今週の雑感記 先行き
いろいろ環境が変わっていくこのごろ、漫画の先行きについては始終考えているのです。
去年の話題なんですが、つぶやきとつぶやきの間で考えてることがドーンと抜けてたのが気になったので、今週取り上げ。
店内の漫画を「自炊」するレンタルスペースが仮オープン、裁断済み書籍を提供、ネット上は懸念の声多数akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/201012… 漫画家おまんま食い上げの商売。「自炊」じゃないよね。「食材買ってきて家で調理する」から自炊なわけで。
漫画描かせたくないお上と、漫画に対価払いたくない読者に挟まれ、漫画という商売は先行き暗い(-_-;;) まあ、もともとよその国見れば分かるように、なくても世の中困らない商売だからなあ。
「大衆」という客層も、この世間の流れだとどんどん先細って行くし、これからは、その漫画に高い価値を感じてくれる人を中心にしたビジネスモデルにするべきだと思うんだ。10/12/29
電子化の時代に起きているジレンマだと思うんですよねー。情報に価値を見出すかどうかという。
これは自炊するのになるべく安く楽したい消費者と、たぶん貸本でさえないと金を払わず丸儲けを狙う業者のサービスですが。
最初から電子版があったらこういう人がいなくなるかというと、より安く、出来ればタダで、と思う人は必ずいて。
なんだかんだでいたちごっこになると思うのです。
しかし。
ネット上の情報はタダで当然、みたいな使う側の理屈があるわけですが。
実際にはそれに人の労力がかかっているので、そこから収益が上がらなくなっちゃうと、「仕事」としては成り立たない。
もしホントに全部タダにしてしまったら、その直後なら「仕事として成り立っていた時に訓練をつんだ元プロの人」がいますけど、そのうち「空いた時間に趣味でやってた人」だけになってしまう。要は新人賞のレベルで、そこからは大きく上がってこない。
新人賞の時点で上手い天才はいますから、見る物がなくなっちゃうということはないですが、その人も仕事として成り立ってる時なら、そこから毎日バリバリ描いてめきめきと腕を上げるのに、他の仕事をしてたら時間がないからそれが起きない。
全部タダ、なんて極端なことにならなくても、違法ダウンロードとかで入ってくるお金が減れば、そこで働く才能は減るわけですよ。金のないところに人は集まらない。他の仕事する。
仕事として成り立つサイクルを維持しないと、質は維持されないわけです。
そこで。
暇つぶしだったら、別に何でもいいわけですよ。質なんかどうでも。そういう人は出来ればタダでという欲求が勝つでしょうが。
でも、漫画なりその他の物なり、そのジャンルが好きで、より面白い物がよりたくさんあって欲しいと願う人もいる。
これからは、そういうファンの人に買い支えてもらうモデルに、移行していくんじゃないでしょうか。
その時、作家とファンの人はより親密なコミュニティを形成していて。
さらに何らかの特典とかサービスとかがあって、自分が買い支えているんだという満足を実感できるような。
要するにパトロン気分になっていくんじゃないかなー。昔のパトロンは貴族が芸術家を支えてたわけですが、ネット時代には、みんなでちょっとずつ支える、「ちょっとだけパトロン」が出来るような気がする。日本風に言えば「ちょっとだけタニマチ」。
そういう仕組みが出来れば、上手く回っていくんじゃないかなと思います。
さて次は、年が明けて。
走ってきたー。漫画の英語展開について考えた。
漫画のセリフはフキダシの中に収められているのだが、これは基本的には若干縦長になる。昔の手塚漫画なんかに横長のフキダシが見られるが、無理矢理改行してたりして読みづらいので、自然とこの辺に落ち着いたんだと思う。しかしこれが横書き言語に翻訳した時、問題になる。
きちんといろいろ調べたわけじゃないんだけど、僕が見た例では、フキダシを横書き用に描き直してあった。普通はああなんだろうか。しかし、それでは絵の一部が隠れ、空いた所を書き足さなきゃいけない。どこにフキダシを置くかを含め構図を考えているので、あまり嬉しくない。
別パターンを考えた。今、スヌーピーの漫画を読んでるんだけど、コマの脇に日本語訳が書いてある。同じようにすればいいのでは。ケータイ漫画ではもうコマ毎にばらしているわけで、見開きの構成がなくなっちゃうのが残念だけど、セリフは読みやすい。
もう一つ別パターン。日本語は本来縦書きだけど、横書きも取り入れてそれが普通になっている。しかも横書きも昔は右から左だったのを逆にした。単純に英語も縦に書いちゃえばいいんじゃないか?日本人が慣れたなら、同じ人間、外国の人だってそのうち慣れるだろう。縦書きの看板もあるみたいだし。
