ビッグデータ・コネクト
ビッグデータ・コネクト (藤井太洋・著)を読みました!
京都府警サイバー犯罪対策課の万田警部は、滋賀県警捜査一課長、沢木警視の要請により、世間を騒がしているITエンジニア誘拐事件の捜査に参加することになった。行政サービスの民間委託プロジェクトの作業部隊の責任者が行方不明となり、その指が送り付けられてきた、という猟奇事件である。
畑違いの捜査に招かれたのは、二年前万田が追っていた〈XPウイルス〉事件との関連が疑われたからだった。その参考意見を聞くために、ウイルス作成者の汚名を着せられ冤罪を被った元エンジニア、武岱修(ぶだい・おさむ)に協力を要請することになるのだが……。
デビュー作の『Gene Mapper』から始めて『オービタル・クラウド』、『アンダーグラウンド・マーケット』そしてこの『ビッグデータ・コネクト』と読み進めてきたわけですけれども。
この作品が一番好き。
話の題材的には、宇宙好きの僕にとっては、スペーステザーが出てきて衛星軌道上で事件が進む『オービタル・クラウド』なのですけれど、話の展開的にはこちら。
一気に読み終えることができました。というか、最初ちらりと冒頭を読んだ時にそういう予感がしたので、仕事の予定がない日まで置いといたぐらいなのです。
面白さとは、脳に刺激を与えることで、なんらかの情動を引き起こすこと。すると刺激の密度の高いものが面白いものだということになる。そしてその刺激の種類がいろいろあって、個性をつくっている、というのが僕の仮説なのですが。
その観点から見た時の、藤井太洋作品の面白さというのは、情報の密度ではないか。惜しげもなく突っ込まれる知識。ガンガンと進んでいく事件。そういう部分が、面白さを作っているのではないかと思われます。
その特徴と、この話は非常に合っている。
前三作は近未来を扱ったSFでしたが、それでもほんの数年先だったりと、かなり現代に近く、今回に至っては普通に現代物でミステリー。
そのミステリーというジャンルと藤井先生の作風の相性がとてもよく、謎が次から次へと提示され、ストーリーにぐいぐいと引っ張られていきます。ページをめくる手が止まらない面白さ。本当に夢中で読みました。
そして、話がそういうふうにグイグイ進む場合、その分キャラクターが薄くなることが多いのですが、そこでキャラクターの芯を感じさせるのが藤井先生のうまいところでもあります。
ウイルス作成事件の冤罪被害者となった武岱の、謎めいたキャラクターももちろんのこと。
頭の固い、抵抗勢力と思われていた綿貫が、武岱擁護に回るシーンは、まさにキャラクターの芯、彼らしい一本気さがよく表れていて、とても気持ちよかったです。
さて11/10のイベントに向けて、藤井先生の著作を頭から順に読むということをしているのですが。
こうして立て続けに読むことによって、質問しなければいけないポイントが見えてきましたよ。この高密度さを作っている、プロットづくりの秘訣については聞かねばなるまい!
ご興味がおありの方は『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』に、ぜひご参加ください。ご来訪お待ちしております<(_ _)>
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