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2018/10/16

オービタル・クラウド

さあ、11/10(土)の日本独立作家同盟のイベント『藤井太洋の頭の中~プロ作家が執筆時に考えていること~』開催に向けて、藤井先生の著作を一気に通して読むプロジェクトを進めていますよ!

本日の感想はオービタル・クラウドです!

スペース・デブリが大気圏に突入することによって発生する流れ星を予測するWebサイト〈メテオ・ニュース〉を運営する主人公、木村和海(きむら・かずみ)。ある日イランが打ち上げたロケットの二段目の突入予測を立てようとしたところ、使い捨てられたはずのそれが、高度を上げていることに気づく。

シェアオフィスの仲間で、Webシステムを構築してくれている沼田明利(ぬまた・あかり)の協力を得て、和海は公開されている観測データから、二段目のそばにある謎の構造物を見つける。それは世界を変えようとするテロ計画の一環で……。

藤井先生がデビュー2作目にして日本SF大賞を受賞した長編です。その評価にたがわず、すばらしい出来栄えでした。

まず、サイエンスの部分の密度。藤井さんの専門領域であるITのアイディアがぎっちり詰め込まれ、そこにスペーステザーなど宇宙開発の話も。

そしてプロットの緻密さ。この小説は場面転換が多く、いろいろな場所で動いている人たちを追って、群像劇の形でスタートします。それが話の全貌が見えていくにつれて、その人たちが出会い、ばらばらだった筋が統合されていく。その過程でどんどんお話が加速していく組み立て方がお見事。目が離せなくなります。

そしてこっそり、エンタメの王道がしのばされており。主人公和海と相棒となる明利は、シェアオフィスを使っているスタートアップ仲間という設定。言ってしまうと、明日の大金持ちを目指す極零細一人ベンチャー、それだけではご飯が食べられないので他のことも請け負うしがないWeb屋なのですが。

そんな主人公たちが、実はすごい能力があって、国家が絡む陰謀に立ち向かっていく。CIAのエージェント、作戦を指揮するクリスが、「和海と明利、この二人に請負のWeb屋をやらせているだなんて――日本はどうかしている。」と心の中で思うシーンは、「よっしゃ、きたー!」と喝采を叫ぶところなのです。

「主人公、実はすごい」は、ほんと見せ場ですよねー。とても面白かったです!

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