週刊ビッグコミックスピリッツ連載中の「美味しんぼ」(原作・雁屋哲/作画・花咲アキラ)で、福島に行ったら放射線被曝して鼻血出たという回があったそうで、風評被害だと話題になっています。
原発事故から3年たったのに、まだこのレベルなのかとうんざりします。僕は、「放射能で鼻血」云々を言う人は、馬鹿か詐欺師だと思っているのです。今回の件もそう。
言論・表現の自由があるから、「自分は馬鹿です!」と大きな声で世間に叫ぶのも自由だけどさ。迷惑だよね。
人を理由もなく馬鹿とののしるのは失礼なので、なぜそう思うか書いてみます。断じているのには、主に二つの理由です。
一つ目。鼻血が出ることの重大さを理解しているように見えない。
放射能と鼻血の間の仕組みを理解できてたら、あんなのんきに構えてられないと思うのです。
ええ、のんきですよ。本気で信じているなら速攻病院に行くべきで、「放射能のせいで鼻血出た。国や東電は……」とか騒いでる場合じゃないんですよ。
放射線は、体の特定の部分を狙って攻撃してくるわけではないからです。
他の物と比較してみましょう。例えば花粉症も鼻がやられます。
「花粉症で鼻水が止まらない」のは、もう少し細かく言うと、「鼻の粘膜についた花粉に、免疫細胞が、異物が体の中に入ってきたと反応。この時アレルギー体質の人は過剰に反応してしまい、そんなに出なくてもいいのにというぐらいどばどばと鼻水が出る」という流れです。涙が止まらないのも同じ。
さてそうすると「放射能で鼻血」はどうか。「放射線被曝により、細胞が破壊され、血管が破れて鼻血が出た」となるわけですが。
花粉症の場合、免疫反応の暴走なので、目とか鼻の中とか、粘膜になっているところで症状が出ます。いわば体の内部との接点です。
それに対して放射線は、四方八方から飛んできて、細胞を攻撃します。特に鼻の粘膜が関係しているわけではありません。
鼻の血管がやられているなら、他の血管もやられているはず。しかも細胞の種類も関係ないので、血管だけではなく、体中がぼろぼろになっている可能性があるのです。
鼻血が放射能のせいで出るなら、肺もやられてそのうち水がたまったり吐血したりがあるでしょうし、内臓もやられてますから下血したり、最悪多臓器不全で死んでしまいます。「放射能で出血が」はこのレベルです。
しかも、もう止まらないはずです。花粉症が治まるのは花粉が飛ぶ季節が終わるからですが、この場合放射能は収まっていません。つまり、ずーっと攻撃されっぱなしです。止まったとしてもそのはしから別の血管が破れ、やっぱり死へ一直線です。
なのに誰も鼻血で死んでない。止まる鼻血は放射能のせいではないのです。
なので僕は、気にしすぎでしょとなるのですが。
それでも放射能のせいだと言うのなら、病院へ行くべきです。ちなみに体がだるくなったとも言っているそうですが、もしほんとならそれは急性白血病の症状で、やはり病院直行です。
寝て取れるだるさなら、やっぱり放射能のせいではないわけです。
(追記14/5/16 もっと詳しい出血の仕組みの解説。僕の理解はかなり大雑把です。全身ぼろぼろなはずは合ってた。僕程度の知識でもおかしいと気づくのにという例として、本文そのままにします。)
二つ目の理由は、量を問題にしていないことです。
「じゃあ、あんたは放射能に危険がないと言うのか」と問われれば、「そりゃ、たくさん浴びたら危ないですよ」というのが返答です。
ただし、「たくさん」が鍵なのです。
実は放射能は特別な物ではなく、自然界にありふれているので、人間の体はそれに対応して進化しています。
そもそもああいう人たちは、「放射能とは何か」を理解していない節もあるんですよね。
「放射能」とは「放射線を出す能力」。放射線を出す物質を「放射性物質」と言います。で、放射性物質の中には「放射性同位体」という物があり、原発事故でヨウ素がセシウムがと騒いでいたのがこいつです。
で、放射性同位体とは何かと言いますと。
世の中の物質は、どんどん細かくしていくと、酸素とか炭素とかの、元素にたどり着きます。で、この元素が、陽子、中性子、電子でできています。元素の種類は陽子の数で決まります。例えば、酸素が8個、炭素が6個です。
電子は基本陽子と同じ数ですが、多くなったり足りなくなったりすることがあって、これがよく聞く「イオン」という状態です。
さて、問題は中性子です。これは陽子といっしょになって元素の中の原子核を作ります。ところがこの数が、同じ元素の種類でも、何パターンかあるのです。そしてその中にはバランスが悪くて不安定な組み合わせがあります。
これが「放射性同位体」です。話題になったセシウムは、陽子が55個。これに中性子が78個くっついた、セシウム133は安定しています。ところが騒ぎの元だった同位体のセシウム137は、中性子が4個余分にあるせいでバランスが悪い。だんだんと崩壊して、別の元素になります。
この崩壊時に、原子核のかけらとか、電子とか、エックス線とかガンマ線が出ます。これが放射線の正体です。
さて、このバランスが悪くて壊れて放射線を出す同位体。実はすべての元素にあるのです。
なので自然界でも、年中同位体が壊れています。有名なのは炭素14で、「これは何年前の○○時代の遺物」というのは、これの壊れ具合を調べて測定しています。当然あなたの体の中でも起きていて、あなた自身も放射線を出しているのです。
