今週の雑感記 ゲゲゲの女房
4月。番組改編の季節。
CATVの番組から、ウェザーニュースがなくなった。
天気予報はネットで確認できるから別にいいけど、かかっていた音楽を仕事のBGMとして重宝していたので、ちょっと困る。
流しっぱなしにしていても気に障ることがない番組というのは、なかなかない。小さな音で何か流れてる、ぐらいが一番集中できるんだけど。
新たなスタイルを模索中。
○ ふたつのスピカ 14 (柳沼行 メディアファクトリー)
「いよいよラストスパート! 宇宙学校での生活も残りわずかです!!」
単行本の帯の文。
きちっと構成されて、ちゃんと閉じる話が好きなんだけど。
いざ終わりの気配が見えてくると、やっぱり寂しい。
○ 真月譚月姫 6 (佐々木少年 メディアワークス)
終わりの気配という事ではこちらも。そろそろ閉じる方向へ。
純粋に読者の立場だと、終わりの気配は寂しさを覚えるのですが。
知り合いの場合には苦労を見てるから、とにかくがんばれ、と。
満足の行く終わりが描けるチャンスは、一生のうち、そんなにない。がんばれ。
○ ゲゲゲの女房 (武良布枝 実業之日本社)
「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる先生の奥さんの自伝。奥さんの視点で、水木先生の仕事ぶりが書かれています。
戦争で片腕を失った水木先生。肩で原稿を押さえ、一心不乱に漫画を描く。
その後姿に吸い寄せられるように、目が離せなくなる奥さん。自然と湧き上がる、尊敬の念。
そんな水木先生が、極貧の売れない貸本漫画家だったころ。徹夜仕事明けの水木先生に代わり、奥さんが原稿を届けに行った時の事を書いた一文。
社長は私の目の前でおもむろに作品をめくり、あろうことか、ブツブツけちをつけはじめました。
「ああ、これじゃ、だめだ」
「……この間のも、売れなかったし……」
「売れるものを書いてもらわないと、金が払えないんだから……」
人が精魂傾けて描いたものを、ぼろくそにいうのです。
なんて失礼な人だろうと思いました。水木は、原稿を渡しに行くたびに、こういうことを我慢しなければならなかったのかしらと、切なくなりました。あれだけ渾身の力を振り絞って描いたものを、こんな風にいわれるのは、たまらないことだろうと、水木がかわいそうになりました。
それでも、こちらの生活がかかっている以上、とにかくお金をもらわないで帰るわけにはいきません。ですから、私はぐっとこぶしを握り締めて、社長のぼやきを聞き続けました。
「じゃ、これね」
ようやく手渡してくれたのは、約束の半分の1万5千円しかありませんでした。これではこの先、暮らしていけません。私は、ものをいうのが苦手なほうですが、勇気をふりしぼっていいました。
「約束は3万円だって、聞いておりますが」
「奥さん、売れないものには払えないのよ」
「でも、これでは半分しか……」
「半分もらえるだけでも、ありがたいと思ってほしいもんですな」
「……でも、これでは食べていくことができません。何とか、もっともらえませんか」
血相をかえて頼み込みました。上乗せをしてくれたことはしてくれたのですが、往復の電車賃分だけでした。
電車の座席に、空になった革のバッグをひざに乗せて座り、新宿に向かいました。駅に着くたびに人が乗り降りしていました。でも、私は顔をあげることができません。水木がこれまでどれほどの屈辱に耐えてきたのかを、身をもって知ってしまったからです。これでは、あんなに一生懸命にマンガを描いている水木があまりにもかわいそうです。気がつくと、バッグの上においていた私の手の上に、涙がぽたぽたと落ちていました。
ちーくしょ――――!!!!
すごい感情移入。いや、こんなきついダメ出しは、食った事はないんですけど。
そうなんですよね。売れれば勝ち、売れなきゃ用なし。努力賞はない。それがプロの厳しさ。
でも水木先生はこの状態でも己を貫いた。自分に合わない仕事を断ったりしてるのです。貫いて、最後には、勝った。尊敬。
そして、そんな水木先生のそばに、こうして泣いてくれる人がいたのは、きっと支えになっていたに違いない、と思いました。
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