パラ・スター〈side 百花〉
パラ・スター〈Side 百花〉(阿部暁子・著)を読みました!
車いすのトップメーカー藤沢製作所に勤める山路百花(やまじ・ももか)は、一つ夢を持っていた。それは中学からの親友の車いすテニスプレイヤー君島宝良(きみしま・たから)に、自分の作った車いすを使ってもらって、一緒にパラリンピックに出ること。
ただし百花はまだ全然駆け出しで、それに比べて宝良は日本代表にも選ばれるようになった期待の星。どんどん開いていくその差に百花は焦る。そんな時、一つの依頼がやってきて、百花にとってはチャンスとなるのだが……。
最近がんばってアウトプットを増やしていたら、今度は逆にインプットが減ってしまっていて、これはイカンなと思ってたので、とあることをきっかけにして読んでみようと思った作品です。
事前の印象は実はあまりよくありませんでした。ブンガクにも「扱うべき題材とその書き方」みたいなものがあるじゃないですか。それで苦労してるので、ぶっちゃけそういうものに対する心象がよくない。障害とかですね、いじめとかですね、あらすじを見ると「まあ、企画通りやすいのはその辺だよね」と、ちょっとひねくれたくなるのです。作品の問題ではなくて、僕の心が荒んでいるという話なんですけれども。
しかしこの作品は、そんなひねくれた見方を吹き飛ばす、素晴らしい出来栄えでした!
前述の通り、ひねているのは「題材と書き方」に対してなんですよね。「安っぽい綺麗事言ってんなよ」と言いたくなる。
けれどもこの作品には、それが一切なかった。
そういう出来事が、しっかりとキャラクターの人生の中に取り込まれていて、安っぽい解決なんかまったくしていない。困難から立ち上がる、その熱量が、あふれんばかりに書き込まれています。キャラクターが生きてるってこういうことだ。過ごしている人生の濃さが、本当にすごい。ぐいぐいと引き込まれていきました。
「それだけ大きな困難なんだから、それに立ち向かう様をちゃんと書けば、本当に面白いんだよな」と、僕の荒んだ心が読後には清らかになっていたという傑作でした。
みちるちゃんのところがねえ、めっちゃいいんですよ。
そして宝良側から書いた続巻があって、こちらがまた素晴らしかったのですけれども、それは次回。
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