パラ・スター〈Side 宝良〉
パラ・スター〈Side 宝良〉(阿部暁子・著)を読みました!
高校の時の交通事故で半身不随となり車いす生活になった君島宝良(きみしま・たから)。親友の山路百花(やまじ・ももか)のおかげで目標を取り戻し、厳しいトレーニングの末、車いすテニスの選手として東京パラリンピックの有力候補となるまでになっていた。
ところが最近、宝良は絶不調。パラリンピック代表は他の人の方がいいのではないかと陰で言われる状態になっていた。それには、これまで二人三脚で歩んできたコーチとの別れがあって……。
前の巻は百花の視点。この巻は宝良の視点。障害者である宝良本人が主人公なのですが、むしろ障害というテーマが薄まっている不思議な感じがあります。
宝良本人が障害者として苦労しているシーンもありますし、車いす生活になってしまったみちるちゃんがそのために友人関係に悩むエピソードもあり、書いていないわけではないのです。ちゃんとお話のテーマとしてしっかり扱われています。ですがそれ以上に、アスリートとしての宝良の熱量がすごい。
新しいコーチと組むとなった時のセリフなんか、もうしびれるもん。
「最上さんと戦った時にしたことは本当に苦し紛れだった。でもそこに少しでも可能性があるならそれを伸ばしたい。あんな無様な戦い方は、もう二度としたくない。コーチが病気になって動揺してたとか、そんなのは敗けていい理由にならない。だって私は、大会の初戦の日に雪代コーチが死んだとしてもきっとコートに立つ。コーチだけじゃなく、たとえそれが親でも、一番大事な友達だったとしても」
人間性を疑われたとしても仕方ないことを言っていると自覚はあった。それでも志摩は顔をしかめることも、笑うこともなく、こちらを見つめ返す。
「だから私に何が足りなくて、それを得るために何をするべきか、志摩さんに見えるものを教えてください。何だってやります、強くなるためなら」
こういう覚悟で、この後熱戦が続くのです。もう最後の試合なんか、本当に手に汗握る展開です。想いの密度がすごくて、涙出た。
最高のスポーツ小説を読んだ。そういう感想で読み終えたのでした。
本当に傑作だよ!
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