生き残る出版社
昨日に引き続きまして、HON.jp News Blogの大原ケイさんの短期集中連載記事を読んで考えたこと。本日は第2回です。
アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(2)~ 大きくなって交渉力をつけるか、小さくやってニッチを突くか/アメリカ出版業界の海賊版対策 HON.jp News Blog 20/1/9
さて、こちらの記事で一番膝を打ったのはこの部分です。
一方、インディペンデント出版社と呼ばれる零細出版社は、アマゾンに頼っているうちに、いつか足元をすくわれることのないように、競合のいないブルー・オーシャンを狙うニッチ出版で生き延びる道を進んでいる。例えば、まずはEブックで出版して、読者からの要望次第で紙版を作る出版社、アマゾンに一切頼らず全国に散らばった販売員ネットワークを通して本を流通させる児童書出版社、非営利団体として書籍の売り上げの他に自治体や個人からの寄付を受け付ける出版社、Eブックに背を向けひたすら重厚な永久保存版としての写真集を出し続ける美術書出版社、本を出す一方で自社が経営する書店を併設しアマゾン批判を堂々と載せるウェブサイトを運営する出版社、などなど、そのニッチのあり方は様々で、元気がいい。
最初の僕の記事で、今さら「本屋を守れ」的なツイートがいくつも流れてきてがっかりしていたところ、こちらの記事を読んで……というようなことを書きましたが、こういう部分なんですよね。ちゃんと知恵を絞って環境の変化に対応しているところがいいなあと思って。この後の回で書店の話も出てきます。そこもよかった。
出版不況のニュースはたくさん流れてきますけど、読んでると絶望しかやってこないわけですよ。対応策も後手後手に見えるから。そこで、こうやれば生き残れるのではないかという施策を打っている話を見ると、勇気づけられる。日本の事例でも、もっとこういう話を読みたい。
特に上の例の中では、「アマゾンに一切頼らず全国に散らばった販売員ネットワークを通して本を流通させる児童書出版社」は気になりますね。まず書いている分野の話だし、アマゾンに頼らずというところも気になるし。
今、日本の児童書は、かなり苦しい感じになっています。アメリカは移民が多いのと、大家族観が根付いている感じがあるのとで、先進国の中では唯一の出生率2を維持している国です。それに対して日本は出生率は若干ましになったけれど、出産適齢年齢の女性がもう減少期に入って出生数は減り続けているので、当然子供相手のマーケットは先細りしています。そうすると、子供向けの本の本棚はどんどん縮小され、さらに本屋は潰れと、もう悪循環真っただ中です。
そういう中で持続可能な生態系を作るには、かなり知恵を絞る必要がある。さあ、日本でもこういう手を打って生き延びるところが出るのでしょうか。
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