虐殺器官
虐殺器官 (伊藤計劃・著)を読みました!
米軍情報軍特殊検索群i分遣隊所属、クラヴィス・シェパード大尉は、暗殺を主な任務とする特殊部隊のスペシャリスト。今回その標的は、世界各地の内戦で虐殺にかかわっている男、ジョン・ポールだった。しかし男は現れず、作戦は完遂せずに終わる。
その後もジョン・ポールは各地に災いの種を撒き、クラヴィスはそれを追うことになる。やがてクラヴィスは、その虐殺に隠された秘密を知ることになるのだが……。
とても有名な作品なのに、自分は読んだことがない。僕にはそんな作品がたくさんあるのですが、これもその一つ。そこでちょっと読んでみようと手に取りました。
戦場の残虐シーンから始まり、僕は母を殺したと続く構成。刺激満載で、事前にタイトルや概要から抱いていたイメージどおり。死をドライに扱うとかっちょいいですよね。そんな感じで。正直それはいいイメージではなくて、なので手を伸ばしていなかったのです。
ただ、読み進めるうちに印象は変わっていきました。
「死」がものすごく執拗に描写されていて、全然ドライな、さらっと扱った感じではない。
SFとしてのメインは、タイトルどおり「虐殺器官」とは何か。脳科学、進化論、それをたくさんのギミックが彩っています。
でも、お話として僕の中に残ったのは、死について。物質としての肉体。肉体の機能がどこまで損なわれたら、死と呼べるようになるのか。大勢の人が死んでいてもよその土地では当然のように続く日常性。
作者はこの作品の執筆時点で癌に侵されていて、長い闘病生活を送っていたそうです。死は若い作家にありがちなファッションとしてのそれではなく、自分の隣に立つ現実だった。
これはそんな作者の中から湧き出た叫びみたいな作品ではないか。そんなことを感じさせる作品でした。
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