートハワイアンズのあるところです。そこのフラダンスのショーをやろうとがんばった人たちを描いた映画『フラガール』も有名です。
この福島という土地に関連する二つのことを、うまく絡めた作品となっているのです。
最初は変人に囲まれた穣が苦労しながら、だんだんとフラダンスにのめり込んでいく様子を書いており、それだけでも十分面白い出来なのですが。
その最中にいろいろと蒔かれていた伏線が、被災した過去が浮かび上がってきたときに一気に芽を出し、作品に深みを与えます。
クライマックスのフラガールズ甲子園のシーンが、とてもいいのです。僕はうまく計算された伏線が大好きなタイプなのですが、愛好会の名前『アーヌエヌエ・オハナ』、ハワイ語で「虹の家族」が、ストーリー的にとても重要な意味があり、クライマックスでバーンと使われているところにめっちゃ痺れました!
キャラクターも個性的で生き生きとしていて、本当に面白かったです。良作。
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