ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 9・10
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 9・10 (大森藤ノ・著)を読みました!
19階層でモンスターの異常出現が起こり、たまたま居合わせたために討伐に駆り出されたベルたち一行。速さが売りのベルは、速度重視の臨時パーティーに組み込まれ19階層に向かうが、不慣れな階層で仲間を見失い、はぐれてしまう。
そんな時に、片足を引きずり、何かから逃れようと物陰に隠れる人影を見かける。負傷した冒険者かと思い近寄ると、そこにいたのはモンスター。しかし、少女に似た姿をし、しかも人語を話す。怯えて涙を流すその竜女の少女を、ベルはつい、追手からかばってしまい……。
かなり厳しいテーマに突っ込んでいったなと思った上下巻でした。
この手のファンタジー小説は、ゲームなどに紐付いた共通理解を土台にしています。例えばモンスターの種類とか、亜人と呼ばれる異種族、職業など社会構造、小物の設定に至るまで、ある種の常識ができている。
この巻の前まで、モンスターの扱いはずっとそうでした。むしろ、ものすごくゲームに寄せていた。ダンジョンの中でそこらから生まれ、やっつけるとさあっと崩れて姿を消す。経験値稼ぎにバンバン殺していい存在。
それがしゃべり、意思を見せたとたん、「殺しちゃっていい、軽い存在」という共通理解が崩れます。殺すことに意味が出てしまう。
このジャンルは共通理解で作られているからこそ、そこでのアレンジや逸脱が腕の見せどころですが、その中でも特大のとこに来たな、と感心しきりなのでした。
あと、この手のジャンルという意味で言うと、第10章の挿絵、すごくいい絵だなと思いました。ライトノベルは表紙、口絵が特徴で、キャラクターを印象付けるのに、そこが大いに力を発揮しているのですが。
中の挿し絵がここまで印象深いのはなかなか記憶にない。ベルの苦しみと決意が伝わってくる、とてもいい表情でした。
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