2011年のかわせひろし
今年最後の記事は今年の僕のまとめ。
今年は大震災がありました。
今年は、というより、いまだ復興は遠く、現在進行形の事態です。
復興の道筋を決めなきゃいけないのに、政争のネタにしてたり、縄張り争いしてたりと感じるニュースを見ると、もうこいつらは駄目だとがっかりする反面。
被災地を支えよう、みんなでがんばって復興しようという、草の根の温かい気持ちが伝わる記事を読むと、人間って捨てたもんじゃないよねと思う最近です。
僕の住んでるところはそれほど揺れなかったので、直接的な被害はありませんでしたが、物事の感じ方には大きな影響がありました。
その中で特に影響があったのは、情報源の選び方についてです。
原発事故の報道で、明らかに基礎知識がないものが見受けられました。
いろんな質のいろんな情報が飛び交い、僕の周りでもデマに振り回される人がいました。
マスメディアにも、正確な情報を伝えるよりセンセーショナリズムに走り、不安感をあおって部数や視聴率を稼ぐ姿勢のところが目立ちます。
本当に危険があるなら避けなければいけないのはもちろんですが。
ストレスによる病気とかは、チェルノブイリでもけっこう大きな問題だったそうで、質の怪しい情報源はむしろ別の危険を招きます。
信頼できる情報源を探すのは大切だなあと思った一年となりました。食事時に見ていたニュースとかは、けっこうがらっと見るとこ変わりましたよ。
お手伝いしていたシェルクンチクが連載終了した年でもありました。
実は苦戦しているなんて、連載が続いている間はちょっと書けない話だったので。
ここに書いてた漫画話にそれの影響があっても、何を見てそう考えたかは書けず、「いきなり結論」になっちゃってたのです。ここ何年か。
ナベ先生もブログで触れてて、書いちゃっていいよーと言ってたので、そこを今年最後に整理しておきたいと思います。
よく「仕事の後に温泉で漫画の話で盛り上がった」と書いてましたけど、実はその盛り上がった通りの展開になったことはほとんどなかったのですよ。それはどんどんひどくなって。
やりたい事であればあるほど通らないので、ナベ先生はそのストレスで体調を崩し持病が悪化。仕事するのも辛そうな時があった。精神的に追い詰められて「おれは自分の好きなこと描いちゃいけないのか!」と叫んで仕事場を飛び出し、帰ってこないということもあった。
仕事だから思い通り描けない事もあるというのは分かってましたが、こんなにすごい修羅場を体験するのは、僕は初めてで。もしかしたらハーメルの名前だけ貸して編集部の望む形で描ける別の人に描いてもらった方がよかったのか、と考えたぐらいでした。
これだけ苦しんでても、出来上がったものはちゃんと自分の色にしてあって、ナベ先生はえらかったと思います。
ただ、逆の視点から見て。雑誌から浮いてるなーとは感じてたし。
それに出版不況が続いています。ピークからもう三割も落ち込んでいるのです。そして、下げ止まる様子がありません。早く結果を出してくれというシビアな注文が来るのは当然で。
あなたの作家性よりもウチの雑誌はこういう読者傾向です、こういう展開にしましょう、という話に。僕だけじゃなくて他の人の打ち合わせを聞いてもそう。
だからこの事態も、そういう部分から生じたミスマッチが、思惑違い、ボタンの掛け違えを生んだんだろうなーと納得はしているのです。
ただ、ナベ先生ぐらい個性がはっきりしていてその実績もある人でもこうだったら、僕の個性なんて掃いて捨てるチリのようなもので、まったく考慮されないぞと、ぞっとするわけですよ。
こういうのが描きたいとか言っててもらちあかない、というのを思い知らされたのです。
確かにもともとあることだったんだけど、雑誌とのマッチングについて、すごく考えさせられました。最初からがっちり合ってるものを出さなきゃ駄目だ、という思いが、とても強くなりました。
でもそれだけじゃ、ちょっと寂しい。描きたいものが描けないなら何で漫画家になりたかったのかなあ、とか思っちゃう。せめて仕事と平行して好きなものが描ける、ちっちゃくても自分のホームになる場所が欲しい。
そこでちょうど話題になりだした電子書籍にすがる気分になり。
商業誌でしなきゃいけないことは分かってるのに対して、電子書籍の方はどうなってくのか先行きが気になるので、ニュースに敏感になって、電子書籍が、電子書籍がという発言が増える。
そういうここ何年かだったのですよ。
考えてみたら。
今年、昔描いた「LITTLE BIT WONDER」を同人誌でリメイクしましたが、あれはリアルタイムで読んだ人に、「すごい変わってる漫画だったので、何でいきなりこんなのが載ってるんだろうと思った」と言われたことがあるのです。
そんなに毛色の違うものを、何でやろうということになったのか、思い出せないんですよね。しかも、会議でみんな見たはずなのに、「まあ載せてみるか」ということになったわけでしょう。
ナベ先生も最初のハーメルは、楽器を奏でる美少年が集まってきたハトを撲殺して食うという、これがシリアス漫画になるわけないでしょというスタートから、のちのちああいうふうに展開してもよかったわけで。
大らかな時代だったなあと。そして、もう遠くなったんだなあと思うのです。
ただ、さっき電話で話した時に。
「漫画楽しいよね」「そうですよね」というところに話が落ち着いているので。
環境が変わっても、なんだかんだで描き続けるんだと思います。無心で没頭している時、漫画描いてるのは楽しいよ(^^)/
さて、最後に恒例、元旦の記事を読み返して、今年の達成率を見てみると。
「ケッタ・ゴール!」進んでねー。死ぬまでに終わるのかな、ほんと。×。
「Spring8」は終わらせて、次にすぐ「LITTLE BIT WONDER」を。これが今思わぬ効果が出ていて、使ってなかった個性を引き出せるかもしれない展開。これは◎。
立ててた企画は「CLONE04」で、結果は出せなかったけど、手ごたえはあった。△。
毎年こんな感じだなあ。ほどほど(^^;;)
自分のホームを探す旅は続きます。
それでは皆さん、よいお年を。
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)
最近のコメント