狼と香辛料 Ⅷ Ⅸ 対立の町
狼と香辛料 Ⅷ Ⅸ 対立の町 (支倉凍砂・著)を読みました!
上下巻です。読みごたえ十分です。
尺に余裕があれば、その分書き込めるし事件の構造も複雑にできるし、面白くなるのです。たっぷり堪能、おなか一杯。
ということで以下感想。
エーブを追ってたどり着いた港町ケルーベは、川の北側と南側で対立が続いていた。エーブは北側の交渉役として大きな役割を担っていて、顔見知りのロレンスも、その渦の中に巻き込まれていく。
大きな流れに巻き込まれたロレンスの緊迫感が、びりびり伝わってきます。
今までも商売の緊迫感は書いていましたが、今度は町商人同志の対決。扱う金額が大きくなり、利害関係も複雑。町商人と行商人の違いは以前も取り上げられていて、そこが全面的に出てきます。
そうなるとロレンスの手に負えず、ロレンスを通して読んでいる読者にも、全体が見渡せません。どうなっちゃうんだろうという圧迫感。そして使い捨ての駒ではいつ切られるか分からない緊張感。手に汗握る展開で、面白かったです(^^)/
そしてエーブ、ロレンス、ホロの人間模様も面白い。
エーブはとても魅力的なキャラクターです。ロレンスを騙して裏切った敵役、お互い殺し合おうとした間柄。なのに、商売ではままあることと、お互いわだかまりがない。すると、そういうところを見せた相手だからか、仮面の下をちらちらと見せる。
没落貴族で金で買われた経験があるという暗い過去。そこから這い上がってきた強さ。豪腕の商人だけど、もしかして弱いところもあるのではないか、それともその姿も計算づくなのか、という二面性。
いつも顔に布を巻いて隠しているけど、素顔は美女というのも、そういう内面を連想させるいい設定。引き込まれます。
そしてエーブが焦がれたロレンスの帰る所。支えてくれる人。そんなホロのやきもち焼きが素直じゃないところがまた素敵。
強力な相手じゃないと、やきもちにも説得力がないですもんね。
キャラクターの魅力は、相手がいて引き出されるところもあり。エーブまた出てくるかな。楽しみ。
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