今週の雑感記 レンズマン
本日七夕です。織姫と彦星の年に一回の逢瀬の日です。
いつも七夕梅雨時で、何でこんな日と思ってたけど、本来は旧暦。今年だと8月19日。
旧暦は太陰暦で、月の満ち欠けで日にちが決まるから、7日はいつも上弦の月。それを天の川を渡る船に見立てたりもするそうです。そのほうがロマンチック。
ちなみに七夕の日に降る雨は、年に一度の出会いがかなわなかった二人の涙だそう。という事は太陽暦になってからは、泣いてばかり?
○ 船乗りクプクプの冒険 (北杜夫 金の星社)
次何読もうかな、と図書館内をぶらついていたら、この本のタイトルが目に飛び込んできて。
クプクプ。
いい響きだ……(笑)。
タイトルは聞いたことあったけど、この本読んだ事ないな、と思って借りてきました。おもしろかったです。
北杜夫さんは躁鬱が激しかった事で有名な人ですが。
この作品にもその跡がうかがえます。非常にユーモラスでノーテンキな話なんですが、どきりとするようなフレーズが、不意に、ぽん、と出てきます。
そんな時たま、すっとさす陰が、作品に奥行きを与えます。99%はノーテンキなんですけど(笑)。でも1%のスパイスが、隠し味として効いてる感じ。
児童書って、どこかに背伸びさせる表現があった方が面白いな、と最近色々読んでて思います。
○ 銀河パトロール隊 (E・E・スミス 創元SF文庫)
同じく図書館内を巡っていて、手に取ったこの本。久々にまた読んでみるかと思って。
この本は、僕の子供心を呼び覚ます旅に、欠かせない一冊なのです。
それははるか昔、小学生の頃のこと。国道16号線をえっちらおっちら自転車こいで、図書館目指して一生懸命通った記憶。
それまで僕のお好みはもっぱら推理小説で。怪人二十面相とか、シャーロック・ホームズとか。でも学校の図書室にあったのは全部読んでしまったので、図書館まで出かけてみることにしたのです。
子供心にはけっこう大冒険で、ドキドキ。また柏の図書館が、表通りから外れて、ちょっと奥にあったり。ちっちゃい看板あっただけで。小さな僕は、あそこで、この辺のはずなのに、とおろおろ(笑)。
そんな思いで辿り着いた柏図書館。当時の図書館は、入ってすぐ右手に子供の本のコーナーがあり、その一番奥の棚に。
揃ってたんですよ、SFが。
こりゃおもしろい! とひろし少年はたちまち引き込まれ、片っ端から読み漁ったのです。奥まった隅っこのところに丸く並んだソファーがあって、あそこにでれーっと寝そべって読んでたなあ。久しく行ってないけど、まだあるのかな。
その僕を引き込んだSFのうちの一冊が、こちらの「銀河パトロール隊」。もう一つ印象に残っているのが、クラークの「海底牧場」。子供向けタイトルは「海底パトロール」。
……分かりやすい子だ。「パトロール」というタイトルに惹かれたのが丸分かり。ちなみにこの後、「宇宙の戦士」と「宇宙大作戦」に行くんですよ、「宇宙」に惹かれて(笑)。
という事は、「宇宙パトロール」という話を作ればいいのか!(←違います)
この作品は、「レンズマン」の方が通りがいいですね。昔アニメにもなりました。劇場版の主題歌はTHE ALFEEの「STARSHIP 光を求めて」。あの歌も好きだったなー。
さて、そんな「銀河パトロール隊」。今読んでみると、物語の構造がよく分かります。子供心を煽る仕掛けがいっぱいです。
難しい単語で飾られてますけど、ぶっちゃけた話、すっげーでかかったり、すっげー強かったりするんですよ。
すごい優秀な主人公が、これでもかとばかりに持ち上げられて書かれていて、それに対するは、これまた想像を絶するすごい敵。そこで奮起した主人公が、特訓してさらにすごくなるという……。
少年漫画がエスカレートしていく構図と同じ。もう一度宇宙の大賢者アリシア人の所に行って特訓受ける時、友人のレンズマン、ウォーゼルの方が現時点では優秀だけど、お前にはまだ隠された潜在能力が……という話になる所なんか、まさにそう。
最初に出てくる超兵器「Q砲」の、のるかそるかの一発勝負な所もハラハラするし。(相手のシールドが貫けなかった場合、反動で自分の船が吹っ飛ぶ)
後々大活躍のヒロイン、クラリッサ・マクドゥガル嬢との出会いがケンカばっかで最悪なのに、2度目の出会いで惚れられる(しかも本人は気づいていない)定番のモテモテ構図にもウキウキ。
そういう楽しい仕掛けがいっぱいです。いいなあ、こういう話。味付け変えれば、今でも作れるかな?
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