先週の雑感記 切り売り・取り込み・二万越え
二週間分の雑感記ですよ。
漫画関係でいろいろありました。
切り売りと取り込み。
アシスタント仕事が明けて、さてネームとなって。
そしていろいろみんなから、漫画の相談を受けたりしてました。
遊びに行くからネーム見てと人が来たり。
ご飯おごるから相談に乗ってと人が来たり。
作品に対するアドバイスはとても重要です。自分の背中は自分では見えないので、他の視点がなくては気がつかないことがある。
なので、身の回りにレベルの高いアドバイスを聞ける人がいるのは、とてもありがたい。
特に描いている同士だと、どういうところで引っかかりやすいか、どういうところをいじるとどう影響があるかを実体験しているので、話が的確でスムーズ。もうちょっとネームの進みが速かったら、僕のも同時に見てもらえたのですが。
そうして集まった中に、僕と同じ問題を抱えている人がいます。お互い愚痴ったり愚痴られたりする仲です(^^;;)
抱えている問題は、売れる狙い目と自分の個を、いかに共存させるか。
僕もその人も、わりとじっくり描きたいタイプ。しかし世の中の主流はもっとテンポが速いので、「ここつめられるでしょ」といつも言われてしまいます。
でも削れると言われたところがこだわりのページだったりして、「そこ削ったらニュアンスがなくなって、ただのネタ漫画になっちゃうじゃないかー!」と言われたとおりに直せない。それの繰り返し。
しかし通らないのではどうしようもないので。
僕は技術の切り売りという発想の転換でこれを越えようとしていて、彼は逆に主流のスタイルを自分の中に取り込むことで越えようとしています。
しかしその結果、何をすればいいのか、これで面白いのか、軸が保てなくなって悩みが深くなってしまっているようです。
かと言って、僕の「技術の切り売り」作戦が上手く行くのかどうかも未知数です。
難しい問題なのです。
作家とビジネス。
ただ、こだわりは捨てちゃだめだと思うんですよね。
ビジネスとして考えたら、儲けを最大化するのが基本です。「何をするか」もそこに含まれる。
ネタにしろ、スタイルにしろ、一番受ける形にした方がいいわけですよ。だから受けるところが分かってるなら、こだわりなんて金にならない物は犬にでもくれてやれ、ということになります。
でも作家は「面白いことを閃いたから描く」のが基本です。趣味の延長が仕事になっちゃってるからです。
最近知った例で言うと、上橋菜穂子先生の小説をたくさん読んでたわけですが。
あとがきにほぼもれなく、物語が生まれた瞬間のことが書いてあります。あるシーンが思い浮かんだので、書くことにしたという。
そうそう、最初の閃きが大切なんだよね、と思うのです。その想いが筆を動かす燃料だから。だから、閃いたものが一番受けがいいものじゃなくても、面白いと思っちゃったらもうしょうがないのです。
守り人シリーズの主人公バルサが三十過ぎなのは、読者層を考えたらどうなのか、という話ですよ(笑)。やっぱり突っ込まれたらしいことは、守り人ガイドにありました。
でも最初に閃いたシーンが、子供を守る大人の女性の姿だったからしょうがない。上橋先生がそこを貫いたので、キャラクターに深みが出て、大人の鑑賞に堪える人間ドラマになったわけです。
そして、これからの時代、そういうことがより大切になるのではないかなあと。
従来の紙本の出版は下がりっぱなしで限界で、どう考えても電子書籍もやらないと持たない。どれぐらいの割合になるのかはまだ見えませんが、それを織り込んでいかないといけないのは確実。
そうなった時、個人出版が起きればライバルが激増しますし。
また、絶版がなくなることを考えると、過去の名作もライバルです。
「よくある話」で仕事になってたのは、以前描かれた「よくある話」が、もう市場に、本屋の棚にないからです。あるんだったら、面白い方を選ぶわけで、商売になりません。
話の筋を捻って「よくある話」じゃなくすか、筋はよくあるけれど個性を押し出して読み味を変えて、違う物にするのか。
ただ、売れるだろう場所をあえて無視するということでもあるので、じゃあそれで採算が合うのかどうか。採算合うところまで持っていくにはどうするのか。
非常に難しい問題だなあと思います。
二万越え。
そんな時に、ナベ先生の相談も受けてました。作品の内容ではなく、PCの操作とか、作品のアップの仕方とか。
そして先週金曜に「続ハーメルンのバイオリン弾き 愛のボレロ」が始まったわけですが。
もうページビューが二万越えてるらしいです。すごい。
今回は無料だけど、二万人が月100円払ってくれたら、アシスタント何人か雇ってやるレベルの本格的な仕事ができますよ。
実際には、何度も見た人もいるだろうし、逆に無料だから覗いてみた人もいるだろうし、二万ビューのうち需要がどれぐらいあるのかは、まだ分からないのですが。
でもちゃんとした仕事になったらいいなあ。
上の問題はナベ先生にも起きていて。もっとじっくり描きたいけれどかなわず苦しんで、体調まで崩した様子をそばで見ていたので。
個性を100%出しても仕事になるんなら、それが一番いい。そうなって欲しいなと思います。
さて僕のネームは。
ネームがネームがと騒いでいましたが、ようやく終了。
しかし、アシ仕事のスケジュールとの兼ね合いで、打ち合わせの日が取れませんよ。
とりあえず提出はするけど、どうしたもんかな(^^;;)
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コメント
私、ナベ先生の作品、月200円なら購読します!
