骨と肉
年末、部屋を片付けてて昔のネームを大量にほじくり返して、思ったこと。
漫画の勉強って大変だ……。
特に物語の作り方は見えづらい。何かを見本にして作ればいいって訳じゃないから。そんな事したらパクリになっちゃう(笑)。
絵は、一度完パクして、どういう状態が上手く見えるのか手に覚えさせてから、オリジナリティを加えていくという手段が使えますが……。って、この程度の絵のクセに言ってたら、いきなり説得力がないですね(笑)。うまい人がさらりと言うと、かっこいいんですけどねー。
まあ、そこは勘弁していただくとして(笑)、絵よりネームの方が、どこをどう直せばいいのか、手探り気分になるのは本当だと思います。
トントン拍子で仕事を取れる天才タイプの人はいいけど、オイラみたいに引っかかると、苦労する。ゴールの見えない手探り気分だから、迷い始めると止まらない。暗中模索で結果も出ず、自信を失い、もう俺には才能がないんだ、と嘆き苦しむことに。
そこで、長く苦労して、思うには。
漫画のネームにおける要素には、骨の部分と肉の部分がある、と思われます。
で、たいてい肉の部分は最初から持ってる。ぱっと見、分かりやすい部分だから。ノリとか台詞とか、どういう絵を描くかとか、そういう物。直接面白そうな部分。
で、対して骨の部分は、伏線とか構成とか、表に出ない部分。これは一度意識して、物語を分解するトレーニングを積まないと、なかなか身につかない。なんとなく、になってしまって効果が薄い。
そこで新人さんの漫画では(過去の自分も含めて)、骨が弱くなってしまうことが多いようです。
見よう見まねでなんとなく形には出来るんだけど、一番効果的な構成になってない。エピソードの寄せ集めで、ツボを押さえていない状態。
で、持ち込みを始めると、大体そこを突っ込まれて、今まで妄想に任せて描いていた物を、計算しながら描かなきゃいけなくなる。
するとなぜか、むしろ最初の頃のほうが面白かった! という事態が発生します。そこで自信を失って、自分を見失ってみたり、さあ大変。
これは骨を描くのが精一杯になって、肉が無くなるからです。
手順をきっちりこなすだけで、ページを使い切っちゃう。贅肉をそぎ落としたつもりで、筋肉も落としてみたり。
でも骨だけなんて、犬じゃないんだから、食わされる方にはとんでもないシロモノ。
あらすじのまま、プロットのままじゃ楽しめない。読者にとって面白いのは、遊びの部分、ノリの部分。別の言い方を探すと、雰囲気の部分。
そういうのを失ってたら、全然面白そうに見えないわけですよ。ナチュラルに描いている時の方が、まだ面白そうに見えてしまう。
自分の過去のネームでも、まとめるのが精一杯、という状態で描いてた時期の物は、読んでもやっぱり面白くなくて。むしろ最初の頃の、構成失敗してやんの、という物の方が面白そう。
肉を失わないように、注意しないといけないのです。
オイラは、ガンガンに持ち込んでいる期間が長かったので、あそこの様子をずっと見ていたわけですが、あの雑誌は特にそういう所が重要だった。そういうのが特に好きなお客さんが、集まっていたから。
そうなると、最初からある程度パッケージとして固まっていて、そこがストレートに出ている人が、仕事を取れる。変にいくつかの要素が混じっちゃっていて、構成の勉強しないといけないタイプの人は、どつぼにはまって、ノーチャンス。
ほんと、読者にとっておいしい所、面白いと感じる所は、そういう部分なんだという事を、勉強させられました。
ですが、じゃあ肉さえあれば骨はいらないのかと言うと、そんなことはなくて。
骨格がしっかりしていないと、連載して長く物語が続いた時に、ボロが出る。積み上げていったエピソードが相乗効果を生まないで、ガラガラと崩れてしまう。
「最初面白そうだったのに、あんまり盛り上がらないなー」という作品が、これ。
骨なのか肉なのかじゃなくて、その二者択一のレベルを乗り越えて、初心に帰って面白い事てんこ盛りにしつつ、でも構成もさらりと出来ます、というレベルにならないと駄目だ、ということなんですが。
ようやく最近、結構好き勝手遊んでても、なんとなくまとめられるのではないかという気分になりました。
その辺のレベルは抜け出して、プロとして人を楽しませるスタートラインに立てたのかな、と。
え? いまさら?
……。
遠回り人生に、自分でも不安になります(笑)。
まあ、でも何とか、そういう手ごたえは掴めたわけで。
あとは頑張って骨も肉もぶっとく育てて。例えるならば小橋健太のような、分厚いボディを持った物語が作れるようになりたいな、と。
精進、精進。
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