「このセルフパブリッシングがすごい!」と伊藤なむあひさん
ちょっと遅れた話題ですけれど。
『このセルフパブリッシングがすごい!2019年版』が発行されています。セルフパブリッシングを盛り上げるため、その作品を紹介しよう、しかも広めるのが目的だから無料で、というとてもありがたい企画です。
投票を募りましてのランキング、インタビュー、推しパブコラム、さらに小説と、これで無料とは思えない、今回はさらに充実の内容でした!
そして今回のランキング1位は、伊藤なむあひさんです。
伊藤さんには実際にお会いしたことがあるのですが、物腰の柔らかい、どこから見ても常識人な感じの方です。
なのに、書いている作品は常識を破壊するかのようにぶっ飛んでいて、頭がおかしいとしか思えない。褒めています。あの飛躍を思いつくのはすごいです。
そんな伊藤さんは、僕にとっては重要な気づきを与えてくれた作家さんなのです。
僕が月刊群雛の休刊が悔しすぎて、じゃあ自ら雑誌を作ろうと思った時、すでに休刊前から動いている企画があると聞きました。それがオルタニアです。
どちらも群雛に掲載していた作家が母体なので、その結果、半分ぐらいが被ってて、しかも向こうもSF雑誌。毛色も被ってしまっても仕方ないケース。
ところが。
先に出版されたオルタニア、当時はオルタナでしたが、それを読んでみてびっくり。全然毛色が違います。メンバー半分が同じだというのに、これだけ違うのはどうしてなんだろうと考えた時に、一番象徴的なのは被ってない人、特に伊藤さんと僕だと思ったのです。
全く真逆の作風、これが色の違いを生んでいる。
創刊号のガンズの色は、誰がいいかなと考えた時、閃いた人に声をかけたらこうなった、という、ある意味無自覚なものだったのですが、その閃きの根っこに僕の好みが関係している。それは僕が色を着けたのに他ならない。そういう自覚。考えてみれば当たり前のことだけれど、それが意識の表層に上がってきたのです。
それ以降、山田さんもこちらに書くようになったり、らせんさんが向こうに寄稿したり、すでに被ってるの半分超えてね? という状態なのですが、違う色の雑誌という状態は保たれています。
お会いしたことは、その回含めそんなになくて、深く交流させていただいているわけではないのですが、そんな経緯があるので、伊藤さんは僕にとって、活動が気になる作家さんの一人なのでした。ということで、今回1位を取ったのは、とてもめでたい思いです。
伊藤さんの受賞インタビューが載っていたのですが、これを読んでまたつくづくと思うのが、本当に真逆。物語に対する考えた方とか本当に逆。
そしてそのような振れ幅を包み込むことができるのが、セルパブなんだろうなあと思います。皆が思い思いのやり方で自分の理想を突き詰めてよい。
僕ももっと突き進まなければいけないなあと思いました。
あと、そういう考え方では、乙野二郎さんの推しパブコラム「私的KDPミステリー名鑑」もよかったです。星をつけて評価しているのですが、その星が、王道⇔斬新、辛口⇔甘口、思い⇔軽い、論理⇔完成という評価軸での作品の立ち位置を表している。一つの物差し上で点数をつけるのではなく、その作品の味わいを伝えようという試み。
先ほどの思い思いのやり方や作家の理想の振れ幅を、まさに体現しているなあと思いました。
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