今週の雑感記 善意の経済圏
今週は作業の合間にこれが。
もう計算はいやだー(+_+) まだ終わらない確定申告。
もう税金を消費税だけにすればいいんだ。計算楽だから。11/3/1
これは単にめんどくさいから出たぼやきですけど、でも、あながち外れてないのかなという気もします。余計な手続きに時間を費やすことによって起きてる生産の損失というのが、日本全体であるんじゃないかなー。
さて、確定申告してたら、こんなありがたくない副次効果。
確定申告には、夢の住人にシビアな現実を見せ付けて、モチベーションを奪う効果があると思う。
モチベーションが下がってる時には「考える向き」を前向きに持ってくのが経験上有効。単に「がんばるぞー!」と自分にムチ入れる精神論は「でもだめかも…」という気持ちとの狭間で揺れ動いてつらいので、具体的な対応策を考えることに集中する。作業しながら、問題点の分析中。11/3/2
その前の年はまだ一応イラスト仕事があったけど、去年は一年間打ち合わせに費やした上にボツという、どーにもなってない年だったので。
さらにそこに年々業界厳しくなってるという現状があって、そうすると自分なんてどうなの?という負の循環でズドーンと。
これに浸かると単なる自虐なので、じゃあ、具体的にどうなってるのか、どう対応するのか、という正の循環に発想を切り替え。
夢の住人でいるのも大変ですよ(^^;;)
○ 善意の経済圏
コンテンツへの感謝を“投げ銭”で 100円から支払えるBIGLOBE「ポチ」 - ITmedia News http://t.co/IK7yVAd こういう仕組みが広がって「善意の経済圏」ができないと、ネット上でのコンテンツビジネスは難しい気がする。11/3/2
「善意の経済圏」は、例えばJリーグではできてるような気がするのです。
水曜のエルゴラに載ってたけど、スタジアム観戦者の四割が、一シーズンの観戦頻度17回以上。つまりホームは全部見てアウェイも行く層なんだそうですよ。
僕はなかなか見に行けないゆるサポだけど、こうなってる人はもうサッカー観戦というエンターテインメントを消費してる消費者じゃないと思います。映画を見に行くのとはちょっと違う。だって負けてる試合もたくさん見ることになるわけですよ。金払ってつらい思いして帰ってくるわけですよ。
さらに、日本のサポーターは温かい。外国はストレス発散に騒ぎに行ってる気配があるけど、日本の場合、ブーイングも我慢する傾向がある。
これは「俺たちはチームを支えてるんだ。ここで選手を萎縮させたらまずい。励まさないと」という思考パターン。もう中の人の発想です。
そして、こうなってる人は、そういうサポーターであることの誇りも持っていると思う。誇れるサポーターであるために、お金を払ってスタジアムに行き、試合に参加しているのです。
そして、Jリーグを見ていると、そういうサポーターの層が厚いチームは、クラブとサポーターの距離が近い傾向があると思います。そして、選手とフロントの距離も近い。変な切り方をしない。
つまり、人を大切にする気持ちがあって、一生懸命なサポーターがいて、ちゃんと向き合わなくちゃとクラブががんばり、その雰囲気がサポーターに伝わり、よし、じゃあ支えようと気持ちになって、それがチームの力になり、ありがとうと感謝の念が生まれ……という、善意のサイクルができてる。
そしてそれがクラブ経営のプラスになってるわけです。
こういう、「支えるよ!」→「ありがとう!」という善意のサイクルを取り込むシステムを作らないと、ネットは「匿名の悪意」を発揮しやすい仕組みなので、コンテンツビジネスは成り立たなくなるんじゃないかなーと思うのです。
「匿名の悪意」の一つが違法ダウンロード。いわば「デジタル窃盗」ですが、見られている感がなく罪の意識を持ちづらいので、根絶するのは難しいでしょう。根絶できるほどDRMをがちがちにかけたら、利便性やコストの面で、ちゃんと買ってくれる人に大きな負担をかけるレベルになってしまい、そういう人も逃げてしまうでしょう。
