宇宙の呼び声再び
以前読んで感想書いたけど、ジュブナイルのシリーズを順番に追っかけているので、もう一度。
○ 宇宙の呼び声 (ロバート・A・ハインライン 訳・森下弓子 創元SF文庫)
月に住む双子のカスターとポルックスは、15歳。生まれながらに技術者としての才能を持ち、すでに成功を収めていたが、それと同時に商人でもあった。二人は自分たちの発明品で稼いだお金で宇宙船を買い、一仕事しようと企んでいた。
しかしその計画は二人のお金を管理する父の反対に遭う。その代わり、家族全員で火星へと行くことになった。祖母に父母、姉と双子に弟のストーン一家を乗せた「ローリングストーン」号は月を飛び立つ……。
キャラクターの立ち方が抜群です。ここまでの作品と比べても格別。このままコマ割って漫画にできるぐらい。読んでてホントに楽しい(^^)/
さて、ジュブナイルのシリーズを順に読んでいるわけですが、ハインライン氏は子供向けだからと簡単なお話を書いてはいません。単に「少年が主人公」な物語です。内容のレベルを落としてないから、大人でも楽しめます。
ただ、少年を主人公にすることによって、半ば必然的に一つテーマが出来てきます。すなわち、少年の成長。
「カスターは口をへの字に結んで、大人の男が泣くように、胸からしぼりだすような声を立てて泣いている」
物語の最後の方の一文です。
双子たちは確かに頭が良く悪知恵が働き、大人顔負けなのですが、子供らしい過信と思い込みも持っています。物事を軽く見るところがあるのです。それが最悪の事態を招いてしまう。痛恨の失敗をした時、その痛みと共に少年は大人への階段を一つ上ります。
ハインラインのジュブナイルと他のSFの間のこの関係は、少年漫画と青年漫画の関係にも似ています。
よいジュブナイル、よい少年漫画は、内容が子供向けか大人向けかということではありません。だって、それこそ少年の頃は子ども扱いなんてもうされたくないのですから、内容を落としちゃいけないのです。せいぜいどの漢字を使うかとか、振り仮名ふるかとか、それぐらい。
違いはただ、主人公の属性。それがテーマを生み、物語の要素になっている。
僕は少年漫画がずっと好きなままの大人ですが、そういう要素が好きだからなんだなあと思います。ジュブナイルのSFなんて、理想郷(^^)/
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