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2011/02/15

ファントム

昨日のコミティアで、来ていただいたナベ先生のファンの方と「PHAMTOM DEAD OR ALIVE」の話。

他にもメールを頂きました。

ちょうどこの間のナベ先生の仕事で、参照するために眺めてたのです。不思議とファントムづいています。

その時読んでいて思ったことは。

「結構面白いな、この漫画」。

作業していた日々からだいぶたって記憶も薄れているので、素の読者の感覚になってます。

実際にはあの漫画はアンケートで苦戦し、終わってしまったのですが。

その原因として、ナベ先生のコメントは「向いてなかった」。

僕の反省も、「自分がブレーンとして出したアイディアがリアルに寄っていて、ナベ先生の作家性とバッティングした」。

もともとナベ先生の苦手な部分を補完することを頼まれていたので、リアル寄りのアイディアを出すのは当然なんですけど。

当時は二人とも、足りない物は足せばいいと考えていたんですね。

面白さというのは難しくて、単純な足し算ではなく、何かかちっとはまる絶妙のバランスみたいなものが必要なんだと思われます。

だって、技術的には絵も話も上手くなってるはずなのに、次回作で苦戦する作家さんがたくさんいるじゃないですか。未熟な中スタートし、無我夢中でがんばった初連載がヒットして、レベルはずっと上がってるはずの次回作がこける例のなんと多いことか。

絵柄、アイディア、キャラクター、話の展開のさせ方。一つ一つの問題だけじゃなくて、それが全部かちっとはまって相乗効果を生み出す。そういうバランスがある。

でもこれはすっごい感覚的なことなので、探し出すのは、広い草原に落ちた針を暗闇の中手探りで探すようなもので。そもそも見えないそんな物がある確信を持つのが難しい。

だから、とりあえず受けそうだからこのネタ突っ込んどけ、という話によくなるし。

既存の物の模倣が増えちゃうのは、意識してなくても、そこはバランスが取れていると感じるからだと思う。

でも描き手はそれぞれ別の人間で、得意不得意があり、普段の興味もばらばらで、ある要素に対する理解度やこだわりはみんな違います。だから、自分のその作品のバランスは、自分で手探りで掴むしかないんだと思います。

ファントムも、いいところはたくさんあるし、渡辺テイストはちゃんと出てたので、もっとかちっとバランス取れるところがきっとあったはず。惜しいことしたなあ。

さて、この間読んで懐かしかったので、ここからは思い出話。ただし、飛行機に興味ない人にはちんぷんかんぷんと思われるので、その場合は読み飛ばしてください(^^;;)

作画では、飛行機係があの作品での僕の仕事でした。

マニア具合で言ったら、日本各地の航空祭(時には海外の!)に出かけるとか、どこの基地にある航空団は何とすらすら言えるとか、そういうレベルの人には足元にも及ばないのですが、仕事場では一応マニアと呼べるレベル。

というか、他の人はそこまでの興味がないので、ちゃんと描こうとしても細かい所が分からないのです。

さすがに全部の飛行機を一人で描くのは無理だろうと、仕事を分担しようとしたのですが。

このファントムはバルカン砲装備の型だから、自衛隊と同じE型見て描かないと。鼻が短くなったら別の型でしょう、とか。

鼻が長くなってる分機首下がってるから、真っ直ぐ描いちゃだめ、とか。

胴体中央の絞り具合が魅力なんだ、とか。

主翼の下反角と先っぽのはね具合が、とか。

他の飛行機でもそういう調子。

うるさいから、かわせが全部描けということになって。

ペン入れはきれいに引ける人がいるから手伝ってもらって、下書きは、ペン入れはなぞればいいレベルで全部描きました。

大変だったけど、好きなものは細かいカーブ一つこだわって描くのも苦じゃないのだ、と気づく、有意義な仕事でした。

あの漫画の飛行機で苦労したのは、デフォルメです。デフォルメとは、特徴を誇張して描くこと。

ナベ先生の絵柄がそういうデフォルメが強い漫画絵なので、飛行機がリアル過ぎると似合わない。

かつ、人間の脳は不思議な機能を持っていて。

重要な物とそうでない物は見え方が違うのです。

例えば、人の顔を写真トレースしても、本物そっくりなはずなのにあまり似て見えません。特に目が小さすぎるように見える。

実はこれは、人の脳は全ての情報を処理すると効率悪いので、重要な情報だけ拾い出しているのだそうです。例えば物の輪郭とか、動きとか。目元の表情は相手の感情を読み取るのに重要なので、無意識にそこをクローズアップしているのだと思います。

漫画のディフォルメもこういうことから始まっているのだと思われ。

さて、これを飛行機に当てはめ、デフォルメしようとすると、見分けるのに重要なポイントは主に機首コクピット周り、空気取り入れ口、翼、エンジン周りとなります。

なので、あの漫画の飛行機は、コクピット周りが実際より大きくて、胴体はその分詰まって描かれています。

そうなると困ってくるのが翼の形。胴体が短くなっているので、変形させないとバランス取れません。

特にF-15には泣かされました。

あのクリップドデルタ翼は、他の飛行機の後退翼と違って、形が変わるとすぐかっこ悪くなる。しかも水平尾翼とのバランスが取れない。もう四苦八苦。

F-15であれだけ苦労したことを考えると、F-22とかF-35とかのステルス機が出てこなくてよかった。レーダー反射を揃えるために、各所の角度が揃ってるじゃないですか。

一つずれたらもうばらばらになるはず。コンパクトにかわいい感じが好きなんだけど、描いたら大変なんだろうなあ。

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