今週の雑感記 自分じゃない誰か
資料を何冊か読んで、全体像が少し分かってきたところで、キャラクターのイメージ画を描いたのは、そうするとキャラが動き出し、なんとなく話の筋も見えてきて、じゃああそこはどうなってるんだろうと、自分がよく知らない部分がどこなのか気付けるから。
……だったんですけど。
ちゃんと動き出すほどキャラ立てちゃうと、愛着が湧いてきて、可愛くなってきてしまって。
提出済み審査待ちの企画がちゃんと通った場合、当然そっちの仕事をするから、この話はお蔵入りなんですが。
そんな可哀想なことになるなら、前のはいったん書き切って一応満足している事だし、ボツっちゃってもいいかなとか思っ……。
……いやいやいやいや!?
そんな危険思想が忍び寄ってきているこのごろの一枚。
○ 自分じゃない誰かと自分じゃなきゃいけない物
この間チラッと触れた事。
たぶん世の中には、これで苦労している新人さんが、たくさんいるだろうと思われます。
打ち合わせしている時に、たくさん駄目出しされて、「だから、あれみたいにさ」と別の売れ筋の漫画を引き合いに出され、最後には「思い切って自分をぶっ壊すつもりで……」とか言われちゃって、要するに僕はいらないって事ですね、と哀しい気分になると言う……。
さらに追いつめられると、「だったら最初っからそいつを呼べばいいじゃん!!」と叫びたくなるんだけど、持ち込みしてるという事は、こっちが使って下さいとお願いしているわけで、それも出来ない。めちゃ辛い。
でも結局、これは仕方ないことなんですよね。実績のある作家さんなら、完成形が見えてるけど、ペーペーだと、それが見えない。
その人の完成形は、まだ本人の頭の中にしかなくて、かつ、たいがいの場合、本人にも薄らぼんやりとしか見えてなかったりする。だから、他から具体例を持ってくるしかない。
ぶっ壊す云々も、これと関係していて、薄らぼんやりとしか見えてないって事は、何かブレイクスルーが必要なのは、確か。
でも、傍からではどっちに行くつもりなのか分からないので、「ぶっ壊す」という言葉になり、聞く方にとっては、一回粉々にして、きれいさっぱりご破算にするっていうニュアンスになっちゃう。
だからと言って、ここでくじけて、言われたとおり、「自分をぶっ壊し」て、「あれみたいなやつ」を描いても、読む方にしてみたら、「何番煎じだよ!」という物になるのが、関の山。
読み手として考えてみたら、欲しいのは「分かってますね!」とツボを押さえてくれる作品であり、「そこからさらに上へ!?」という驚きを提供してくれる作品。見よう見まねで、形だけそれっぽくしたものじゃないのです。
そういう物を描くとしたら、やっぱり自分の得意な方向じゃないと、難しいわけで。
例えば藤子F先生は、「ドラえもん」を筆頭に、「身近な所に、ロボットとか宇宙人とか本来異形の存在、でもちょっと抜けてて親しみやすい」という漫画をたくさん描いてますが。
そのパターンの最初は「オバケのQ太郎」。それまでのは、「まんが道」に昔の漫画が載ってたりするけど、わりとフツーの話なんですよね。
オバQは、結婚式で「藤子君はオバケとか不思議なものが大好きで……」と紹介されたのがきっかけ、というような話を聞いたことがあります。
それを怖い物としてではなく、ユーモラスな物として描いたのがミソで、それで絵柄とか作風とかとがっちり噛み合って、そこから「日常SFギャグ」とでもいうべき新ジャンルを開拓したわけで。
ブレイクスルーって、きっとこういうものなんだと思います。種は本来本人が持ってる。でもまだ見つけてなかったり、使い切れてなかったり。
結局あがいてあがいて、そういう物を見つけ、自分が一番力を発揮できるポジションを探して、自分じゃなきゃだめな物を作らないといけないんだよな、と思うのです。
……と、考えながら、あがく過程で出たのが上の落書き。だんだんと行きたい所に近づいてるんじゃないか、と自分では思うんだけど……。
やっぱ、もう書きたいな、これ。来週から書き始めちゃうかな(笑)。
○ ひかるChallenge! (武田すん ヤングアニマルアイランド)
武田君の新作。
武田君はナベ先生の仕事場で一緒だったけど、あの時はネームが通らず苦しんでたなあ。
でもそこであがいていたから、ブレイクスルーがあって、こうして仕事が来るんだよね。
みんながんばってる。
僕もがんばらねば。
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