魔女の宅急便 その6 それぞれの旅立ち
人気シリーズ、最終巻。
児童書って語り口は平易だけど奥が深くて、何かを伝えようという気持ちにあふれてて、読んでて楽しいな、と思わせてくれるシリーズでした。
○ 魔女の宅急便 その6 それぞれの旅立ち (角野栄子 福音館書店)
キキととんぼが結婚して13年。二人の間に生まれた子供は、双子のニニとトト、11才。
魔女になるには10の頃から修行を始めなくちゃいけないのに、姉のニニは移り気で、その気があるんだかないんだか。弟のトトは魔法にあこがれているんだけど、魔女になれるのは女の子と決まってる。二人は揺らぎながら迷いながら、自分の道を探してて……。
この物語には三人の主人公がいます。
一人はキキ。このシリーズの主人公。巣立とうとする我が子をじっと見守っています。
子を持つ母親だったら、多分、だんだん親離れしていく子供の姿とか、言いたい事があってもぐっと飲み込むキキの想いとか、感情移入できる場面がたくさんあるんだろうなあと思いました。
二人目は娘のニニ。ニニは現代っ子で、損得を口にしたりちゃっかりしてるけど、でもやっぱりこのシリーズで書かれてきたことを踏襲しています。
古い価値観とどう向き合うか。自分自身の確立。キキとは違う形だけど、キキも通った道。これは、最近はだいぶ崩れたけど、昔から妻になり母になるものとされてきた女性には、我が身に降りかかる身近なテーマなのかも。
さて三人目です。途中からトトがどうなるのかが一番気になって読んでました。前述の二つのテーマは僕にはちょっと縁遠いんですけれど、トトの悩みにはすごく感情移入。
ニニは魔女になるという道があって、それとどう折り合うのかなんだけど、同じ日に同じように魔女の子として生まれたのに、トトにはその道は用意されていない。
ニニが魔法の修行をしようかなといった日、トトにもほうきは用意されたけど、やっぱり空を飛ぶことは出来なかった。憧れていたけれど、その才能は無い。作家に憧れ投稿したみたいだけど、それも選外。ずっと自分の行く道を探してる。自分の歌を探してる。
自由であること、自分で決めるということは、とても苦しいものなのです。
13の満月の夜、同じように、そしてひっそりと旅立ったトトがつぶやいた「僕にもまんまるのお月さまだ」。
がんばれ、トト。
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