もうちょっと調べてみたけど、小さい字で納めてあるのに、向こうの人はもう慣れちゃってるのかな。余白は気にならないんだろうか。あと個人的な問題として、他の人と比べて自分のフキダシがより縦長傾向だと気づいた。どうしましょ。11/1/3
少子化ををどうにかしようという意気込みが、この国からはさっぱり感じられないので、将来的に落ち込むのは必至。というか、このまま100年ぐらいしたら、日本人は3000万人ぐらいまで減っちゃうような気がするんだけど、いいのかな(・・;;)
そこまでは僕は生きてないとしても、とにかく外へ出ないといけない日がいつか来るんだろうなーということで、こんなことを考えてました。
スヌーピーの漫画「ピーナッツ」を読んでいるのも、英語の勉強しようと思ったからです。普通に英語のテキスト買ったら三日坊主になりそうだけど、漫画なら続くはず。
しかし今のところ先は長い感じです(^^;;)
kuraray|現代家庭の情報生活|クラレアンケート http://t.co/DHmZWgE 十年前と比較したアンケート。雑誌・書籍の落ち込みすごい。そりゃあ苦しくなるな。ますます考えていかないといけない。
長い目で見たら電子化は必須。スマートフォンが主流になるんじゃないだろか。紙の本は、プラモとかフィギュアとか、好きじゃない人に何でそんな場所とるもの揃えてるのと言われちゃう様な、趣味の物になるんじゃないだろか。
どこかで携帯完全対応の描き方にシフトする時が来るのかな。基本のコマの形が縦長で、見開きとか変形ゴマが意味なくなる。本にすることを考えない物も出てくるかも。今はコマの大きさや形で、迫力出したり重要度の意味づけをしたりしてるんだけど、それがなくなるのはちょっと寂しい。
タブレットPCで読むんなら、本と変わらない構成でいいんだけど、インフラという点では、携帯がらくちんな手のひらサイズのスマートフォンの方が幅広く普及するはずだ。つまり、本、タブレットPC、スマートフォンの順で市場が大きくなるわけで、タブレットPCで止まるかその先へ行くか。
サイズ制限があると迫力出しづらくなって、向いてる題材が変わってくるかもしれない。他方、もともとがっちり描き込んだり迫力出したりは得意な方ではないので、そっちの方が向いてていいのかもしれない(消極的希望 ^^;;)
電子書籍の相場次第かな。どっちの方がコストパフォーマンスが良くなるかで、盛り上がる場所が変わってくるだろう。盛り上がってる所に人は集まる。要注目。11/1/5
英語翻訳してグローバル化よりもこっちの方が手前の問題です。雑誌・書籍の落ち込みは、20代だと3分の1以下まで行ってるんですね。電子化しないと、もう無理じゃろ。
今でもケータイコミックがあったり、スマートフォンで漫画見れたりするんですが、最初からそのつもりで描いたら、形も変わってくるんだろうなあと思って。
サイズ的にタブレットPCをみんながみんな持ち歩くということはないだろうから、スマートフォンの方が普及する可能性が大きいような。つまり好きな人にじっくり読んでもらうならPCで、手軽にみんなに読んでもらうならケータイ。
となると題材も違ってくるし描き方も違ってくるし、いろいろ考えますねー。
○ 今週の絵
いろいろ考えてますが、まず目の前の原稿を進めるのが何より大事です。
集中線も引いてます。
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コメント
英語に翻訳するって、かなり難しいよねぇ。
たまたま先日100枚くらいのプレゼンスライドを翻訳したけど(死んだ)、いつも思うのは
・日本語→英語にすると、文量が3倍くらいになる。
漢字は偉大だ! 簡単に分かるのは、例えば
黒乙 => Kurootsu
・英語でも縦書きというか、文字全体を横向きに書くと
いう荒技があるが(表とかで)、これをやると、
英語圏の人はかならず首を横に倒して読む。
縦に文字を追うという訓練がなされていないから。
日本人は首を倒さないまま、横向きの英文を読める。
・日本語って、擬態語・擬声語がやたら多い。
もともとボキャブラリの全体量が日本語と英語では
違いすぎ。漫画だと、こういうのはどうしてるんだろ。
多分、日本語の漫画をそのまま翻訳すると、吹き出しだらけで、絵がなくなっちゃう(笑) んじゃないかと。
絵だけでなく、ストーリーや構成による価値の高さをどう維持するのかは、門外漢ながら心配。
(これまでの翻訳ものってどうしてるんだろう?)
