キャラ立て
昨日書いた通り、オーバーヒート気味なので(笑)。
ここに書いてちょっと整理。
要するにキャラクターがきちっと立てば、終わりなんですけれども。
そこが一番難しい。
漫画では最初のキャラ立てが非常に重要です。
小説に比べた場合。当然絵で描いてあるので、キャラクターに感情移入しやすい。その分キャラクターがの良し悪しが、面白さの中で占める割合は大きくなる。
ところが、一冊の本の中に描けるエピソードの数は、漫画の方が、桁違いに少ない。となると必然的に、最初に出てきたシーン一発で、バシッと印象づけないといけない。
アニメやTVドラマのような映像作品と比べた場合。向こうさんも姿かたちが見えてる分、キャラクターに思い入れしやすい所は同じですが。
漫画は動かないし、音も出ない。興味を引く、という点では圧倒的に不利。演出としての不備があると、簡単に読者の集中力が切れちゃう。やっぱり最初、まだ読者が温まっていない時間帯(?)は、かなり気を使わないと駄目。
という事で最初のキャラ立てが、成否の鍵を握る。
「キャラクターを立てる」という言葉にも、考えなければいけないことがあって。
主に二つ、「目立たせる」という意味と「自立させる」という意味がある。
目立たせる、は分かり易く、「印象に残す」事で。キャラクターデザインで頑張ったりとか、面白い設定つけたりとか、口癖作ったりとか色々と。
ただ当然、目立ちやすい性格と、そうじゃない性格とがあって、そこんとこが難しい。
目立ちやすい性格、よくしゃべってよく動く活発なキャラの方が作るのは楽。ただ、そういう理由だけで設定しちゃうと、描ける話のバリエーションが制限されてしまう。
これはもう一つの意味が関係している。「自立する」ということ。作者の都合、話の都合から、キャラクターは独立していないと駄目。じゃないとそれは一つの人格ではなく、お人形。
また、人格として確立できると、作者としても、放っておいても勝手に動いてくれるので、後々凄い楽。
キャラクターが話の都合で動いてしまいやすい、一番よくあるケースは。
しょっぱな目立たせるため、人の迷惑顧みないぐらいの破天荒なキャラで立たせておいて、オチはいい話にしようとするケース。
昔目立ったパターンで言うと、ファンタジー漫画で。旅人の主人公が歩いていると、「助けてください!!」とヒロインがすがって来て。これを「ヤダ!!」と無碍もなく断る出だしで。
「めんどくさい」の「金よこせ」のと無茶を言って目立たせておいて、その後ヒロインの苦労話を聞いたとたん、コロッと同情、悪者を倒すという話。
前半と後半でキャラが変わっちゃっているから、説得力がない。同情したシーンが偽善に見える。そうなるとやっぱり読者に伝わらないから、結果出ない。
じゃあ、このパターンで成功させて、仕事になってた人はと言うと、実は一段高度なレベルで描いていて。
非常に近い所に1人、いるんですけれども(笑)。
ナベ先生はちゃんと意識して描いてたんですよ。
ハーメルの場合。実は最初一巻の間、いい話は一つもない。「ヒロインの苦労話を聞いて、コロッと同情したかと見せかけて、ギャグオチ」とか、そんなのばっかり(笑)。一巻最後の最後に、「あれっ? もしかして優しいのかな?」ぐらいのシーンがあるのみ。
二巻の真ん中でようやくフルートのことを気遣うけど、それもやっぱりギャグオチ付き。
凄い時間をかけて、こっそりこっそりシフトチェンジしている。話の都合でキャラクターを変えるのではなく、キャラクターに沿って話を転がす。
結果「昔々は素直ないい子だったのに、その後ひどい体験をしてすっかり性格捻じ曲がってしまったハーメルが、フルートの素直な心に触れて、ちょっと優しくなる」というお話が出来上がる。
成功していた人たちは、きっとそういう、「矛盾を成立させる気配り」をしていたはずです。
この漫画が乱立する戦国時代、目立たないとどうにもならないんだけど、そこでさらにいい話を描きたいのであれば。いや、結局自分が描きたいんですけど、いい話。そのためには。
「傍にいると迷惑だけど、根はいい奴なんだよな」という高度なキャラ立てをする。
「いい子だから目立ちづらい」のを、巧みな演出で無理矢理印象付ける。
「人間だからいい所も悪い所もあるんだよ。そんな奴でも駄目な自分を全肯定してるわけじゃなくて、ある日何かのきっかけで、頑張る事だってあるんだよ」という、難易度の高いストーリーテリングの技を見せる。
の三点が、代表的な解決策と思われます。三番は多分青年誌。今自分がやろうとしているのは、二番。
巧みな演出か……。思いつけば終わるのに……。
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