今週の雑感記 光の島
また混乱中。
今月頭に、どれから手をつけるか、という事態に陥って混乱してここにも書いてますが、また同じ事態。
同時進行が増え、何がなんだか、自分が何したいのか、もう……。
僕の脳のキャパシティーで並列処理していいのは、二つぐらいまでみたいです(笑)。
メインの企画が難産で、それに没頭できないのがまた拍車をかけてる。手が止まってしまい、いろいろ考えてると、だんだん思考があらぬ方へ。
そして、あれ先にやっといた方がいいかなあ、とか、あれやったら面白そうだなあ、とか別の事に手を出し始めて。
昨日魅力的に思えて、人に相談してみた事が、今日になったら色あせて見える末期症状。ごめんなさい、何時間も付き合わせたのに(笑)。
とりあえず提出日が近いやつから順番にやるか。
○ 光の島 (尾瀬あきら 小学館)
先日、この漫画が面白いせいで作業が遅れた、と言いがかりをつけた「光の島」ですが(笑)。
それだけでは失礼なので、ちゃんと御紹介。
この漫画はビッグコミックオリジナルで現在「蔵人 クロード」を連載中の尾瀬先生の前作。全8巻。
舞台は1982年。はるか南、沖縄の八重山諸島にある唄美島。西表島の隣にあるこの小さな島は、過疎に悩み、現在人口41人(!)。
役場もない、病院もない、そんな島で唯一の公共機関が小学校。ところがこの春、たった一人の生徒が転校することになり、廃校の危機。
そうなると、もうこの島で子育てしようなんて考える人は皆無になり、このまま老人だけの島になって廃村になるのは決定的。
何とか小学校を存続させようと、村を出て東京に住む縁故者を頼り、無理矢理連れて来たのが主人公光くん。この春ぴかぴかの小学一年生。
村の自然は素敵なんだけど、やっぱりお母さんが恋しくてホームシックになったり、友達がいなくて寂しかったり。そんな子供の気持ちは分かっていても、村を存続させるためには無理を通すしかない村人達の悲壮な奮闘。
しかしそのうち、病弱を承知で無理矢理連れて来たもう一人の子、由美ちゃんが、島の暮らしですっかり元気になったり。
親のいない養護施設の子を里親になって迎えたら、島の濃厚な人間関係の中で、今まで知らなかった愛情という感覚に目覚めたり。
それが話題になって雑誌に載ったら、不登校で学校に行けなくなった子供達が、なぜか島に惹かれてやって来て、立ち直ったりと。
島が子供達によって救われ、子供達も島によって救われていく、素敵なヒューマンドラマです。
尾瀬先生はとにかく繊細な心のニュアンスを描くのが上手いので、話が展開する中で、ジワジワと溜め込まれていく気持ちが、バーンと素敵な絵と共に弾けると、思わず涙が出ます。例えばですね。
1巻で。光くんの入学式に、東京からお父さんが駆けつけて。
場合によっては光くんを連れて帰ろうと思っていたお父さんだけど、村にとってどれだけ光くんが重要なのかという、故郷の様子を目にして、黙って帰ろうとするですよ。
学校から急いで帰ってきたら、お父さんはもう帰っちゃうというので慌てて桟橋に駆けつける光くん。お父さんが帰るなら、僕も帰る、お母さんに会いたい! そんな光くんを心と裏腹の厳しい言葉で島に残していくお父さん。
光くんは大泣き。すっかり元気がなくなっちゃう。
その様子を桟橋で、じっと由美ちゃんが見つめてる。
この時どアップで、可哀想、という顔させたら台無しなんですよね。ただじっと見つめてるひとコマがあるだけ。
そして次の朝、光くんは学校行きたくないとぐずってて。それを雨の中、待ち合わせのデイゴの木の下で、ずっと待ってる由美ちゃんの影があって。
由美ちゃんが家まで迎えに来て、ようやくしぶしぶ学校に行く光くん。そして朝のHR。返事もさっぱり元気ない。
朝のHRでは、日直さんが昨日あった事とかをお話しすることになってて。この日の日直は由美ちゃん。ここまで由美ちゃんは、ノーリアクション。特に変わった様子なく。前に出て話し始める。
「え…と、昨日は…、光のお父さんが船で帰りました」
「光は、お父さんとたくさん遊ぼうと思っていたのに、できませんでした。だからとってもかわいそうだと思いました。あたしは、お父さんもお母さんも島にいるのに、光にはどっちもいない……。とってもかわいそうです」
「だから…だから、あの……あの……」
ここで由美ちゃんほろりと涙。そして優しく微笑んで。
「あたしは…もっともっと、光と遊んだり勉強したりしたいです。そして…光のお姉さんになってあげたいです」
そんな由美ちゃん、小学二年生に、もらい泣き。
ずーっと溜め込んでた由美ちゃんの優しい気持ちが、思わず溢れてくる、という素晴らしい演出。ちなみにこれは作品冒頭の軽いジャブなので。この後KOパンチがたくさんあるので。
由美ちゃんの「あたし走ってる! 風みたい!」とか、美幸ちゃんの「がんばれ、光……がんばれ…」とか、保くんのシャツを洗濯するトキおばあの後姿とか、ゆりちゃんの「あたしが選んだ学校に通ってる」とか、「中学の三年間を大介くんは一日も休まず通い続けたんだ」とか、そりゃあ、もう……。
例えば子供をお持ちのお父さんお母さんであれば、僕なんかよりずっと感情移入して読めると思うので、ぜひどうぞ。
表紙画像がなかったけど、応援するために貼っちゃうぞ。
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