また、太陽などの恒星は、核融合で輝いています。つまり超巨大連続爆発中の水爆みたいなものなので、これまた放射線をばんばか出しています。
そんな放射線が、自然界には普通に飛び交っているというわけです。この中で進化した生物は、放射線対応仕様に体ができています。じゃないと絶滅しちゃって、生き残ってない。
さらに言うと、遺伝子を傷つけるのは放射線以外の原因の方がぜんぜん多く、それも含めて、毎日何千もの細胞で遺伝子が傷ついています。そういう壊れた細胞は、自滅して取り除かれるようになっているのです。
原爆などでどばっと一気にたくさん受けると修復が間に合いませんが、毎日ちょっとずつなら対応可。最近のでは、年1シーベルトまでいけるという研究もあるそうです。
宇宙空間では前述の恒星からの放射線が飛び交っているので、年0.4シーベルトぐらいになりますが、宇宙飛行士がばたばたと倒れるということにはなっていないので、それぐらいはいけそうです。
それに比べたら、避難地域の年20ミリシーベルト(年0.02シーベルト)でさえ、十分低い数字だと思うのです。騒ぎすぎ。
それでも低い方がいいに決まってる、という声もあると思います。でも、それならなぜ、他のリスクはほったらかしなんだというのも不満です。
全部のリスクを下げるならいいんですよ。そういう考え方の人がいても。リスクを取る人取らない人、いろんな人がいないと、その集団はなんかの弾みで全滅するから。
なので、反原発の意見を持っていて、空気のきれいな田舎に住み、きれいな湧き水と有機栽培された自家製野菜で暮らしている、酒もタバコもやらない、そんな生き方の人は、ありだなと思うのです。
でも、ある危険をとことん嫌っているのに、他のはほったらかしなのは、無知の故だとしか思えません。
大気汚染は日本ではかなり軽減されましたが、幹線道路沿いは今でも周りに比べれば肺がんリスクが高くなっています。環境ホルモンなど化学物質の影響は、すべて解明されたわけではありません。
あの量で騒ぐなら、僕らの身の回りには、発ガン物質がうようよしていることになるのですが、なぜそちらは気にしないのでしょう。
震災がれき焼却で、周辺住民に異変が、という内容もあったそうですが、あれにいたっては検出すらされていないのです。
検出限界以下でも問題だと言うのなら、現在年に百万人死んでいると言われている中国の毒大気が、偏西風に乗って日本にやってきているのはどうするのでしょう。
タバコなんて、他の健康被害もある上に、ポロニウム210という放射性同位体を含んでて、体内被曝するんですよ。どうすんの。
昔、美味しんぼで、健康ブームに乗って皇居周りをジョギング、合間にレモンをかじっていた栗田さんたちを、防かび剤と大気汚染の発がん性で何が健康かと山岡さんが笑う回がありましたが、自分には突っ込まないんですかね?
さて、量の問題をもう少し掘り下げましょう。
美味しんぼからスタートした話題なので、飲食物で言うと。
例えば、コーヒー好きな人はたくさんいますよね。最近ではコンビニでも、淹れたてコーヒーを売ってます。毎日がばがば飲んでいる人もいるでしょう。
コーヒーの成分、カフェインって、致死量あるって知ってますか。
毒物なんですよ。カフェインだけ大さじ一杯飲んだら死んじゃうそうですよ。
実際カフェイン中毒ってあるし、そうでなくても高血圧の原因になる。健康にいいわけではありません。でも量を加減して、みんな飲んでいるわけですよね。
世の中にはそういう物がいっぱいあります。水でさえ、たくさん飲んだら水中毒で死ぬ時があるのです。
リスクゼロなんて、幻想です。あまり気にしていないだけで、僕らはみんな「これぐらいなら大丈夫」という判断の中で生活してるのです。そういう量の問題を見なきゃだめだと思います。
なのにそういう事をまったく考えず、他のことはほったらかしで、風評被害でその土地の人に迷惑をかける。そういう行為に理があるとは思えません。
全部下げるのはかなり困難、ゼロは不可能。ならばきちんと量を見るべき。量を見たら、「福島に人が住めない」なんて大うそだ。
というわけで、雁屋先生は馬鹿だと断じてるのです。
スピリッツは詐欺師ですね。なんだかんだでウチの周りで売り切れてましたからね。炎上商売、美味しいですよねー。(嫌味)
ちなみに僕はネットは公共空間みたいなものだから、身内でしゃべってる時みたいにぼろぼろ悪口言うのはどうかなと思っていて。
だから普段ここで悪口抑え気味なのに、今回馬鹿とはっきり言うのは、雁屋先生を心底軽蔑しているからです。
だいたい、美味しんぼが今でも続いてるのが問題です。儲け優先で大量生産添加物盛り盛りの食品は偽物だって、人の商売散々こき下ろしていたくせに、何で自分はテーマ消化し終わった作品をだらだら続けてんだって話ですよ。自分だって売り上げとか考えて、作品の質を犠牲にしてる。本物の作品じゃない、偽物のただの商品じゃないか。
僕は漫画の売り上げが長期低下してる原因の一つに、世の中の他の物は代謝が早まっているのに漫画はだらだら延命が増えて質を落とした影響があると思ってたので、あれには本当に腹が立ったのです。
というわけで、美味しんぼ批判は反原発だけじゃないぞ、というのが今回のオチでした。
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