オルタニアvol.5
『SF雑誌オルタニアvol5 [○]edited by hassac naminov』を読みました!
タイトル[○]の読み方は「定点 O からの距離が等しい点の集合でできる曲線」という円の定義なのだそうです。長い!
今回のゲストは高橋文樹さんと天王丸景虎さん。NovelJamでの活躍も記憶に新しいお二人です。特に高橋さんの作品は前後編となっており、次に発行される高橋さんが編集長の増刊号に載るそうです。なるほど、そういう仕掛けか!
そして山田さんの連載と淡波さんの短編連作が最終回。さらに伊藤なむあひさんがこの号をもってオルタニアレギュラー陣から卒業。いろいろと動きのある号でした。
一番印象に残った作品は、卒業する伊藤さんの『箱舟事件は迷宮入り』です。タイトルから連想できるようにミステリー。いつものとても不思議な雰囲気の作品に比べて、学園の日常風景の描写から入っており、むしろ普通に書かれると不思議な気がすると思いながら読み進めていくと。
途中からどんどん、どんどんとおかしな方向へ。やばい人の頭の中を覗いている感がひしひしと伝わってきます。つられてこちらの頭の中もぐるぐるとしてきて、混沌の世界へ。
それでいて最後まで読むとストーリーの筋ははっきりしていて、普通の世界に戻ってくる。この計算され尽くされた混沌はすごいなと思いました。
思い返せば最初オルタニア(当時オルタナ)が創刊されると知った時は、ちょうどガンズの創刊準備にかかっていた時期。最初は「そうか、時期前後して2冊創刊されるんだな」ぐらいの認識だったのですが。
出来上がった本を見たら、ジャンルは同じSF、かつメンバーかぶりがあるのに、内容が全く色違い。そこで、こうなっているのはじぶんのせいか、とアイデンティティーを確認することになりました。
対極にあるがゆえに、自分の姿を映してくれる、鏡のような存在。特にこの2冊の色が大きく違っているのは、僕と伊藤さんが対極にあるからだと思うのです。
少年漫画、児童漫画、児童文学と流れてきて、その中で明確にわかりやすく書くという習慣がついている僕。それに対して伊藤さんの作品は、混沌と幻想に彩られ、不思議な世界へ読者をいざなう作品です。
そういうふうに読み比べると、物語の奥深さ、広さを感じます。毎回、読むと視野が広がるような、そんな読書体験ができました。
ブログなどを見ると、伊藤さんは今度は自分で雑誌を作ろうとしている模様。今後ますますの活躍をお祈りしております!
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