お考え中と思いますが…
家が狭い、読み手側のコメントです。
雑誌はたまったら処分、コミックは
よほど気に入ったものしか手元に置けません。
最近マンガ喫茶をよく利用しているのですが、
古い漫画や少女マンガコミックって置いてないんです。
「サトラレ」、「寄生獣」、「アリーズ2」、
「今日からマのつく自由業」とか。
古本屋もありますが購読できるなら、
電子書籍って便利だなと、思いました。
投稿: サツキ | 2012/02/26 08:27
そう言ってもらえると、ナベ先生も勇気づけられると思います。
たまってく本は問題ですよね。僕も本棚パンクしてるんで、気軽に新しいシリーズに手を出せなくなっています(^^;;)
スマホの普及もあるし、その辺りもどう影響してくるんだろうねと、ナベ先生と話してました。
投稿: かわせ | 2012/02/26 23:25
先生、こんばんは。
アシスタント業は、担当の先生のアドバイスや指示を
正確且つ迅速に対応が求められますね…
僕の時はそれが一番大事な要素でした。
それから他の人の意見や、背景のパースの正確さを
高める、といったことも重要だと
今でははっきりと身に染みています。
続ハーメルンの盛況振りは、
僕のようにヤングガンガンでの悲劇から始まった
ファンの方々のフラストレーションが、連載によって
一気に解消された結果も含まれている、と
感じました。
あとは、ハーメルを主役に戻す形でリスタートをした
事もあり(僕は、グレートやシェルも好きですが)、
旧作のファンも加わり一斉に需要が高まったのだと
思います。電子書籍は、紙媒体より筆者の表現が
100%活かせないような気もしますが、
本で置いて部屋が狭くなるといったことも無くなり
低コストでの発表方法でもある。といったメリットが
ある気がします。
というのも、部屋内が
「魔法少女まどか☆マギカ」の本(外伝含む)や
「攻殻機動隊」の本(S.A.Cシリーズ含む)で
ごった返して(本自体が大きいのが多いので)…
そこに、旧作ハーメルン全巻、
ファントム デッド オア アライブ全巻、
ラッキーナイトカスタードくん3巻分(ブンブン雑誌での未収録含む)、サスケ剣風録が置いてある状態です。
そこにSF映画、戦争映画、刑事映画から、フランス
フィンランド、ロシア、イラン、イラク、キューバ産
映画等のDVDや、資料になりそうなチラシ、専門誌で
もう…足場5歩ぐらいです。
でも、やはり以前にもお話した通り
単行本での販売に期待したいです。
あと、旧作、続編の雑誌カラー絵再現バージョンの
ワイド版とか…
電子書籍の支払いが始まったら、
未体験の事柄なのでどうすればいいかわかりません。
ですが、その時がくれば、何が何でも支払う所存で
御座います。
かわせ先生のネーム…内容がとても気になります。
コミティアの同人誌がどれもSF好きとして
とても面白いものばかりでしたので
(そのうち1つは「渚にて」というタイトルの映画を
思い出したりもしました。
もう1つは「アップルシード」を彷彿とさせたり)
どうか、お体にお気をつけて
アシスタント業と合わせて頑張って下さい。
投稿: あかさたな午後のロードショー | 2012/03/01 00:36
電子書籍は支払いの壁がありますよねー。やってみたらちょっとのことなんだけど、その手前でとまどうっていう。
同人誌の感想、ありがとうございます。そちらもがんばります。
投稿: かわせ | 2012/03/01 08:32