あと、textの処理能力は英語圏の人は圧倒的に高いが、絵や図の処理能力は日本人の方が高い。レイアウトによる意味づけってのは、なかなか英語圏の人には伝わらないので、プレゼンのチャートなども、英語にすると箇条書きにしてしまったりする。こういうのも漫画では、どう処理すべきなのだろうなぁ。
投稿: 黒乙 | 2011/01/09 17:20
字数はホントに増えるよね。漫画を英訳する時は、活字を小さくして対応してるみたい。
いつか自分で出来るようにならんかな、と思ってちょこっと勉強してるんだけど、気にして読むと、結構頭の中からして違うんだね、英語。
日本語って主語があいまいだけど、英語だとかちっと主語がつくなあとか。欧米の個人主義っていうのは、こういうところから始まってるのかもしれないと思ったり。
そこのニュアンス掴むのに、長くかかりそうですよ(^^;;)
投稿: かわせ | 2011/01/09 20:08
全くの個人経験談で、一般化はできないと思うけど、時間つぶしであっても
・プロの一歩手前のレベルの無料コンテンツ
・プロと認められている人の有料コンテンツ
だったらぼくは後者を選ぶ気がしてきています。
一年半ほど前にiPod touchを買ったのですが、試しに電子書籍を読んでみようとソフトをダウンロードし、青空文庫にあった本を読んで「そこそこ読める」ことを確認しました。その後、電子書店に並んでいる本を眺めたところ、有料のものに混じって無料のものがあったので、それ読んでみました。まあ一応最後まで読めたのですが、途中から「この本は、宣伝のためにあえて無料にしているのか、それとも有料には満たないレベルだから無料なのか、どっちなのだろう?」と気になって仕方ありませんでした。
読み終えた後のぼくの結論は、「ぼくは一定のレベル以上のものを読みたい。一定のレベルを読む前に判断する方法はあまりないけど『売り物になる』かどうかは、いまのところ一番信頼できる基準だ」というものでした。(好みがニッチなので、「人気が高いから」というのはだめなんです。)
まあ一般化はできない話だとは思いますが、値段がついているというのには、対価だけでなく、一定の水準をクリアしていることを表明している機能があるような気もしています。
長々と失礼しました。
投稿: □ | 2011/01/09 22:00
そうだよね、出版社の機能の一つは質の保証だと思うんだ。
で、今の問題は、その出版社によって保障された、有償のはずのコンテンツが無償で流れていて、そこからの収益が上がらず、さらに本文のような商売が出てきて、ますます……ということなのですよ。
みんながきちんとお金払ってくれればいいんだけど、「目の前のタダ」は強力だからねえ(+_+)
個人出版が出来るようになったので、それが普及した時に質の保証はどうするのか、というのも一つ問題だねー。
投稿: かわせ | 2011/01/10 01:29