最近達した境地
ネーム提出にコミティアと、最近続いていた締め切りが一段楽してちょっと時間に余裕があるので、漫画について最近達した境地について、まとめておこうと思います。
漫画というのは奥深くて、まだまだこの先があると思うんだけど、とりあえずここまで来たよ、という記録として。
まず最初に、話作りの極意(ではないかと思われるもの)について。
ネームは、1・いいシーンを、2・スムーズに繋げば、それでよい。
まず1から。いいシーンと書くと狭い意味では「感動的なシーン」ですが、ここではもっと広い意味に取ってください。
感動する、ぞっとする、泣ける、笑える、ほのぼのする、萌える、燃える、かっこいい……。読み手の心が動く、後で思い返したとき印象に残るシーンのこと。そのアイディアを用意して。
演出、構図、実際の絵をとにかく良くする。良ければ良いほど、人を引きつける。そういう、「アイディアも出来もいいシーン」です。
こう考えると、漫画に必要な絵の上手さというのは、何を描くかによって変わってくることが分かります。イラスト的な一枚絵とはちょっと違う。絵の雰囲気とシーンの雰囲気が合ってないと、いいシーンの効果が削がれるのです。
漫画は絵と話が不可分です。ネームの段階でも絵のアイディアとお話はくっついてる。小説書いてみて、絵がないと表現できないお話があるなと感じました。そこが漫画の漫画たる部分なんだと思います。
僕自身はもっと、必要な絵の上手さについて考えないと。どこか漫然としているのが、上達を阻んでいる気がします。
さて、次は2です。スムーズに繋ぐ。ここは表立って見えないので、言葉で書くと簡単だけど、結構難しい。
多分無茶な話に聞こえると思うんですが。
伏線を張るとか、起承転結とか、話作りで語られることは、話の展開を整理するために使う一つの考え方にすぎず、スムーズに繋がってれば何でもいいのです。
だって、伏線張って起承転結が出来ていることが話作りの要点だったら、ドラゴンボールは失敗作になっちゃう。後ろへ行くほど展開が無理矢理になってるし、オチに向かって作られてないし。
でもそれよりも悟空の活躍を楽しめることが重要。いいシーンといいシーンの間をすいすいと読ませれば、読んでる方はそれで面白い。
そう考えないと説明つかないヒット作って、他にも結構あるんですよね。
ところがこのすいすいが難しいのです。余計な情報が入っちゃったら、いいシーンの邪魔になるから削らなきゃいけないし、でも伏線張って下ごしらえしてないと、急にいいシーンになったら読み手が乗り遅れてリズムがずれちゃうし。
同じようなネタなのに、面白くなったりつまらなくなったり。目立たないのにすごく技術のいるところです。
これは噺家の話芸に通じるものがある気がします。しゃべることは誰でも出来るけど、噺家の人がしゃべると、お題の前のたわいもない枕の世間話も面白い。お客さんとの呼吸、間、言葉の選び方。奥深いですねえ。
というわけで、これが、漫画の中身について最近僕が達した心境です。今度は、漫画の外の話。取り巻く環境について。
それは。
今まで言われてきたことは、すべて前提条件がある。それはそろそろ変わる可能性がある。
ということ。
例えば昨日、コミティアで、やんむらさんと話題になったのが。
「まずガツンと読者を掴むフックが必要」という言葉。ネームについて語る時の業界定番フレーズで、すごくよく使われます。言われたことがある人は多いと思う。
で、じゃあ何で必要なのかと考えた時に。
実は前提条件として、漫画の商慣行があるんだよなと。
雑誌連載して、アンケートを取り、それで様子を見ながら続けるかどうかが決まる。例えばジャンプには、昔に比べると減ったけど、まれに10週打ち切りのケースがありますが。
あれは印刷配本にかかる時間、作画にかかる時間、アンケート集計にかかる時間……と考えていくと、二回目、三回目のネームを描いた時点で運命は決まったことになる。下手すると第一話が掲載された時には、もうネームできてて、終わってるわけですよ。
おっかない話です(((・・;;))) そんなに早くに運命が決まっちゃうなら、当然、最初にフックを作って速攻で人気取らないと、ということになりますよね。
ところがこれを小説で考えますと。
皆さんの部屋の本棚を眺めてもらえば分かりますが、漫画の単行本は、ほとんど厚さが同じです。連載して続くのが前提なので、事前にページを決めてるからです。それに対して小説の厚さはばらばら。
小説はむしろ書き下ろしで一冊に収めることの方が基本なので、ページは前後します。連続シリーズでも、大体の場合、大きなエピソードの区切りで一冊にまとめています。続くかどうかはその売り上げ次第。すると。
フックが冒頭にある必要がなくなります。書き出しがあまりにつまらないと読んでくれないから論外ですが、それでも漫画に比べた場合、オチまでで帳尻を合わせればいい分、ずっと余裕のあるスタートを切ってるなと思います。
というように、漫画を描く上での常識には、今までの商慣行が前提のものがあるのです。ところがこれは結構意識に上らないことが多く、「○○がいい」とか「○○じゃなきゃだめ」とか、絶対真理のように語られてる。
これが変わってくる可能性があります。
紙媒体の減り具合、電子書籍の普及具合、売り方の変化、その他もろもろ。いろんな前提がどうなるのか。
だから、前提があってこうなんだ、変わってもいいんだと、頭を柔軟にして待ち構えなくてはなりません。
その中で、僕の希望は、しょっちゅう書いているように、電子書籍で製作流通のコストが下がって、今まで採算合わなかったニッチなとこでも回るようになることです。
漫画の可能性はまだまだあるし、いろんな面白さがあると思うのです。
そういうのに向けて、それに必要な技術をいろいろ磨かねば、というモチベーションが高まっているところです(^^)/
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