読みかけ 街場のマンガ論
負けた試合を見返すのがつらいので、今日はこちらを。
○ 街場のマンガ論 (内田樹 小学館)
この間「街場のメディア論」を読み、それで今度はマンガ論と来たら読まねばなるまい、と思って購入。
まだ読みかけなんですけど。
「街場のメディア論」が、大学の講義をまとめた本で、しかも、メディア志望の学生さんが取るような講義なのに、「もう今のメディア業界に先はない」といきなり一刀両断するという容赦のない内容。
じゃあ漫画はどんな風に斬られるんだろ、と思ってたら。
全然違った。
こちらはいろんな所に書いた漫画の記事を集めた本で、最初が井上雄彦礼賛から始まる、すごい漫画LOVEの本でした。
でも、それで思ったことがあるのです。漫画の取り得について。
業界的に言って、テレビや新聞をあのテンションで斬るなら、漫画も斬られて当然だと思うんですよ。ジャーナリズムは地に落ちてるけど、漫画業界は素晴らしいよ、なんて言えない。たくさん問題抱えてる。数字にも出ている。
じゃあ、内田先生が漫画好き過ぎて、あばたもえくぼだったのだろうか。
違うと思う。
報道と漫画の本質的な違いが、そうさせているのだと思います。
報道は民主主義社会の基盤だけど、漫画はあってもなくてもいいとか、そういう寂しい話じゃないよ?
漫画は作家個人に帰属するからだと思うのです。
ジャーナリズムは質と量が問題になる。社会の全体像を知りたいわけだから。一本いい記事があっても、残り九本がどうにもならない提灯記事では、信用が勝ち取れない。となると、組織の不調はすごく問題。
それに対して漫画は、組織の不調は読者にとって問題じゃない。ある雑誌で一本しか面白い漫画がなかったとしても、じゃあその雑誌は買わずに、面白いやつだけ単行本を買えばいい。
メディア批判をしている人が、そちら出身のジャーナリストだったりすることがあります。個々には問題意識を持っている人はいるのです。でも、組織がでかいと、個々人では動かせない。ずるずるーっと流されていく。そこを内田先生がばっさばっさと斬ってた。
漫画は作家ががんばって、ばんと飛び抜けちゃえば、それで解決。つまらない不出来の漫画は、読者の目に止まらず、記憶にも残らず、なかったことに。内田先生も、好きな漫画と同じ雑誌に載ってただめな漫画を、わざわざ取り上げて斬るようなことはしない。というか、多分読んでない。
……書いてて怖くなった(((+_+)))
とにかく。
作家個人の努力で、問題を解決できるところが、漫画の利点だと思うのです。
この変革の時代に、小回りが利くというのは、なかなかいい利点。電子書籍だったら、一人でも流通まで持ってけるわけで、ほんとに最小限でできる身軽さを持ってる。やる気さえあれば、何だってできる。
よっしゃ、僕もがんばるぞと思ったのでした。今日ネームが終わりそうなのですよ。こいつが飛び抜けてれば全て解決ですよ。
内容をよく読んでの感想は、また今度。
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コメント
内田先生、漫画論もだしてたのですね。メディア論は読んだ気が、っていうか、内田先生、ブログでも同じようなこと書いてるのでそれを読んだのか。
なるほど、その業界にいると、見方が違うんだな、と、関心しましたよ。
メディアも、私みたいに読みたい記事しか読まない人もいるけど、今のメディアでは、読みたい記者だけの記事を買うっていうことができにくいもんねえ。媒体全体にお金を払うって言うのがもう時代遅れなのかなとは思います。
投稿: ogu | 2010/10/19 11:40
マンガ論は今月出た本だよ。
漫画の業界も売り上げ下がってるから、問題山積みなはずなんだけど、読者は出版社じゃなくて作品を見てるんだなと。作家ががんばればOK。
ネームには駄目だし出たんだけどね……(+_+)
ジャーナリストも、「この問題はあの人が詳しいから、あの人の意見を聞こう」という方向に行くのかも。
投稿: かわせ | 2010/10/20 15:53