あかとき星レジデンス
あかとき星レジデンス 犬上すくね
結婚して三ヶ月。当選した公団住宅に引っ越して、これからいよいよ新しい生活が始まるという矢先、妻に突然告げられた。
「突然ですが、この度、帰星することになりました」
「実は私はこの星の人間ではありません。とても、遠い星から来たのです」
遠く離れた滅亡に瀕した異星からやってきた宇宙人が、地球移住の調査をするために、人間の姿に擬態して、人々の間に潜んでいる。
と、設定を書くと、地球侵略物のサスペンスなSFみたいですが。
その侵略を防ぐことができるのかどうかという展開はまったくなく、地球人として生活していた宇宙人が、すっかり地球になじんでしまい恋に落ちたりするお話です。
地球人と違う感覚を持っているはずの宇宙人が、地球人に擬態したためか、それまで知らなかった感情「愛しさ」を覚えるようになり、それにとまどい……という形でSF設定が使われている恋愛ものなのです。
ネタばれ感想をすると。
電撃大王GENESISが創刊された時に、試しに読んでみて、その中で、「あ、この人上手い」と思った作品。
1話目。最初だんなさんの目線で物語が進み、奥さんの離婚したい狂言なのか変な人なのか、という雰囲気で進んで行った後、モノローグがすっと奥さんに移って、ほんとのことなんだと分かるところ。
あそこがすごく上手い。事実を伝えるだけじゃなくて、奥さんの中に芽生えている気持ちを表現してすうっと読者の心にしみこませ、さらにこれからの展開への布石にもなっている。それからの盛り上がりは見事で、最後の引きもすごくいい。
ワーッと盛り上がってすごく気になるラストページで終わってたから、二話目どうなるんだろうと思って次を見たら、オムニバスのシリーズでびっくり。各話でチラッと出てきた人が、実は宇宙人で次の回の主人公なのです。
あの二人ばどうなっちゃったんだーと思っていたら、その形で一巻分構成されていて、最後みんなきれいにまとまってました。いいオチだった。
おまけ漫画もかわいらしく、愛しさに気持ちほっこりする読後感の良作です。
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