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2011/12/24

今週の雑感記 取りこぼし

12月に入ってからの怒涛のレイソル祭りは、天皇杯四回戦のPKサドンデスという死闘で幕となりました。

そしてふうと一息ついて気がついたら、もう今年が終わっちゃう!

多分これが今年最後の雑感記ですが、本日の話題はこちら。

面白さを取りこぼしているのではないか、という話。

先週の雑感記で米アマゾンの電子書籍ランキングの話を取り上げましたが、それに関連して。今度は一位の人の記事。

Amazonの電子書籍部門No.1になった個人作家Darcie Chan氏、ネット上での作品プロモーション法を明らかに

【編集部記事】今年の米Amazonの電子書籍部門ランキングNo.1作品となった「The Mill River Recluse」の著者Darcie Chan氏だが、個人作家としてどのようにして作品をネット上でプロモーションしたのかが米Wall Street Journal紙の記事に書かれている。

同紙記事によると、弁護士でもあるChan氏は政府系職員として働いていたが、2002年頃から医師である夫が夜勤のため帰宅が遅くなり、空き時間をつぶすために小説執筆を始めたとのこと。「The Mill River Recluse」は昔故郷で起った実際の事件をインスピレーションに、2年半ほどかけて執筆。しかし、原稿自体は出版社すべてに相手にされなかったため、そのまま5年間ほど放置。

昨年、ふと電子書籍ブームの噂を聞き、Photoshopで表紙を作り、Amazon・Barnes & Nobles・Smashwordsにファイル納品。価格を99セントに下げた途端に読者からのレビュー評価が上がり始めたため、「プロモーションすればもっと売れる」と直感し、ネット上の複数の人気書評サイトに数百ドル単位で広告料を払い、書評記事を書いてもらったとのこと。結果、電子書籍の販売部数が伸び、新聞社の書籍ランキングにも入るようになり、現在は映画化のオファーまで来るように。

続編も検討中のChan氏だが、本人によると本職はあくまでも弁護士で、現在も小説執筆はホビーであるとしている。【hon.jp】11/12/20

電子書籍を百万部売って話題になったアマンダ・ホッキングさんも、書評サイトに依頼したのがきっかけ。こういうのがこれからけっこう重要になるんだなと。キュレーションというやつですね。

ただ、僕が気になったのは、発表までの経緯の方です。「原稿自体は出版社すべてに相手にされなかったため、そのまま5年間ほど放置」。

一位の人もか!

前回も書きましたが、ますます何かを取りこぼしてるんじゃないかとの思いが強くなりましたよ。

ハリー・ポッターの出版経緯の話も有名です。あれだけの作品が、十社ほどの出版社で採用されず、しかも最後は読んだ子供の面白いという言葉が決め手になっての出版。

あの時、世の中には途中でくじけてあきらめてしまい、埋もれちゃった傑作がたくさんあるのではないかと思ったのですが。

アマンダ・ホッキングさんも、何年も出版社に送って採用されず、電子書籍で自費出版。先週紹介したマイケル・プレスコットさんも、25社でボツになって電子書籍自費出版。そしてこの記事のダーシー・チャンさんも。

やっぱりたくさん埋もれていたということですよ。

そしてこれは、出版界で重要とされているチェックポイントが実は重要ではない、もしくは逆に、もっと重要な面白さのチェックポイントがあるんだけどそこを見ていない、という可能性を示しています。

どこなんだろうなー、気になるなー。ネタの話だったらちょっと読めば分かるかもしれないけど、もっと細かいところだったら僕のしょんぼりな英語の読解力じゃ読み取れないんだよなー。

英米だけの話じゃなくて、ケータイ小説のブームがあったように、日本でも起きていると思うのです。ケータイ小説への批判は文章が稚拙だというものでしたが、要は伝わればいいので、着飾った文章は高級そうに見えるでしょという自己満足だった。

ただ、ちょこっと読んでみたところ実話を下敷きにした悲恋ものが多いようだったので、僕みたいなフィクション描きにはあまり参考にならなかったのですが。

ホッキングさんの作品は、バンパイアものらしいです。日本でいうとラノベっぽいやつ?

