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2015/06/05

出版サービスの解体

本日は、先日の群雛の記事に書いた話題の続きです。

というか、書いてる途中で話がふくらんで脱線しそうになったので、後日回しにしたのです。出版社の担ってきたサービスの再定義と解体というお話。

情報流通の仕組みが変わったり、電子書籍ができたりして、当然、出版のありようにも影響があるわけですよね。

昔々の話をすると、以前なら出版したいとなったら、出版社に持ち込んで、編集さんのOKもらって、印刷して本屋さんに配本して……とルートが決まっていました。

必要だと思われることは出版社の方で決めて、作者はとにかく作品を書いて、編集さんの要望に応えて直してと、目の前の原稿だけやってたのです。僕が漫画を持ち込み始めた頃は、ほんとにこれだけでした。他のことなんて考えてなかったよ。

ところが、これさえ状況が変わってきています。例えばSNSが発達したので、著者みずから宣伝をするのは普通になりました。

ちょっとつぶやくだけならたいしたことではないのですが、だんだんそっちも発達してきて、気晴らしのレベルではない手間をかけている人もいます。もうそうなると、宣伝が著者の仕事の一部です。昔とは変わっているのです。

ましてや個人出版となると、その他の事も全部自分でやらないといけません。

電子書籍という名前が定着する以前にも、データを作って自分で決済のシステム作ってと、ほんとに自力でやってる人はいましたが、それはぶっちゃけ大変です。アウトソーシングしたい。

そこに電子書籍のサービスがやってきました。

そうすると、何をお任せできて、何を自分でしなくちゃいけないかということが浮かび上がってきます。ここで出版の再定義が起きるわけですね。

まず分かりやすいのが、印刷、配本のところ。印刷がなくなり、kindleが来たところで、普通にamazonに並べられるようになりました。初期費用ががくんと下がったので、誰でも出版できるように。

すると出版社が中抜きされるんじゃないか、ということで、この辺りから編集が話題に上ることが多くなったような気がします。

あって当たり前の時には意識にも上らないというのは世の常です。なくなるかもしれないとなると、さあ大変だということになる。

ということで次に編集の仕事を、個人出版の中で考えてみると。

まず最初の、何が売れそうで何を書くかという、マーケティングと企画の部分。出版社に持ち込んでいると、ここから話はスタートします。

でもこれが自力になっても、苦になる作家さんはあまりいないと思われます。というか、何を書くか自分で決められない人は、そもそも作家に向いてない。

さらに、個人出版の場合は、大規模にプロモーションして大勢に売るのは難しいので、ニッチなところで勝負した方がよいと言われています。詳しくてこだわりのあるところに共感してくれる、より深い関係を築ける読者とつながろうというわけです。

となると市場動向より本人の特性の方が問題です。なので企画の段階では、個人で考えていても特に問題はなさそうです。

書く物の見当がついたら、執筆です。商業だろうが個人だろうか、書かなきゃ当然作品は出来上がりません。ここは変わらないのですが、書いたあと。内容をチェックするのはどうするか。商業出版では編集さんの仕事です。

読者には見えない、ここのせめぎ合いで、作家はものすごい苦労するわけですよ。書いても書いても通らない、もういやだーみたいなことから、これはもう、自分の作品なんだろうかということまで。

好きなように書けたらとてもハッピー。疲れ果てた結果、そう考えてしまう作家は多くいると思います。

ところがいい事ばかりじゃありません。口を出されて作品が曲がるリスクはなくなりますが、今度は独りよがりになって伝わらないというリスクが大きくなります。

評価は客観的でないといけないけれど、作品を作るためにはのめり込まなきゃいけない。もともと相反しているので、自分の作品を他の作品と同様に評価するのは難しいのです。やはり、いいアドバイスをくれる人は必須です。

「解体」と刺激的な言葉を使ったのは、実はこの辺から、ちょっとばらして考えられるんじゃないかと思ったからです。

例えば商業出版でも、コルクのような例があります。編集さんが独立して、出版エージェントを作りました。出版社は出版に関わるいろいろな仕事を一手に引き受けていますが、ひとまとめじゃなくてもいいのかもしれない。

出版社の編集さんは、作品にアドバイスをすると同時に、評価も下し、生死与奪権も持っています。なので時には作品の方向性を決める権限も持ちます。これは出版社が出版のコストを払うのだから、当然のことです。売れないと思うものは出せません。

リスクを自分で持つ個人出版の場合は、そこがちょっと違ってくると思うのです。何を書くか、どっちに行きたいかはもう決まってて、アドバイスだけ聞きたいというケースがある。

そういう時、僕は回りにプロの人がいるのでその人たちに聞くことにしていますが、そんなネットワークを誰でも持てるわけじゃない。

なので、そういうサービスがあってもいいんじゃないか。

小説の場合は、プロの先生の創作教室があったりしますね。ただ、「新人賞を通るには」という話なんですよね。

プロの編集さんとか作家さんに、「こういうのにしたいと思って書いたんですけど、もっとよくするためにはどこを直せばいいでしょう」と聞けるサービスは、需要がありそうな気がします。

さらに、ちょっと売れてきて専業でいけるようになった時に、コルクのようなエージェントと契約する、という流れもあるのではないでしょうか。

その時に、必要なサービスを選んでいけると便利ですよね。予算と相談しながら、バラで一つずつ買う感じ。そういうふうに、一括サービスになっているのを解体してくれた方が、使い勝手がいいんじゃないかと思います。

さて、出版社の担っている仕事は、編集だけではありません。

宣伝したり営業したり、本を広める仕事もあるのです。

漫画畑から来た僕としては、漫画雑誌の広める力について、つくづくすごいなあと思っているところです。それこそジャンプだったら、打ち切り漫画でも一発ネタで名を残したりしますからね。

リアル書店で平積みというのも、読者との出会いにはかなり大きい。ウチの本棚にも、そうやって出会った当たりの本がたくさんあります。

それがない個人出版は、まず知ってもらうのが大変です。

ただ、頭の方に書いた通り、最近では本の宣伝も著者の仕事になってきているので、どっちにしろやらなきゃいけないことなのです。僕は苦手分野。がんばらないと。

そこでもう一つ思うのが。

出版社にとっても、ここの比重が大きくなるんじゃないかなということです。

例えば漫画雑誌が売れなくなってきていたり、本屋さんがどんどんなくなってたり、今までのプラットフォームはだんだん崩れてきています。もっとネット上で広める仕組みが必要なんだと思うのですが。

そういう事に熱心な出版社って、あまり聞かない気が。

紙の本を広めるには、絶対出版社の方が有利なんですよ。流通網に個人で入るのは難しいから。でも電子ではそこまで差がないということになると。

先行するアメリカでは、個人出版で人気が出た人が出版社と契約、その後個人に戻るという例が出ています。著者の知名度で広めてるだけなら、組まなくてもいいという選択肢が出てくるのです。

ということで、広める力を持った所が著者に選ばれて生き残る、という時代が来るのかもしれない。

漫画ではそういう試みが出てきているので、ここはもっと進化していくのではないか。そうやって、出版の形が変わっていくのだと思います。

その中で、作家はどうやって生きていくのか。考えていかないと。

原稿は一段落ついたので、さあ次のこと。

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