今週の雑感記 龍馬伝とゲゲゲの女房
ゲゲゲの女房と龍馬伝の作風の違いに、普段僕がよく言っていることが凝縮されていると思う。面白さは、一本の物差しでは計れないということ。どっちが面白いと感じるかは、受け手の人の個性によるということ。 7:55 PM Jun 19th
仕事場でドラマを見ると、周りは物を作る人ばかりですから、いろんな意見がでます。
また、その人達とは長い付き合いなので、趣味や好みが分かっています。そうすると、どういう好みの人が、どういう所を評価するのか、ということが見えてきて。
ざっくり大別すると、人には、「視覚・刺激優位型」の人と「情緒・感情優位型」の人がいるんだな、と分かってきます。バーンと見え切ったシーンとか、凝ったアクションシーンとかで、「かっこいいー!」とテンション上がる人と、感情移入の度合いが高くて、キャラクターの気持ちに引っ張られて燃えたり泣いたりする人。
人の感じ方には、脳内の受容体が影響しているそうだから、これは遺伝子のレベルからスタートしている個性。優位の度合いもそれぞれだから、面白さを測る物差しは自分の持っている一本が常に正しいわけではなくて、いろんな評価があって当然なのだ、ということです。
さて、龍馬伝とゲゲゲの女房です。
龍馬伝もゲゲゲの女房も人気のドラマ。視聴率で、ドラマの一位二位を争っています。
この二つを見比べると、見せ場が全く違い、前述の「視覚・刺激優位型」と「情緒・感情優位型」にきれいに当てはまっていると思うのです。
龍馬伝の見せ場は、簡単に言っちゃうと、龍馬が叫んでいる所。「うおおおお、○○ぜよー!」という感情の爆発、疾走感、緊張感。そういう物を工夫を凝らした映像で魅せる。
ゲゲゲの女房の見せ場は気持ちの揺れ動き。セリフの行間ににじむような、登場人物の感情。それを積み重ねていって、山場でわっとあふれさせる。
どっちの方が好きかは、人それぞれ。ちなみに僕は仲間内でも、明らかに「情緒・感情優位」に寄ってる人なので、ゲゲゲの女房の演出にぞっこんです。
今週で言うと、富田さん登場の火曜日で。
「あのう、上着、貸してもらえませんか。ボタン取れそうです。付け直しますけん」というセリフは、布美絵さんが富田さんの話そっちのけで取れそうなボタンが気になった、ということではなく。
貸本漫画を悪書と言われ、怒った富田さん。本を扱う仕事だから、印刷所の仕事はつらいけど楽しいと言う富田さん。よれよれの上着から、なけなしのお金を差し出す富田さん。
その姿を見て、今まで散々苦労させられたけど、悪い人じゃないんだなと思い、許したんだという、気持ちを表したシーンなのです。
その後、お金儲けに走っちゃったけどほんとは漫画が好きだったんだと言う富田さん。あの人、漫画家にひどいことをしたので、以前の僕の心証はかなり悪く、お前もひどい目に会え、と思っていたのですが。
しっかりした演出演技に、僕も、悪い人じゃないかも、人間お金を前にしてそういう弱さはあるよね、という気分になり。
和解のシーンの暖かさにほっこりする反面、去り際の背中は丸く小さく、かわいそうだなあ、とか、時代の流れは容赦なくて切ないなあ、とか、いろんな感情が揺り動かされる良い回でありました。
さて、受け取る人が千差万別なのだから、面白さにもいろいろあるんだ、ということですが。
この二つのドラマが人気なのは、その面白さ、見せ場をしっかりたっぷり作り込んでいるからだと思うんですよね。
いろんな面白さがあるからとりあえずいろいろ入れちゃえ、という状態だと、だめだと思うんですよ。
そうすると、尺が不足気味になるから、たっぷり描けない。派手なシーンをしょぼく、地味なシーンを雑に描いたら、どっちが好きな人にとっても、見るとこないわけで。
でも、製作に関わる人が増えると、いろんな意見が飛び交うから、そうなりがち。注意が必要なのです。
見せ場はこれだときちんと絞り込んで、それに向けて構成して、たっぷり描かないとなあと思ったのでした。
○ 「かわいくハートフルで熱血」「ギャグとシリアスとアクション」
そんな龍馬伝とゲゲゲの女房の話をしていた一環で。
自分の漫画に込めたい面白さって何か、という話題も出ました。僕が言い出したのが、「かわいくハートフルで熱血」。
かわいいキャラクターにたっぷり感情移入してもらって、山場でどーんといく形。
具体例を考えたけど、あまり他に見ないのです。ギャップがあって、乗り越えるのにページ食うからかなー。「ケッタ・ゴール!」でチャレンジ中。
ナベ先生は「ギャグとシリアスとアクション」。
ナベ先生も「情緒・感情優位型」の人で、気持ちをちゃんと描きたいタイプ。
ちなみにギャグを入れたいのは、楽しいシーンでキャラクターに好感持って欲しいからだそうです。そんなキャラたちが一生懸命がんばるドラマを、山場にどどーんとアクションたっぷりに描く。
キーワードは違うけど、感情移入→山場どーんは同じ狙い。
ただ、このやり方はページがかかるのが共通の悩みです。特にナベ先生は、今の連載は一回24ページなので、たっぷり描きたくてもセーブしなければいけない時もあり。
そんな折、電子書籍の時代到来。
自分で出すなら好きな事ができます。また、話を薄切りにして発表という雑誌連載の形じゃなくなるなら、最適の描き方も変わってくるはずです。
そういうところに可能性が生まれるといいですねー。考察するばっかじゃなくて、そっち方面への活動もぼちぼち。
○ 今週の絵
帰ってきてから、ペン入れ進めました。
この漫画は、かわいくハートフル。熱血はなくて代わりにちょっとした驚き。
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