ハリー・ポッターを読んだ時には、チェックされたとしたらファンタジーなわりに出だしが地味なところで、実際にはそれよりハリーのキャラクターを身近に感じてもらうことの方が重要だ、ということかなと思ったのですが、さて。

取りこぼしているのは、いったいどこだ?

電子書籍では、こんな話題もありました。違法ダウンロードで作家が断筆。

電子書籍否定派のスペイン有名作家が違法ダウンロード者への怒りで“断筆宣言”、批判でFacebookページが炎上

【編集部記事】現地報道によると、スペインの有名女流作家のLucia Etxebarria氏が、最新作の違法ダウンロード者への怒りから自分のFacebookページで今後“断筆”することを宣言したとのこと。

各種報道によると、Etxebarria氏が3年かけて執筆した最新作の違法PDF版がネット上で出回っており、「これでは生活できない」として抗議の意味も込めての“断筆”を宣言。その結果、ファンや他のFacebookユーザーからの批判コメントが殺到し、Twitterやメールも含め炎上。「どうして私が攻撃されなきゃいけないの」と新聞各紙のインタビューに答えている模様。

英The Guardian紙によると、Etxebarria氏は電子書籍否定派で、「電子書籍で売ると違法コピーがさらに増える」と発言している模様。【hon.jp】11/12/21

日本でも自炊業者を作家が訴えました。日本の場合は、電子書籍の需要があるのに対応が完全に遅れてしまっている問題でもありますが。

多分、この違法ダウンロードに対する恐怖というのは、あまり読者に伝わらないんだろうなーと。ただの方がいいに決まってるから、みんなそっちに行っちゃって、生活成り立たなくなるんじゃないかという恐怖。

実際はただほど高いものはなくて、職業として成り立たなくなった場合、他に仕事をする分発行ペースはずーっと遅くなるし、練習量も減るわけだからあまりクオリティも上がらない。漫画の場合は職人的技能が多いし作業量も多いから特にそう。長期的にはみんな損なんですけど。

でも時間潰しだから別に質にこだわらないという人だったら、ただの方がいいだろうしな。

違法ダウンロードは、売ってる物をただで持ってくのは窃盗だから本質的にはよくないことですが、撲滅は難しいと思います。

そのためにコピーガードをがっちがちにすると、使いづらくなるし。僕もデジタル放送の番組を録画しようとして、フォーマット間違えて録れてなかった時には、ぎゃーってなるし。

まあ、あと紙の本で言うと、もともと読者全員が作者にお金を払ってるわけじゃないですしね。人から借りて読んだら払ってないし、古本は著者にはお金入らないし、図書館やコミックレンタルも大勢にシェアされてた。

なので全員から取りこぼしなくお金をもらうことを考えるより、大切なことがあるような気がします。

紙の本でも万引きがあったのに、違法ダウンロードの方が怖いのは、敷居が低いのでみんなやるんじゃないかという性悪説的な人間に対する不信と、盗んだ物が隣で配られているというその悪意の証拠がネットでは簡単に見えることだと思うので。

逆に善意も見えるといいんじゃないか。

以前個人出版に必要なことを説いた記事を読んで、「クラウド・ファンディング(Kickstarter.comなどを使った制作資金の調達)」というのを見かけました。

今まで読者というとひとかたまりのイメージだったわけですが、実際には入れ込みかたは人それぞれなので。

例えば「これから引きこもって創作にかかるのでその資金を募集、支えてくれた方には特典を差し上げます」的な仕組みができると、「お前の作ったもんに金払う気なんかねえ!」という人ばかりではないんだと、恐怖が打ち消されるんじゃないでしょうか。

作者→読者じゃなくて、作者→作者を支えるサポーター→消費者、みたいな構造。電子タニマチ制というか。

僕もそしたら支えたい作家は何人かいるし。

人と直接つながりやすいという、ネットのいい面も生かされるといいなあと思います。

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