精霊の守り人
精霊の守り人 上橋菜穂子
腕利きの女用心棒バルサは、新ヨゴ国の第二皇子チャグムが川に落ちるところに出くわして、その命を救う。だがそれは事故ではなく、暗殺をもくろんだものだった。
原因はチャグムに、何か良からぬものが取り憑いたと思われること。それはこの国の生い立ちに関わり、帝の権威を失墜させかねないものだった。母である二ノ妃に依頼され、バルサはチャグムの逃亡を手引きすることになるが……。
「獣の奏者」が面白かったので、こちらのシリーズにも手を出してみた。面白いです(^^)/
「児童文学」とか「少年漫画」とか「少女漫画」とか、読者層を絞り込んだように聞こえるジャンル分けがありますが、まあそれは分類の便宜上で、実際の作品がくっきり分かれているわけではなく。
少年漫画は女の子も読むし、少女漫画を男性も読むし、そして児童文学は常に子供が一番読みやすいように書かれているわけではない。獣の奏者もそうでしたが、こちらもそういう作品。
毎回アンケート取る漫画畑から来ると、子供向けとされるものが分かりづらく書いてあるなんて自分の首絞める行為として禁忌なので、気になるわけですが。
それはネガティブな意味ではなく、僕自身が本を読むとき背伸びしたがりな子供だったので、そういうところに惹かれるのです。
というか、マーケットから逆算したのではなく、作家が最初のひらめきに素直に従って作った良作は、常にそういう境界的な作品になるんじゃないでしょうか。
物語としては、チャグムに宿った精霊の謎解きと、クライマックスに向けて逼迫していく事態の緊張感で引っ張っていて。
そこに運命に翻弄される人のテーマがかかってきます。チャグムはたまたま精霊に選ばれ、たまたま皇子だったのでそれは良くない凶兆とされ、命を奪われそうになる。それを助けるバルサもまた、幼いころに理不尽な成り行きで親を失い国を追われている。
そういう理不尽な運命が、人生には時として待ち構えている。その中で一生懸命生きるしかないんだよというちょっと大人味なテーマが深みを与えている、味わい深い物語でありました。
十巻シリーズらしいので、先が楽しみ。バルサは幸せになるかなあ。
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