乗り遅れた
タイトルには二重の意味が込められています。
まず一つ目はですね。ある日、夜遅く仕事から帰ってきたら、ツイッターのタイムラインがある話題で盛り上がっていたんですよ。
とあるプロの作家さんが、「プロが電子書籍に消極的なのは全然売れないから。俺の新しめの文庫、半年で30冊しか売れてない」とつぶやいたうえに、何かリプライが癪に障ったのか「自己出版の連中が絡むな。お呼びじゃねえ」とやらかして、まあ当然、僕の周りのセルフ・パブリッシャーの人たちが反応しているわけですよ。
ほいでまあ、僕もちょっとむかつくじゃないですか。なんか言ってやろうかなと思ったら。
電子書籍の話題なども取り扱っているジャーナリストの西田宗千佳さんが、それに対して一連のツイートをしていて、それがまたさすがでですね。
何度でも言うが、紙と違って電子書籍は「棚に並べたらいつかは売れる」なんてことは絶対あり得ない。そりゃあ、出版社も著者もなにもしなければ、よほどの人気作・話題作でない限り、売れるはずなんてない。そこで努力もしないで「電子書籍なんて売れない」というのは、さすがに何周遅れか、と思う。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年2月6日
「出せば売れる」なんて牧歌的な時代は紙でも終わってると思っている。まあ、そこで責任や努力が著者にぜんぶ乗っかってくるのは違うし、乗っけてくるならこっちの取り分増やしてよ、とは思うけれど……。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年2月6日
なんかバズったので補足。電子書籍が「出すだけでは売れない」のは、リアル店舗と違って画面上では商品の露出点数が限られるから。わざわざ検索してまで買う人は少ない。でも、人々は「買いたくない」のではなく「存在を知らない」のがほとんど。だから、売り場の存在を示せば一定数は売れる。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年2月6日
この辺はウェブメディアをやっている人ならもちろんよく知っている話出し、ウェブストアに関わっている人も知っているはず。「存在を知らない」に対処することこそ、ネットでコンテンツを売る際の基本のキです。過大な宣伝をせよ、という話とは違うのです。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年2月6日
(って話は、2010年あたりから関係者はずっと議論して、実践もしてきた話なんですけどね……。電子書籍ストアの安売りも、実は「存在を知ってもらう」施策のひとつ)
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年2月6日
僕の言いたいことを全部網羅しているうえに、僕よりよっぽどまとまってたんですよ。出る幕ない。
しかも、身近なセルパブ仲間たちは、すでにその話題から転じて「電子書籍のおかげで」とか「売れない電子書籍を上げると誰かが買ってくれるタイムライン」とか、すっかり遊び始めていて。
夜遅くまで働いている間にすっかり乗り遅れているじゃないかと、一人さびしく夜食におにぎりとインスタント味噌汁だったのです。
さてもう一つはですね。
これ、典型的な、業界の乗り遅れ案件だと思うんですよね。
ここでもよく書いていますが、ニュース等を追っていての僕の現状認識はこんな感じ。
情報流通の主役を完全にネットに奪われたので、携帯性に優れるスマホ等が普及するにしたがって、雑誌がどんどん売れなくなってきた。実は本屋は雑誌、コミックに大きく依存していたので、小さいところからばたばたと潰れ、今では大規模店まで連続赤字のニュースが出てる。
書店なし自治体が増えていく中で、コンビニでも売れないので、棚面積減らされたり、コンビニ流通を支える運送会社が本は儲からないのに手間ばかりでもうやめたいと弱音を漏らすほど。
一方、そうするとネット書店で本を買う人の割合が増えていくけれど、アマゾンは直取引を増やそうとか印刷会社から直引取りとか、中抜きの意思を隠していない。
これを受けての僕の予測。そうすると本屋の次にやばくなるのは取次ぎで、まずそこが支えている伝統的な仮払いの金融機能に依存している中小出版社から厳しくなる。
さらに、ネット書店の比率が上がったらですよ、隣り合わせで電子版と紙本の購入ボタンがあるんですよ。片や若干お安く今すぐ読める。片や若干お高めで、追加料金払って速攻配達してもらっても明日にならないと読めない。電子には読み放題サービスとかもありますしね。
小学生でもスマホを持つこのご時世、デジタルネイティブがどんどん台頭してくる時代に、「やっぱり本は紙じゃないと」とみんなが思うのを期待するのは無理でしょう。電子移行はもう必須。アナログレコードがまだ売れてるぐらいだから紙本全滅はなさそうだけど、ビブリオマニアのアイテムとしての性質を強めていくでしょう。
そこで素人でも達成できる数字に届かないということは、ネット上で売るノウハウもリソースもまったく持ってないということで、そんな状態だったらそのうち詰むぞ、ということ。
一応断片だけ見て書くの悪いなとさかのぼって発言を最初から見てみたのですが、やっぱり「電子書籍なんて売れない」とかドヤ顔で言ってる場合じゃないと思います。むしろ俺の電子書籍を何で売ってくれないのだと、出版社をせっつかないと。
確かに電子書籍の市場のほうが小さいから儲けは少なかったかもしれないけど、漫画はもうひっくり返るし、すべて環境が整ってからなんて悠長なこと言ってると、その前に潰れかねない。主語を「電子書籍は」にしてるのがだめなんじゃないかな。
なにしろ、紙の出版をこよなく愛している、出版業界の状況を追っているブログ記事のシリーズ「出版状況クロニクル」なんて、最近悲鳴しか上げてないのです。今月の数字もすごいな。悪くなる予想はしてるんだけど、実際こうしてデータで見せられると、迫力ありますね、崩壊劇。
クロニクルの今月の記事の中に、岩波書店が持ちビル売ったというニュースがあるのが象徴的だと思うんですけど、知の職業を自認するはずの出版業の中の、特にそれを主張しそうなところほど、対応遅れて乗り遅れてる感じがあるんですよね。生き延びるために役に立たないとしたら、知って何だと皮肉な気分になるのです。
僕は乗り遅れたくないぞ。がんばるぞ。
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