図書館内乱
天気いい日の仕事場の周りは、緑深くてとてものどかで。
はー、日長一日ごろごろしたい。
でも今日終わるかと思われた仕事は伸びて明日へ。
○ 図書館内乱 (有川浩 メディアワークス)
郁と同じ隊の先輩小牧には、彼にひそかに思いを寄せる幼馴染の女の子がいた。小牧の十歳年下のその女の子、中澤毬江(なかざわ・まりえ)は突発性難聴で、中三の時から耳が不自由になっていた。
毬江は、中学生の頃小牧目当てで図書館に通ううちに本好きになった子で、図書館に来て小牧お薦めの本を借りるのをいつも楽しみにしていた。その日毬江に小牧が薦めたのは「レインツリーの国」。難聴のヒロインのお話。しかしそれがあらぬ誤解を生み、メディア良化委員会がそこにつけ込んで……。
上のあらすじ部分がきっかけで、そこから「図書館内乱」のタイトルが示すように、図書館側が一枚岩というわけではなく、派閥やらなんやらいろいろあるんだという話になるのですが。
こういう話は、自分では作れそうにないと思いました。いろんな人が出てきて、いろんな思惑とか想いとかがあって、あっちこっちで絡まってて。
さらに。お話進めるためには、いろんなタイプのキャラクターが欲しいわけですけれども。
郁のような猪突猛進タイプから、柴崎のようなものすごく計算高いタイプまで、これだけ振れ幅広いのはすごいなと思いました。ちょろっと出てくるだけなら定番パターンで動かせるけど、心の中までしっかり書いているじゃないですか。
柴崎の最後の告白に、ぞくっと背すじが冷たくなりましたよ。外面全て計算で、というキャラだったけど、実は秘密があって、じゃあ読者に見せてた分も外面か! と。
ほんと、すごい。面白いです。
続いて図書館危機。
ずっとその後姿を追っていた王子様が、実は上官の堂上だったと知ってしまった郁。乙女心は揺れ動き、動揺しっぱなし。自分の中で美化されてしまっている王子様が好きなのか、それとも堂上が好きなのか。
そんな時、茨城県立図書館に図書特殊部隊が応援出動することになる。県立図書館は郁の地元。戦闘職配置を今だ両親に知らせていない郁は大ピンチ。さらに県立図書館は、その内部組織が、なにやらおかしなことになっていて……。
読み浅かったです。
手塚は受話器を握ったまま目を閉じた。互いに情報をやり取りするようになった、自分の肩にしか背の届かない生意気な女子を思い浮かべる。
必要なら誰とでも寝られる。だから自分は向いている。
傷ついたふうもなくそう嘯いた(うそぶいた)後ろ姿。手塚がサインをもらったハンカチをいかにもどうでもよさそうに振った後ろ姿。決してその時の表情をこちらには見せない。
前巻で、柴崎が情報部候補生だと分かるシーンのそのセリフで、うわおと思っていた僕ですが、もう一個奥があった……。すげえや……。すっかり作者の手のひらの上で転がされています(^^;;)
デビュー作「塩の街」も読んだんですけど、有川先生はヒロイズムを書く人ですね。ラストシーンでほろりとしました。
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