自由主義出版の必然性
昨日の続き。
自由に好きなもの描く、というと、どうしてもそれは甘いんじゃないのというニュアンスが出ちゃうんだけど、実はこれからはそれが必須になっていくのではないか、と考えているのです。
電子書籍は、いきなり紙本を全滅させるとは思わないけど、長い目で見れば、結構普及していくのではないかと予想されます。
で、そうなった時に発生するのは、競争の激化。
まず電子書籍自費出版が可能になると、プロとアマチュアの境目がなくなって、同じ土俵に載ることになります。紙本の同人誌も自費出版も、町の書店の流通ルートにはほとんど乗りませんが、電子書籍は同じ流通なわけだから。
また、出版社の側でも、出版点数を増やすでしょう。
例えば現在すでに、週刊少年サンデーは、クラブサンデーというweb雑誌を持ってて、そこでの連載も単行本になってます。
これが電子書籍になったら、在庫コストがほぼかからないんだから、もっと拍車がかかるのでは。品揃えよくした方が儲かるわけで。
さらに過去の作品との戦いも待っています。
今の子供たちって、結構ドラゴンボールを知っているじゃないですか。
アニメが何度も再放送されてるし、漫画も新装版が出てるし、ずーっと市場にあるからですよね。
で、電子書籍が普及すると、そういう作品が増えると思うんですよ。
雑誌は紙面に限りがあるから、作品入れ替えなきゃいけないし、書店も棚に限りがあるから、終わった作品をずーっと置いとくわけにはいかない。でも電子書籍はそれができる。
というふうになってくると、競争はすごい激しくなると思うのです。多分、物が多くなりすぎて、結局探すのが大変になり、定番物がどばっと売れ、他は細々という状態になるんじゃなかろうか。
そこで自由主義出版の必然性が生まれてくる。
作家は実は細々でも平気な人が結構います。
起業家になりたい若者のドキュメンタリーを見ましたが、たいてい社長になってお金儲けがしたいのが先で、そのために何の仕事をしようかという発想。
でも漫画家は、一応個人事業主で、売れっ子になると会社にして社長になるわけですが。プロになるのは金儲けのためというよりも、漫画をずーっと描いていたいから。
「漫画ばっかり描いて! 宿題終わってるの?」と怒られていた少年少女の時代。漫画家は一日中漫画を描いていても怒られない、憧れの仕事なのです。
ただし、ずーっと描いてて楽しいのは、好きな物を描いてて手応えがある場合。作家は増えるがほとんどが細々という時代に、モチベーションを保つためには、好きに描ける事が大切だと思うのです。
多分、出版社を通さず、そう描く人がたくさん出てくるのではないでしょうか。
という、描く側から見た必然性。これがまずあって。
読む人から来る必然性もあります。
だいたい、今でもたくさん出ている漫画を隅から隅までチェックできている人は、そういないはずです。
ここでさらに数が増えるとなったら。
隅の方まで漫画を捜しに来る人は、定番物はもう見ちゃっている人。それに飽き足らないので、他の物を探している。
その人がその漫画を選ぶ理由が要る。
前述の通り、電子化して在庫切れが起きないようになったら、前のが今でもあることになる。となると二番煎じを読むぐらいならそっちを読めばいいわけで、同じのはいらない。
この人の漫画じゃないとこれは読めない、この人の漫画じゃないとこれは味わえない。そういう個性は今でもほしいけれど、それがさらに問われると思います。
そして、自分の味わいを出す一番簡単な方法は、好きなものを描くことです。
好きなものは細かいところまでよく見えているし、情報も持っている。それを生かす。
ということで、モチベーションの面からも、味わいの面からも、自由に好きなものを描くのは大切になるんじゃないかなーと思っているのです。中心部にいる人はいいけど、僕みたいな端っこにいる作家にとっては。
それで上手くいくかどうかは、選ぶお客さん次第なので、大変ですけれども。
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