経済的な原則からすれば、ただの物と有料な物があったら、当然ただに流れます。有料な物はそれに対抗して価格破壊せざるを得ず、結局成り立たない。
だからJコミの取った広告付き無料モデルはそれへの回答なわけです。ですが。
広告付き無料モデルは、テレビ、ラジオでは成功しましたが、あれは電波行政により既得権が保護されていたのが大きいと思われます。要するに新規参入がなく、競争がぬるいから、高い広告費が成り立った。
ネット上にはコンテンツがあふれていて、広告側の買い手市場です。しかもアナログのどんぶり勘定と違い、効果測定が容易で、評価はシビアになります。高値が付かなくなっていくのでは。
そうすると、広告だけだと新作は成り立たないんじゃないか。成り立っても、今より採算の取れるジャンルは狭まるんじゃないか。バトル物の少年漫画とちょっとエッチな少女漫画だけ、とか。
僕は他のコンテンツに比べて漫画が勝っている点は、小回りがきく事だと考えています。
ゲームはハードの性能が上がり開発コストが上がるにつれて、新作が出づらくなり、人気シリーズの続きばかりに。ハリウッド映画もビジネスが大きくなったら、むしろ内容的には後退。元ネタをあちこちから買っています。
ですが漫画は手塚治虫以降かれこれもう70年、ずーっと内容のイノベーションが続いている。一人の天才の閃きをそのまま反映させやすいから。内容の多彩さ、表現の自由さが漫画というジャンルの命綱なのです。
内容がマーケティングにがっちり縛られるようになったら、アニメとかゲームの方が、表現としては面白い……。情報量多いもん。今でもちょっと縛られ気味なのに。
なので、僕は、ちょくちょく訴えてますが、電子化で出版流通のコストが下がるのを機会に、採算ラインが下がって、漫画の多様性を育む土壌ができるといいなあと思っているわけです。
というわけで、広告付き無料モデルだけでは、漫画の将来は心配です。ここで「善意の経済」です。
今でも土壌はあると思うんですよ。「貢ぐ」テンションでお金つぎ込んでる人はいる。ただ今は貢ぐ先が関連商品だったりするので、作家本人にはあんまり回ってこない。そもそも関連商品が出るのは人気作なので、そこはあまり重要じゃない。
そこで、作者本人にぽちっと簡単にお金を払えたら。
作家が情報をきちっと発信します。作品に対する思いを共有して応援したいなと思ったサポーターの人が、ぽちっとなとちょっと余分に払います。
違法ダウンロードって「お前の作品に金払う価値なんてねーよ!」と行動で示されてるわけで泣きたい気分ですが、逆に「私にはもっと価値がありますよ」と示されたら、こちらは嬉し涙です。
多分マジで泣く。お便りとかだってホントに嬉しいもん。ケッタくんで一番最初にもらったお便りは、いまだに目立つところに飾ってあるんだから。
この感謝の気持ちをなんか上手い形で伝えます。払った人には「支えてるぞ」という満足感。
そして、自分が一番欲しい物が作り続けられるのです。楽しいSFって支えたいな。むしろ今その意思を表示したい。需要が薄いのかあまり作られない。
こういう「善意のサイクル」をビジネスモデルに乗っけてくのです。できれば無料広告モデルより、対価を払わないと質が維持されないという認識が世間に広まって、対価モデルが当然となる方がいいですけれど。
これでも今より下がっちゃう可能性は大きいのですが、漫画家が漫画家になりたいと思った理由は、「お金持ちになりたい」よりも「一日中漫画ばっかり描いてても怒られない」という方が多いと思うので。
漫画で生活できて、かつそれで喜んでくれてる人がいるのをこういう形で実感できれば、結構それで大成功だと思うのですが、どうでしょう。
どうなるかなあ。
○ 今週の絵
仕事前に描いた落書き。
女の子の設定はしてるけど、男性キャラはまだ。来週仕事明けにはしないとー(^^;;)
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